マイ・パスタ・キッチン 〜シェフに教わるお店のパスタレシピ〜

パヴォーネ・インディアーノの「香辛料のボロネーゼ」


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 29, 2025

パスタと素敵な時間が過ごせるお店に、パスタの作り方を教えてもらう「マイ・パスタ・キッチン」。[クオーレ・フォルテ(Cuore Forte)]のレモンパスタカラスミパスタ、[チッツィア(Cizia)]のカチョエペぺ(+手作りパスタ)に続き、今回は幡ヶ谷の[パヴォーネ・インディアーノ(Pavone Indiano)]に入門した。

パスタのいいところはたくさんある。パスタ自体の形状もさまざまだし、合わせるソースもさまざまだ。毎日パスタを食べたって、その組み合わせが違えば飽きずに付き合える。具材の選択肢が広いから一皿で野菜もお肉も摂れる、いわゆる完全栄養食的なメニューも可能だ。それでいえば、ボロネーゼ。マイ・パスタ・クエストなんてゲームがあるならば、早くに仲間に加えておきたい頼れる存在だ。

ボロネーゼは焼き目を入れたひき肉と香味野菜、赤ワインを合わせたソース。ボローニャ地方発祥のこの煮込みソースパスタは、現地では「ラグー・アッラ・ボロニェーゼ」と呼ばれるのだそう。アメリカ発祥のひき肉とケチャップ主体のミートソースとは区別されている(こちらも美味しいが)。野菜とお肉、そしてパスタで栄養バランスのよい一皿。そして、今回のレシピも然り、一度で4人分くらいはできるので、残りは冷凍保存。次は解凍して麺と合わせるだけで食べられるという、自炊の心強い味方にもなる。

イタリア×インドと、仮面少々、クリエイティブで優しいワンオペ店

今回ボロネーゼの作り方を教えてくれたのは、イタリア×インドがコンセプトの料理と自然派ワインのレストランを幡ヶ谷で営む黒川幸一さんだ。

お店に初めて足を踏み入れると、その仄暗さに少し緊張するかもしれない。ふと壁を見上げると個性的なお面が飾られていて、不思議な気持ちに拍車がかかるだろう。でも心配ご無用。黒川さんの柔らかな案内にしたがって、料理とワインを口に運べば、すぐに再訪を決めたくなるほど居心地のよいレストランだ。

営業も黒川さん一人なら、仕込みも同じく。丁寧な仕込みこそ満足なお腹とスムーズな営業につながっている。だから、火水木の3日は定休で、営業は金曜から月曜が基本になっている。

仮面は黒川さんが自ら作った作品である。2018年から開催されている「幡ヶ谷仮面展」がきっかけですっかり仮面づくりにハマったのだとか。自由でいて個性的なクリエイティブマインドは、黒川さんの料理にも共通すると思う。イタリア料理店で修行し独立する際、自分がやる意味のある料理はどんなものかと思案したと言う。そこには、すでに成熟していたイタリア料理界の諸先輩へのリスペクトがもちろんあっただろう。その上で、自らがやりがいを見出せる料理を目指したはずだ。そして、イタリアンに欠かせないハーブ使いとインド料理のスパイス使いとの間に掛け合わせの可能性を感じ、今のスタイルが生まれることになった。とはいえ、それは”いかにもスパイシーな料理”ではなく、食材の旨味を引き出した上で、ちょっとした変化をつけるデキる相方みたいな立ち位置でスパイスを活かす、一口食べればうんうんと静かに頷いてしまうような料理だ。今回の「香辛料のボロネーゼ」も、そんなパヴォーネの魅力を感じてもらえる一皿になっている。

さて、それでは作り方を教えてもらおう。

<香辛料のボロネーゼ 材料(トマト缶1個で作りやすい量・約4人前>

・玉ねぎ 350g
・人参 150g
・セロリ 150g
・生姜 20g
・にんにく 15g
・青唐辛子 半分〜1本
・油(米油) 30〜40g
・牛豚ひき肉 400g
・ホールトマト 1缶
・赤ワイン 200g
・ヨーグルト 60g
・パクチー 30g

スタータースパイス(全てホール)
・シナモン 5g
・マスタードシード 1g
・コリアンダー 1g
・クミン 2g
・カレーリーフ 3枚

パウダースパイス
・シナモン
・コリアンダー
・クミン
・カイエン

仕上げ(一人分のパスタ90gに対して)
・バター 7g
・パルミジャーノ お好み
・ライム 1/8個

手順をおおまかにまとめておくと、
1. 野菜を刻む(包丁でも可能だが、フードプロセッサーやぶんぶんチョッパーがあるとかなり楽)
2. スパイス&野菜を炒める。並行して肉を焼く(深めの鍋とフライパンが必要)
3. 水・ワインを加えて煮込む(20分ほど)
4. 味見と調整

これでボロネーゼソースができあがる。あとは、パスタを茹で、フライパンでソースを少し煮詰めながらパスタと合わせて盛り付ければ完成だ。

玉ねぎ、人参、セロリはみじん切りにする。爽やかさを加える青唐辛子は刻む程度。生姜とにんにくはすりおろす。

玉ねぎ、人参、セロリの皮の部分は捨てずに、水で煮ておき、後々の水分量調整の時に使う。ただの水を使うより香りを保つことができる

ホールスパイス+青唐辛子と油を鍋に加えて中火にかける(スパイスは大きいものから順に入れるとよい)。ジュワジュワして香りが立ってきたら、野菜を加え、そこに塩をひとつまみまぶす。

