エディターズノート

「RiCE」第29号「ビール」特集に寄せて


Hiroshi InadaHiroshi Inada  / Jun 6, 2023

RiCEの通算第29号はビールの特集です。前回特集したのが2018年の第8号「クラフトビールの力」でしたから実に五年ぶり。五年って長いような短いような。でも時代は大きく変わります。その頃にはまだ若干尖っていた印象の「クラフトビール」という言葉もすっかり定着し、大手以外のビールをコンビニで見かけることも珍しくなくなりました。

日本全国にクラフトビールのブルワリーは増え続け、今年中に800社を超えるのではという予測もあるようです。それって平均すると各都道府県に20近くもブルワリーが存在することになるわけで、とどまるところを知りません。

この勢いは一体どこまで続くのか? まだまだ続くというのが自分の見立てです。なぜなら、日本の多くのブルワーが指標としている本場アメリカでは、今や優に9000を超える醸造所があるそうで、人口比が約2,5倍であることを差し引いても実に10倍以上。桁が違います。

もちろんそこには文化的な背景の違いが大きくあって。一つにはホームブルーイング、いわゆるビールの自家醸造が盛んなアメリカと比べ、日本では全面的に禁止されていること。つまり裾野が全く異なっている。やりたくなったら誰でもビールを作れるアメリカと、農大の醸造科にでも入学しない限りそれが不可能な日本。言ってみれば子供の頃からリトルリーグで野球をやり続けているベテラン選手と大学デビューの選手が試合をやるようなものでしょう。(あ、アメリカであれ子供はアルコール飲んじゃダメでしたね)

もちろん他にも原材料の問題がありました。小麦やホップの生産量が低い日本では調達の部分で小規模のブルワリーだと太刀打ちするのが難しい。圧倒的な規模感による輸入ロットの有利さから大手のみがビール市場を寡占してきた日本の状況は、いわば構造的な要因が大きいのです。

とはいえ全アルコール消費の3分の1近くを消費しているビール大好き国民でありつつ、和食に由来する繊細な味覚表現を得意とする日本人が、今のトレンドであるIPAやヘイジーなどを押さえつつ、世界進出するチャンスは十分にある。野球の例えに戻るなら、これからも増え続けるブルワーの中で、未来の大谷翔平選手のような存在が現れる可能性だってあるのです。

そう考えると、いかにビハインドがあったとて、めちゃくちゃ夢と希望がありますね。酒造免許が比較的取りやすく、スタートアップも参入し易い。どうやったらブルワーになれるか? そんなコーナーも今回は力を入れてみました。そしてもちろん、[うちゅうブルーイング]をはじめとするブレイクポイントに立った話題のブルワリーの今もしっかりジャーナルしています。

世界最古の飲み物の一つとされ、世界中から愛され続けてきたビール。自分にとっても一年中ほぼ毎日のように飲んでいる存在ですし、この原稿を脱稿したら、まず冷蔵庫の缶ビールを開けようと決めています。

キンキンに冷やしたクールなビールが美味しい季節が今年もやってきました。はい、乾杯!

Illustration by Masakatsu Shimoda
       
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