マイ・パスタ・キッチン 〜シェフに教わるお店のパスタレシピ〜

パヴォーネ・インディアーノの「自家製タリアテッレ」(麺の作り方)


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 29, 2025

イタリア×インドをコンセプトにした料理と自然派ワインが楽しめるレストラン[パヴォーネ・インディアーノ]。渋谷区幡ヶ谷の商店街で、オーナーシェフの黒川幸一さんが仕込みから営業まで全て一人でこなす小さなお店では、前菜からメイン、締めのパスタまでアクセントが効きながら優しい味わいを堪能できる。

同時公開の記事では、香辛料を使ったボロネーゼソースの作り方を教えてもらったが、こちらの記事では、ボロネーゼと合わせたタリアテッレを自家製する方法を教えてもらう。そう、パスタの麺をおうちで作る方法だ。

パスタマシンでパスタを作る

以前、西小山[チッツィア]のばばさんからも手作りパスタを習った。その際は、小麦粉と水、塩とオリーブオイル、あとは家庭にきっとある調理道具で作る、まさに子どもと一緒に楽しく作れるというレシピだった。

今回は、パスタマシンを使う。お店で仕込むのと同じ本格的なレシピだ。「スパイスからカレーを作る男」なんて言葉が少し前に話題になったけれど、「パスタマシンでパスタから作る男」になってしまおうという話だ(もちろん女性だって大歓迎)。肝心のパスタマシンだが、Amazonで探すと数千円〜一万強で売られている。黒川さんは「3,000円くらいの最低限のものでいいですよ」と言っていたので、オークションサイトでも探してみると未使用中古で予算に適うものが見つかった。少し根気良く探す必要があるかもしれないが、ちょうどよいものがきっと手に入るはず。

パスタマシンを使用するにあたっては、テーブルが必要になる。2人で使えるくらいのダイニングテーブルで十分で、パスタマシンを万力的な器具で固定する必要があるのであて木があると傷を残す心配もないだろう。

小麦粉は何がいいのか問題

今回のタリアテッレに使う材料はこちら。

・軟質小麦粉 400g
・塩 4g
・卵 4個(200g)

以上であるが、気になるのは「軟質小麦粉」とは何か……? 黒川さんが使用するのは「CAPUTO 00 Pasta Fresca e Gnocchi」というイタリア産の小麦粉。カプートは今年101歳になるナポリの製粉会社で、ピッツァ、パン、パスタからドルチェまでさまざまな職人のニーズに応える有名ブランド。この通称“ゼロゼロ粉”はパスタ用にブレンドされたタイプで「とてもきめの細かい粉で、扱いやすい小麦粉」で、もちもち感と歯切れのよさが出るのだそう。

物の本によれば、硬質小麦粉というのは、いわゆる「デュラムセモリナ粉」で乾燥パスタに適した小麦。いわく、硬質小麦は南イタリアで生産が盛んだったのに対し、北イタリアでは軟質小麦しか手に入らなかったのだそう。そうして、生パスタ文化は北イタリアから、乾燥パスタ文化は南イタリアから生まれてきた、という歴史があるそうだ。ボローニャ(ボロネーゼの発祥地)は、たしかに北イタリアだ。卵を入れるかどうかは、地域によってかなり割れるそうだが、ボローニャのあるエミリア=ロマーナ州では入れることが多いとのこと。なるほど、軟質小麦に卵を混ぜる生パスタは、ボロネーゼにぴったりというわけだ。

日本の小麦は軟質小麦に当たるそうで、ということは日本でふつうに手に入る小麦粉で作ればOKということ。パスタといえばデュラムセモリナなのかと思っていたから、これは勉強になった。

さて、前置きが長くなったが、作り方を見ていこう。

生地作り〜寝かせ

最初のステップは生地を作ること。小麦粉と卵を混ぜ合わせ、パンをこねるようなイメージだ。

全卵4個をといたら、別のボウルに入れておいた小麦粉に流し入れる。この際に小麦粉の中央にくぼみを作っておき、卵が一箇所に収まるようにする。卵かけごはんのような感じで。

