流れる時間も味わえる蕎麦屋たち

昼飲みの愉悦ここにあり お蕎麦の しらかめ


RiCE.pressRiCE.press  / Jul 3, 2019

経堂の商店街からするりと脇道へ。個人商店と住宅が入り混じるグラデーションの最中、[しらかめ]は凛と佇んでいる。

店主の広沢伸彦さんは「お店では、思い思いに過ごしていただけたら」と控えめに語るが、そんな彼が考える蕎麦屋の醍醐味とは「昼呑み」だそう。通し営業にしている理由は、日が昇っている間に、お酒を呑みながらゆっくりしてほしいという想いから。

とっておきの昼どきには「おつまみ三点盛り」がぴったり。水切りした豆腐を一ヶ月ほど漬け込んだ「豆腐の味噌漬け」に、鯵の旨味が凝縮された自家製のさつま揚げ。極め付けにはしっとりとした食感の鴨ロースの三種がラインナップ。ほろ酔い気分が高まったところで、冷たいお蕎麦「九条ねぎと刻みきつね」を手繰りさっぱり締めれば、もう最高の昼下がり。紅色の梅と青々とした葱のコントラストは見た目も美しい。


おつまみ三点盛り ¥900 (左から時計回りに 鯵さつま揚げ 鴨ロース 豆腐味噌漬け)
九条ねぎと刻みきつね(冷) ¥1,200

お店で使う食器は旅先で出会ったものや、お気に入りの作家さんの作品をセレクト。置くものひとつひとつ、必ず自分たちの色が出ているものを選ぶようにしているという。店内には「私の体の8割は音楽で出来ている」と話す音楽好きの奥様・広沢文さんと二人で収集した何百枚ものCDが。ジャンルを問わず「これはしらかめに合いそう」と感じた音楽を、その日の気分で流している。

さりげなく配置されたプロダクトや生花など、ふたりのセンスが細部まで散りばめられているが、「でも最終的にお店の空気を作るのはお客さんなんですよね。僕たちが醸す雰囲気もあるけれど、来てくれる人がいるから空間は完成する。食べ終わって帰っていった人の残り香も含めて、全部が店の空気なんです」と伸彦さん。

子供からお年寄りまで、様々な年齢・職種の人が蕎麦を食べに集まる。お客さん同士会話に花が咲くこともあれば、自分の世界に入って蕎麦やお酒を味わう人も。風のように人々が交差し、巡り合ったり合わなかったり。でもあたたかい時間が流れていることは、この店に身を置く誰しもに共通しているはず。

店主の広沢さんは、最初から飲食の道に進んだのではない。映画の道を志し映画学校に通っていたこともあるという。しかし思い返せば、「定食屋さんをやりたい」と友達に話す高校生だったという。

お蕎麦の しらかめ
東京都世田谷区経堂1-27-13
ディアコート経堂1F
11:30~20:30 (L.O.20:00、売り切れ仕舞いあり)
火曜定休(不定休あり)
Tel.03-3420-1988

 

撮影 きくちよしみ、文 成田峻平

当記事はRiCE No.10「蕎麦の新作法」の記事をWEBサイト用に再編集しています。
RiCE No.10の内容を見る。

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