
BASE LAYER HOTEL NAGOYA NISHIKI
名古屋滞在の“基地”にしたいホテルが、7月9日開業。
東名阪という言葉どおり、首都・東京と関西の中継地点。ゆえに出張などビジネスシーンで訪れる機会も多い場所柄の名古屋に、滞在中基地にしたくなるような宿泊施設「BASE LAYER HOTEL NAGOYA NISHIKI」がオープンする。開業日は7月9日。
ここBASE LAYER HOTELのコンセプトは「カルチャービジネスホテル」ということで、出張滞在を前提にした“ビジネスホテル”の特性である簡素な様式美、ミニマムなお作法は踏襲。決して広々とした空間や、旅館的な懇切丁寧なサービスが待ち受けているわけではない。でもそのさばさばとした距離感や気楽さのなかに、「こんな機能があったらいいよね」という要素がこれでもかと詰め込まれている。その意匠をたっぷりとご紹介していこう。
まずこちらがダブルルーム。非常にコンパクトな空間ではありつつも、深いグリーンを基調としてまとめられ洒脱な雰囲気。コンセントカバーから電源スイッチまで主張しすぎないデザインに、心をかき乱されるところもない。出張中の作業にも集中できそうで、まさにビジネストリップの最適解を見た。
FRUIT OF THE LOOMによるベッドリネン、パジャマ、タオル・バスマットが完備。アパレルブランドとして知られるブランドだけれどホームコレクションも手がけており、ホテルで採用されるのは世界初だという。
ホテルの名前だが、山でのビバーク(野営)に欠かせない「ベースレイヤー」から着想を得ているとのこと。ベースレイヤーとは、レイヤリングの中で肌に最も近く、快適性と機能性を担う一着。気候に応じて体を温めたり、風通しをよくしたりと、アウトドアでの活動を支える“基盤”のような存在。ここBASE LAYER HOTELも街を自由に楽しむための“ベース”となるべく、心地よく、機能的な滞在を意識し提供する。その象徴がベッド頭元の有孔ボードだ。
収納用パーツを自由に組み合わせ、自分らしく持ち物をレイアウトできる仕掛け。旅のスタイルに合わせてカスタマイズし、まるで“自分だけのベース基地”のように過ごせる。ビジネスホテルというと限りあるスペースを連想させるだけにどうしても「この空間ではこう過ごしてね」と利用者の所作が制限されそうな中で、使用者に委ねる余白をうみ出すデザインに一本取られた気持ち。
ランドリールームには、街遊びを楽しむためにも不可欠なシューズ用のケア製品JASON MARKKが常備。「良い靴は良い場所へ連れて行ってくれる」というイタリアのことわざよろしく、きちんと身だしなみを整えて名古屋クルージングを楽しみたい。
「ビジネスホテル」という一見して簡素な印象のあるサービスを、筋の通った美意識でアップデートしていく。そんな今までありそうでなかったコンセプトにしびれるものの、こちらのプロデュースは「MUSTARD HOTEL」や、渋谷の人気飲食店[CHOW CHOW]や[PEZ]を手掛けるGRRENINGチームと、「fav」「FAV LUX」、「seven x seven」などのホテルブランドを全国に展開するfav hospitality groupが手がけているということもあって納得。
ちなみにホテルが位置するのは江戸時代に城下町の一部として形成され、戦後には繊維問屋街として発展した歴史を持つエリアだ。地下鉄丸の内駅(桜通線・鶴舞線)や伏見駅(東山線・鶴舞線)が近く、ターミナル駅である栄駅も歩いていける距離感ゆえどこに行くにも便利、ビジネスシーンの滞在にもうってつけと言えるだろう。また近くの酒場も良店がひしめいており、飲食店をハシゴするのにも最高だ。
まずは近隣の名店を仰ぐところから…ということでホテルからも歩いて10分かからない位置にある[大甚本店]へ。明治40年創業の老舗酒場。暖簾の「酒」の文字に“今日も飲むのだ”と誓いながらゆっくり一礼し、清々しい気持ちで暖簾をくぐる。
配膳台に並ぶ30種類以上の小鉢。この景色が壮観である。盛り付けられた煮物や酢の物、サラダ、惣菜など好みのアテを取ってテーブルへ。セルフサービスゆえ自ら好みのものをチョイスする仕組み。最後のお会計時にはお皿の数を数えてもらい、そろばんでパチパチお勘定。超絶オールドスクール、指針にしたい酒場の姿がここにはある。
