香り 薫る 馨れ

1+1+1が100になる、未だ解明されぬ香りの世界。


Koji TamuraKoji Tamura  / Apr 6, 2018

桜が咲き、暖かな風がそよぐ春の訪れ。菜の花や山菜、筍、僕の母はこの時期特に料理を作るのが楽しそうでした。食材を手に取り、何と合わせるかを考える時間はとても楽しいものです。食材は季節の変わり目をそっと教えてくる。

僕は料理を考える時、メインの素材を決め、それと相性の良い素材を二つ組み合わせます。 (更に2つほど足しますがここでは割愛) 前回載せた料理で言えば、ブロッコリーをメインの素材にし、グレープフルーツとディルを合わせる。

食材だけで言えば1+1+1で3になります。しかし食材が持つ香り成分は、未だ解明されていないものを含めて数十から数百を超えるもので構成されています。なので香りの組み合わせで言えば、1+1+1は100を超える組み合わせになるのです。

ブロッコリーとグレープフルーツとディルにはそれぞれリンクする風味があります。ブロッコリーとディルには青さが、グレープフルーツとディルには柑橘由来の香りが。ブロッコリーとグレープフルーツは青さを持ったフレッシュな香りもですが、それぞれが持つミネラル感と苦味で繋ぐイメージ。
そしてこの言葉で表現する以上に香りは複雑に絡み合っており、リンクする香りの要素が多いほど、そのボリューム感は増し余韻は長くなります。

香水の組み合わせを調べてみると、相性の良いものが多く組み合わされています。 (敢えてネガティブな要素を加え香りを引き立てる事もある) 特に料理に関してはこの調和が大切になると考えており、食材における香り成分や、調理法によって新たに生まれる香りをどう繋げるかを意識します。勿論ロジカルな部分だけではなくイメージによるつながりも大切で、以前話したように人の記憶に呼びかける要素を入れると更に香りの力が増す。

香りの調和を想像して料理を作り、味わいの広がりを感じる時、五感が研ぎ澄まされ香りの世界の奥深くへとゆっくりと沈んでいく。雑音が消え、風味、旨味、温度、食感を口腔内と脳で感じとる。自分の知らない世界に出会った刹那、何とも言えない高揚感を覚える。

そんな世界に出会えたのも香りのお陰だ。

僕の周りには本当に素晴らしい香りのスペシャリストたちがいる。同じRice PeopleでWine Directorの大越基祐さん、GEM by motoの千葉麻里絵さん、ABV+CEOの野村空人さん、そしてGENGENANの茶師・松尾俊一さん。皆さん飲み物のプロですが、まるで調理をするように香りを重ね、生みだしている。

この方たちと切磋琢磨しながら料理だけでなく、多方面で香りの力を伝えていきたい。

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