ひき肉の片面に塩をふり、その面を下にして油を敷いたフライパンで焼く。焦がし目のハンバーグをイメージして、しっかり火を当てる。上の面にも塩をふっておく。

脂が多く出てきたら野菜の鍋の方に逃がす

肉をひっくり返して、もう一方の面にも焼き目をつけていく。

焼けたら、ヘラで肉をほぐす。ざっくりとムラのあるほぐし方でOK。ほぐした肉を野菜の鍋に移す。

肉を焼いたフライパンに赤ワインを入れ中火にかけ、半分くらいの量になるまで煮詰める(具材となじみやすくするため)。

赤ワインを野菜&肉の鍋に入れて軽くなじませたら、パウダースパイスを入れる。

続いてトマトを加え、加熱して煮詰める。

あとは、焦げ付かないように気をつけながら見守るだけ。このところどころ手が休まる距離感もボロネーゼづくりのいいところ(その間に片付けを進められたり)。

野菜出汁で水分量を調整しながら煮詰めていくが、目安は「カレーにちょうどよさそうなくらい」。

最後に弱火にし、刻んだパクチー、ヨーグルトを加えて混ぜ合わせる。味見をして、足りなければ塩とカイエンを加えて調える。ここでも「9割くらいでOK」。

たくさんの具材が混ざり合ったソース。濃度はパスタと和える時に微調整できるので、煮詰めすぎず心配しすぎずで大丈夫

さて、それではパスタを茹でていく。今回はタリアテッレを使用。厚さ1ミリほどの平らな麺でリボンのようとも言われる、強いコシともちもち食感が美味しいパスタ。(乾麺でもちろんOKだが、黒川さんにはパスタマシンを使った手作りの仕方も習ったので、別記事をぜひチェック)

一人分のボロネーゼソース(150gほど)とバターをフライパンに入れて加熱。野菜出汁で少し伸ばす。タリアテッレと合わせて、味を調える。

野菜と肉の甘やかな旨みの香り、そこにスパイスが爽やかさとアクセントを加える。

お皿に盛り、胡椒とパルミジャーノをお好みでかけて、完成!

つるんとしてコシのあるタリアテッレに、ぜいたくな気分にさせてくれる香りが重なり合う。黒川さんはさらにライムを絞って味変するのもおすすめだと言う。試してみると、甘さがすっと締まり、スパイスと相まって爽やかさが際立つ。足すことでまとまる、とっておきの切り札的存在。

黒川さんが目指すのは、「日常で美味しく食べられて、食べ疲れしない味」。「曲線的にやわらかく入ってくるような日本の料理は素敵だと思います」とも語る。イタリア、インド、仮面……最初はどんなお店なんだろうと半ば訝しんだ自分が懐かしいほど、すっかりほっとしてしまう。そんなお店の魅力が、このボロネーゼにもしっかりと反映されている。

🍝「香辛料のボロネーゼ」レシピまとめ

1. 野菜を刻む。玉ねぎ、人参、セロリはみじん切り。青唐辛子は刻む程度。生姜とにんにくはすりおろす。野菜の皮は水で煮ておき、後の水分量調整で使う。

2. 深めの鍋に油、ホールスパイスを入れて中火にかける。香りが立ったら野菜と塩ひとつまみを加えて火を炒める。

3. 並行してひき肉を焼く。塩をした面を下にして、油を敷いたフライパンに入れ、中〜強火でしっかり焼き目をつける。もう片面にも塩をふる。ひっくり返してさらに焼き、焼き色がついたらヘラでざっくりとほぐす。野菜の鍋に移す。

4. 肉を焼き終わったフライパンに赤ワインを入れ、半分くらいまで煮詰め、野菜の鍋に入れる。馴染ませながら、パウダースパイス、トマトを順に入れる。

5. 煮込む。最後に刻んだパクチーとヨーグルトを加えて混ぜ合わせ、味見をしながら塩とカイエンで調整する。

6. タリアテッレを茹でる。茹で湯には少ししょっぱさを感じる程度の塩を入れておく。

7. ボロネーゼソース、バターを加熱し、茹で上がったタリアテッレと和える。お皿に盛り付け、胡椒、パルミジャーノをお好みでかけて完成。ライムは味変に使う。

パヴォーネ・インディアーノ|Pavone Indiano
東京都渋谷区幡ケ谷3-9-13(Google Maps
17:00〜23:00(F.L.O 21:30)
火水木定休(毎月カレンダーを更新、インスタグラムをご確認ください)
Tel 03-5333-1312
IG @pavone_indiano

Photo by Daikichi Kawazumi(写真 河澄大吉) IG @daikichi_kawazumi
Text & Edit by Yoshiki Tatezaki(編集・文 舘﨑芳貴)

WHAT TO READ NEXT

RiCE編集部からお便りをお送りしています。

  • 最新号・次号のお知らせ
  • 取材の様子
  • ウェブのおすすめ記事
  • イベント情報

などなど……RiCEの今をお伝えするお手紙のようなニュースレターを月一回配信中。ご登録は以下のページからアドレスとお名前をご入力ください。

ニュースレターの登録はコチラ
PARIYA CHEESE STAND Minimal Bean to Bar Chocolate
BALMUDA The Kitchen
会員限定の最新情報をいち早くお届け詳しく