
波平龍一の暮らしの料理 第五回
夏に嬉しい甘酸っぱ天国。
暑いです。夏本番という天気が続いてますね。
こういう日が続くと僕は、辛味や酸味がある料理が欲しくなります。
夏の旬の食材はそういった味わいとも相性が良かったり、元からそういう味わいを備えていたりしているので、スーパーでも自然と手が伸びます。我が家では、夏の中華は外せない季節の風物詩で、食卓に上がる頻度も増えます。油控えめ、和の香辛料多めのアレンジレシピになりますがこれが結構いけるんですよ。
今回のレシピにも「かんずり」という新潟県の伝統調味料が登場します。あまり耳馴染みがないかもしれませんが、使い勝手が良いので冷蔵庫に一つあると便利ですよ^^
先日、長崎の出島で「でじま芳扇堂」というどぶろく醸造場を営む日向夫婦が青梅に遊びに来てくれました。妻がお世話している田んぼや青梅の町を巡り、最後は青梅のレジェンド酒場[関忠]さんにて乾杯。その時にお土産で、「芳扇 雷雲」というどぶろくをいただいたので、今回はそんな一本に合わせて、酒から発想したレシピにもなってます。
多様で伸びやかかつ骨太な酸に加え、米本来のふくよかな香りをふっと支え上げるようなそやし水の包容力がとても印象的でした。そこへ夏の元気な酸味とコクのある香りをぶつけたらどうなるかなあということで、トマトとごま油をキーアイテムとして選んでみました。イタリアンのような、中華のような長崎の食文化にも通ずる文化ミックスな一皿になってます。
必要な食材を切り分けてしまえば、短時間で仕上がる一品ですので、夏が終わる前にぜひ一度作ってみてはいかがでしょうか?
RECIPE|豚肉とじゃがいものトマト炒め
【材料(2人分)】
・豚バラスライス 150gほど
・じゃがいも 2玉
・プチトマト 1パック
・胡瓜 ½本
・ニンニク ½ケ
・水 コップ半分(約80cc)
・塩 5〜6つまみ
・ごま油 小さじ1
・かんずり 適量
【手順】
①食材を切る。
豚バラは一口大に、じゃがいもはスティック状に、胡瓜は細切りに、プチトマトは小さく切り分け、ニンニクも適当に刻んでおく。
②食材を炒め合わせる。
ごま油とかんずりをフライパンに加え、豚肉とじゃがいもを加え塩を4つまみほど振って弱中火で炒める。じゃがいもにあらかた火が入ったらニンニクとトマトを加え、さらに2つまみ程の塩を振って炒める。トマトの水分がある程度飛んだら水を加えフライパンをゆすりながら30〜40秒ほど強火にかける。
③盛り付け
②を皿に盛り付け、細切りにしておいた胡瓜をどっさりと中心にのせたら完成。しっかり混ぜてから、さあ召し上がれ!
どぶろく×中華の可能性
彩り豊かで、夏らしいエネルギッシュなビジュアルに仕上がった一皿ですが、食べ合わせにも夏らしさを発見できた今回。夏の辛い料理といえば、ビールを合わせるのは鉄板ですが、盲点だったのは、辛い元気系料理にどぶろくの組み合わせは最高だ!ということ。
同じお米を使ったお酒でも、清酒の場合だとクリアな質感だからか、油感や辛味が強いと合わせきれなくなる時があるのですが、それに比べて、どぶろくはミルキー。その質感と米をまるごと使っているからこその風味で、辛味をマイルドにしてくれるので案外相性がいいなと。今回の一本はそれに加えて酸も備えていたので、油を使った料理の後口もしっかり切ってくれて、いいリズムで食べ終えることができました。
どぶろく×中華の組み合わせは、探究のしがいがありそうです!
その日の食卓の主役が決まっていると、作る方も食べる方も楽しみが倍増するなあと感じることがしばしばあります。この日の晩御飯は改めてそんなことを思わせてくれるような、美味しくて楽しい時間になりました。
日向さんが「開けてから3日位するとまた印象が変わって面白いんで、試してみてください!」と言っていたのを思い出して、危なく飲み終えてしまいそうになっていたところに急ブレーキをかけました。
どんな味になるのかなと自分なりに想像しながら冷蔵庫にある酒を眺めるのも、贅沢ですよね。我慢できる時とできない時がありますが、、
また長崎に行ってお二人と一緒にはしご酒ができる日はいつになるやら。
出島の町のあの坂を登った先で見える海の風景を思い浮かべながら、青梅の自宅で楽しむ夏の晩御飯は、いつにも増して特別で、元気になる味わいでした。
- 暮らしの料理 調理担当
波平 龍一 / Ryuichi Namihira
1993年、神奈川県出身。大学卒業後、東京の懐石料理店にて料理人としてのキャリアをスタート。その後、京都に拠点を移し、中東篤志氏に師事。現在は、東京あきる野にて自然農に取り組んでいる、妻の波平雪乃と共に[暮らしの料理]の屋号で晩御飯企画を主宰。 その他イベントへの参加や商品開発を中心にフリーで活動中。
IG @namihei_kome