
ミニトマトだけで、濃厚なソースに。野菜のつかい方帖
[organ]紺野真さんに教わる、夏のトマトパスタ
忙しい日でも手軽に野菜を楽しめる〈野菜をMOTTO〉のスープのように、毎日の台所でも野菜を、もっとおいしく食べたい。そんな思いから生まれた、全2回の特別企画。
案内人は、西荻窪[organ]や三軒茶屋[uguisu]のオーナーシェフ・紺野真さん。フレンチをベースにしたコース料理を得意としながらも、主役に据えるのは“野菜”。実際、7〜8皿で構成されるコースでも、肉料理は1皿だけということも多い。野菜を軸に、肉や魚はその魅力を引き立てるような組み立てが特徴だ。そんな紺野シェフによる最新刊『uguisu/organ 紺野真が作る野菜のひと皿料理』も話題に。
今回ご紹介するのは、紺野さんが「すごくシンプルだけど、びっくりするくらいおいしい」と語るトマトソースのパスタ。
材料はミニトマトとにんにく、オリーブオイルと塩だけ。驚くほど少ないけれど、火の入れ方と素材の力で味にぐっと奥行きが出る。このレシピは、紺野さんがSNSで紹介したのをきっかけに、海外で翻訳されて現地の料理本にも掲載されたという。
夏のトマトのおいしさをまるごと生かす、いま試したい野菜レシピのひとつをご紹介。
ミニトマトだけでつくる、シンプルトマトパスタ
材料(2人分)
・ミニトマト 400g(約2パック)
・にんにく 1〜2片
・バージンオリーブオイル 大さじ1
・塩 適量
・パスタ 200g作り方
1.にんにくは皮をむいて縦半分に切り、芽を取り除く。鍋にオリーブオイルとにんにくを入れ、弱火でじっくり香りを出す。
2.ミニトマトはヘタを取り、鍋に加えてフタをする。
3.弱火のまま15〜20分、トマトの水分が出てソース状になるまでじっくり加熱する。時おり木べらで優しく混ぜ、焦げつかないようにする。
4.火を止めたら、粗熱をとってからミキサーにかけて滑らかにする。
5.塩で味を整え、茹でたパスタにたっぷりと絡めて仕上げる
「ミニトマトは、わざわざいいものじゃなくていいんです。むしろスーパーで手に入るものでも十分おいしくなる」
そう話す紺野さんは、果汁に対する皮の比率が高いミニトマトにこそ、旨味と香りが詰まっていると考える。ワイン用のブドウが小粒なのと同じように、皮が多いことで味の密度が濃くなるのだ。
「水もワインも入れないんです。トマトだけで、ちゃんとソースになるんですよ」ミニトマトの持ち味を、しっかり引き出すのがこのソースの鍵。 火にかけて待っていると、トマトから自然に水分が出てきて、いつの間にかとろりとしたソースができあがる。今の時期、夏のはしりに出まわる完熟トマトを使えば、なおさら力を発揮してくれる。
ランチには、このトマトソースのパスタに「北海道産白いんげん豆と8種の野菜たっぷりとろとろ白いミネストローネ」を添えて。白いんげん豆をベースに、キャベツや茄子、セロリなどの国産野菜を使ったスープは、野菜の甘みと豆のまろやかさが溶け合う一杯。手軽に、野菜たっぷりの満足ランチが完成する。
紺野真 organ / uguisu オーナーシェフ
1969年東京都生まれ。高校を卒業後、カリフォルニア・ロサンゼルスに移住。帰国後、カフェやビストロで経験を積み、2005年に三軒茶屋にワインビストロ「uguisu」をオープン。2011年には西荻窪に「organ」を開店。2023年11月には、麻布台ヒルズに開業した「Orby Restaurant」のヘッドシェフに就任。著書には、『なぜかワインがおいしいビストロの絶品レシピ』(サンマーク出版)や、2025年4月には『uguisu/organ 紺野 真が作る 野菜のひと皿料理』(グラフィック社)を発売。
Photo by Abe Takuro(写真 阿部 拓朗)
Text by Sakurako Nozaki(文 野﨑櫻子)