真ん中に入った卵に向かって、外側に寄った小麦粉から少しずつ混ぜ入れ、卵の水分を吸わせるようにして馴染ませていく。最初はフォークで混ぜていき、途中からは手で混ぜ合わせる。全体が同じボロボロ感になるのを目指す。

こんな感じのボロボロ感。全体が均一に水分を含むように意識する

「そんなに神経質にならなくて大丈夫です。全体に水分が行き渡ったら一つにまとめて捏ねていきます」

手の腹に体重を乗せながら生地をまとめていく。押し広げたら、折りたたんで、また押し広げて折りたたんで……これを繰り返すこと10〜15分。捏ねれば捏ねるほどなめらかな生地に育っていく。

均一に生地を伸ばせたら丸く捏ねて、ボウルの中へ。ここから3時間以上寝かせる。表面が乾かないようにラップをぴったりして、当日なら常温で、一晩寝かせる場合は冷蔵庫に入れておく。寝かせることで、生地のきめがよりきれいに、全体に水分が周りまとまりが出て、やや色も濃くなる。

パスタマシン登場

寝かせた生地を半分に切ったら、手で押し伸ばし、さらに麺棒を使って細長く伸ばしていく。パスタマシンに通すための伸ばしなので、力みすぎで大丈夫。

そしていよいよパスタマシンの出番だ。刃のついていない生地を伸ばすところに上から生地を通してハンドルを回す。薄さ調節のダイアルは厚めからスタート。出口が渋滞しないように生地を畳みながら、気持ちよく生地を送り出そう。ダイアルを段階的に薄く調節しながら、これを繰り返すと3回くらいで一番薄い生地になる。

伸ばした生地を包丁で切って長さを整える。これが最終的な麺の長さになるので、30cmくらいを目安にお好みの長さにカットする。

生地を並べ、風を当てて乾燥させる。歯切れの良さに影響するポイントなのだそう。

ここで実際に自分でやってみての注意ポイントだが、まずけっこう広いスペースが必要になる。打ち粉をしないとくっつきやすいので、粉を打てるスペースの確保は必須だ。また、カプートが手に入らなかったので、一般的な薄力粉とパン作り向けの国産中力粉の2種類で試した。捏ねるのは薄力粉の方が柔らかく、まとまりやすかった。とはいえ、中力粉もしっかり捏ねればきれいにまとまる。伸ばす段階になって見方はやや逆転した。薄力粉は柔らかいため、板状に伸ばすと手に持つだけでびよーんとなりやすくやや扱いが難しい。水分量も高い感じで、比較的くっつきやすかった。この点、中力粉の方がやりやすかった。食べたときの香りは国産中力粉の方がよかった。

さて、いよいよ麺状にカットするという最終段階へ。パスタマシンの平麺用の刃に生地をセットしてハンドルを回す。瞬く間にタリアテッレが生み出される!

落ち切る前に手ですくい上げる動きが気持ちいい。端っこはギザギザしてしまうのでお店では取り除くが、家庭なら食べてしまって問題ないだろう。あるいは、端材でまとめて再利用するというのもあり。

かくして無事に自家製タリアテッレが完成!

ボロネーゼソースもしっかり仕込んで、誰かをおもてなししたくなる一皿にぜひチャレンジしてみてほしい。(ボロネーゼ回はこちら)

手作りの生パスタは冷蔵 or 冷凍保存がマスト。冷凍の場合でも5日以内を目安に食べるようにしよう。熟成という観点もあるがあ、時間経過とともにコシがなくなり、空気に触れることで劣化は避けられない。イタリアの家庭では生パスタはどんな風に扱われているのだろう。もっとパスタのことを深掘りしたくなった貴重な経験に感謝。黒川さん、ありがとうございました!

パヴォーネ・インディアーノ|Pavone Indiano
東京都渋谷区幡ケ谷3-9-13(Google Maps
17:00〜23:00(F.L.O 21:30)
火水木定休(毎月カレンダーを更新、インスタグラムをご確認ください)
Tel 03-5333-1312
IG @pavone_indiano

Photo by Daikichi Kawazumi(写真 河澄大吉) IG @daikichi_kawazumi
Text & Edit by Yoshiki Tatezaki(編集・文 舘﨑芳貴)

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