
暑いほど 沁みてくるよな さわやかさ
夏に飲みたい緑のお茶 Recipe by MATRA
緑茶はほっこり温かく、こたつでみかんをむきながら、というイメージがあるかもしれないが、東洋医学の陰陽の考え方では緑茶は「陰」の飲み物、すなわち身体を冷ますものと考えられている(発酵茶やほうじ茶は陽とされる)。
外出時はもちろん、室内で作業をしていても水分補給が欠かせないこの季節、「緑のお茶」を上手に活用して快適に過ごしたいところ。
そこで今回は、目黒のティーアトリエ[MATRA]を訪ねて、店主の中村文聡さんに「夏に飲みたい緑のお茶」を紹介していただいた。長年バイヤーとして世界各地のお茶とその飲まれ方と出会ってきた中村さんならではの、明日から自宅でできる爽やかなお茶の楽しみ方を4つお届け。
01 モロッコのアッツァイ風
こちらは温かく淹れて飲むお茶、ではあるのだが「見た目の清涼感を愉しんでほしいです」と中村さん。
なるほどそういう目線もあるのかと早速軽く感動していると、用意されたのは、スペアミントと氷砂糖。お茶は「ガンパウダー(平水珠茶)」と呼ばれる中国浙江省伝統の緑茶。
ガンパウダーは、その名の通り火薬のような小さな丸い形が特徴的。モロッコではこの中国からのお茶を、ミントと砂糖と一緒に温かく淹れて、のんびり飲むのがお決まりなのだそう。
「砂埃が舞う暑いモロッコの街中で飲むと、この味がとてもしっくりくるんです」と、中村さんの心にある異国のお茶の風景を語ってくれる。乾燥した暑さの中では、ミントの清涼感とストレートな甘さが気持ちよく、力強い渋さと香ばしさを持つガンバウダーがそれをまとめてくれるのだろう。
さっそく淹れ方を教えてもらう。ミントのきれいな緑色と涼しげな氷砂糖を目でも愉しんでほしい。
ガンパウダーの茶葉。いきなりながらこちらはけっこう希少な茶葉。ご家庭では紅茶や烏龍茶、地方番茶など少しスモーキーさや渋みを感じるお茶で試してみよう
温めた容器に茶葉を入れる。中村さんは身近にある道具でお茶を始めることを大事にしているので、この時もビーカーで
ミントはたっぷり、手のひらでぎゅっと握って香りを出しつつ入れる。何杯も楽しめるので氷砂糖はたくさん入れる(けっこう甘めがそれっぽい)。「少量で凝縮した味香りを楽しむことで、渇きが癒され、暑気が飛びます。そのため、ミントも砂糖も沢山入れてみてください。他のミントティーと違うポイントです」
お湯を差して、味が均一になるように少し混ぜる。氷砂糖は二度目以降に残っていてOKなので、溶かし切らなくて大丈夫。弱火でしばらく煮るようにしてじっくり出してもよい
グラスに注ぎ入れる際は、できるだけ高めから泡を立てるようにするのがポイント。ミントが香り立って、空気を含むことで甘みや渋みが混ざり合うのがこのお茶の肝のようだ
少量で砂漠の渇きも癒す、モロッコ式ミントティー。暑くてしょうがない時、逆に濃厚な熱いミントティーを試してみるのはいかが。
02 鹿児島・頴娃の煎茶をフローズンティーで
次は冷たい飲み方。茶葉は鹿児島県頴娃町産の煎茶。鹿児島では深蒸し茶が多く、その鮮やかな緑色と豊かな甘み旨み香ばしさが魅力。
今回は中村さんおすすめのフローズンティーという、お茶の一番おいしいところを低温で閉じ込める飲み方でいただく。
☆茶葉の量は作るお茶100mlに対して1gの割合
①まず常温の水を少量入れ、少し揺すって水を行き渡らせるようにしてから、熱湯を入れる(茶葉が十分に浸るくらいの量でよい)。
②一分待つ。
③氷を容器いっぱいに入れ、隙間に水を足し入れる。揺すって混ぜ合わせると氷が溶けていくので、その分氷を足し入れる。
④スプーンやマドラーでよくかき混ぜ、氷が溶けたら注いで、いただく。
最初にお湯で抽出することにより、香りや味のボリュームがしっかりと出る。そのまま氷で急冷することで、その風味を無駄にせずにキリッと冷たい一杯ができるというわけ。
ちなみに中村さんは普段、最初から全て水筒に入れて作ってしまい、保冷しながら好きな時に水筒を振ってかき混ぜ、好きな分飲む、ということにしている。一度作ってしまって、デスクなど作業場に持っていける、便利な飲み方だ。
03 春摘みダージリンをコールドブリューで
インドの北東部、ヒマラヤ山脈の中でもネパールとブータンに挟まれたところにあるダージリン地方。高い標高や寒暖差など、山の気候によってつくられるお茶は世界的に有名な紅茶。ではあるものの、春摘み=ファーストフラッシュのダージリンは緑茶のように仕上げられ、液色は美しい黄金色。現地で「fresh」と表現される春摘みの、オレンジのような若草のようなみずみずしい風味は、夏にこそ最適だ。
ホットでももちろん美味しいが、水出しにすると甘みが際立ってまたおすすめとのこと。
水出しは簡単。茶葉を水と一緒にボトルに入れ、冷蔵で8時間ほどでできあがる。
04 大きな葉っぱそのまま、太平猴魁は注ぎ足しで何煎も
日がな一日、お茶をかたわらに過ごす暮らしに慣れてきたら、こんな飲み方をおすすめしたい。中村さんも推奨するグラスティーという飲み方だ。
文字通り、グラスに直接茶葉を入れ、お湯を注いでお茶を出し、そのまま啜り飲むというもの。「これに向くのは、日本茶でも紅茶でも烏龍茶でも何でもいいですが、品質のしっかりとしたお茶」と中村さん。
今回は中国の緑茶だが、これも香りがよく出るものの、お湯につけておいても渋さは出づらく、何度もお湯を注ぎ足して飲んでいられる。
こちらが
お湯をさすと葉が開いて、元の形に戻っていくのがわかる
「見た目が爽やかですよね。かつての上海など都市部のクラシックな茶館で、おじさんたちが扇風機の風にあたりながら、ナッツとかをつまみながら、何杯も何杯も一日中飲む、素敵なノスタルジーを感じるお茶です」
青々とした緑の葉を目でも楽しめる緑茶。
気持ちから爽快にしてくれる飲み物って、意外とない。
[MATRA]では、その時期ごとに良質な茶葉をセレクトして販売している他、アトリエでのティーセッションを随時行なっている。「いい茶葉があれば、どんな飲み方でもお茶が好きになれる」が信条の中村さんのお茶愛もたっぷり感じてみてほしい。
MATRA
東京都目黒区碑文谷3-16-22-101
10:00~20:00
不定休・予約制
WEB https://matra.jp/
IG @matra_teaPhoto & Video by Masahiro Ibata(写真 井畑雅裕)
Text by Yoshiki Tatezaki(文 舘﨑芳貴)
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