燗酒を飲まずには帰れない。特別な酒燗器は使わず、釜で湯を湧かし、そこに徳利を入れていく…という究極トラッドな燗酒。取り扱う日本酒も広島県・賀茂鶴酒造に特注した樽酒と、灘の銘酒「菊正宗」のみという潔さ。心して杯を進めよう。
名古屋はミュージックバーやクラブなどいい音が鳴る場所もたくさんある。今回ホテルのオープニングを祝して「THE BOTTOM LINE Nagoya」ではイベントが開催。グラミー賞受賞経験のあるMURA MASAが登場すると会場のボルテージも最高潮に。ちなみに音が鳴る場所というのもさまざま。名古屋のスナックで「燃えよドラゴンズ’99」(星野仙一監督体制で11年ぶりにリーグ優勝を果たしたシーズンであり、この年は舟木一夫が歌唱を担当)を熱唱すると名古屋の先輩たち、幾度もの夜を駆け抜けてきた往年のサラリーマン戦士と一緒に肩を組めるはず。そんな楽しみ方もB面的にはぜひどうぞ。
少しだけ遠征して吹上の[DRUM]へ。ナチュラルワインが取り揃う中で京都の“ワインも飲めるコーヒースタンド”[TAREL]のオリジナルビールがあったのでオーダー。こちらも東京じゃなかなかお目にかかれないだけに、まさに東京と京都の中間、フードシーンの要所的な意味合いも名古屋にあるのだな…などと感じつつ喉を潤した。
名古屋の夜を目一杯楽しんだ後はBASE LAYER HOTELに戻って「ホテルバーで一杯やってシメ」というのも一興である。バックバーの日本の蒸留酒のラインナップには目を見張った。「辰巳蒸留所」や「YAMATOUMI」、「YASO」などジンに特化しつつ、「大山甚七商店」のラムから「白石酒造」の焼酎まで、目利きのきいた完璧なセレクト。
ALTECのスピーカーから流れる良音を浴びながら、お酒片手に作業するのも至高の時間と言えるだろう。これなら別に外に出なくてもいいかも、そんなふうに思えるほど。ワーカホリック気味で、“出張中も働き詰めでホテルに缶詰状態”という方にも心からおすすめできる。
ぐっすり眠って翌朝、出張中ならば朝ごはんもしっかり食べて次なる打ち合わせに備えたいところだ。モーニング文化ひしめく名古屋だけに、そんなリクエストにきっちりこたえてくれる準備がされていた。
よく飲んだ次の日を労るかのようなお粥セットで1日のエネルギーを完璧にチャージ。昨晩の深酒もこれでなかったことになる。
こうした朝ごはんは、朝食付きで予約した際は、チェックアウト後でも夕方17時まで利用可能というからびっくり(12時以降にオーダー可能となるボリュームあるメニューからも選択が可能)。通常ホテルの朝ごはんというとチェックアウトの1時間前くらいまでなことが多く、ギリギリまで寝ていると辿り着くことができず、断腸の思いでホテルを去ることも多いので嬉しい。
「ホテルのオペレーションを優先させるのではなく、あくまでゲストのことを一番に考えています。朝ゆっくり起きて、チェックアウトした後でもきちんとしたご飯が食べられた方がいいでしょ」とは、飲食部門を統括する[MAISON YWE]南慎一さんの言葉である。名古屋の人気店を多数手掛ける街のキーパーソンのホスピタリティに、身をひれ伏す気持ちになる。
まさにビジネスでの滞在でもそうでなくとも泊まりたくなる宿。予約も既に受付中なので、来月以降名古屋で泊まりがけの用事がある。けれどまだ宿はこれからという方は早速チェックしてみてほしい。
BASE LAYER HOTEL NAGOYA NISHIKI
BASE LAYER HOTEL 名古屋錦愛知県名古屋市中区錦2丁目6-30(Google Map)
客室数:186室
付帯施設:レストラン / 貸切サウナ / ランドリー / ロッカールーム
公式HP:baselayerhotel.com/
公式Instagram:instagram.com/baselayerhotel/
文 成田峻平 (Text by Shunpei Narita)
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