ダイナーコンフィデンシャル

002 ダイナーと地域


Kotaro YoshidaKotaro Yoshida  / May 22, 2025

皆さん、こんにちは。

新丸子でアイスクリームダイナー[BIG BABY ICE CREAM]、目黒ではアジアンレストラン[NOON]、同ビル2Fカフェ[PARLOR NOON]、ディレクション業務を行う「DINER Direction」を運営している株式会社DINERの吉田 康太郎です。

前回の連載では、僕がダイナーを好きな理由や好きになった経緯を書かせて頂きました。

「僕はダイナーの表面的な派手なデザインが好きという事では無く、ダイナーが持つ地域性独自性三世代普遍の価値を提供続けている概念が好きな理由です」(※第1章より)

GERD KITTELの「DINERS PEOPLE AND PLACE」。大学時代からずっと持っている僕の大事な本です

今回は、僕が考えるダイナーにおける“地域とお店の関係性について”です。(これから書くことは、23歳でお店を立ち上げ8年間お店に立っている経験から考えている事になります)

私が思う良いお店は、地域、コンセプト、食べ物(商品)、デザイン、スタッフ、価格、音楽、商業性など多くの要素に一貫性があり矛盾していない事が大事だと思っています。

例えば、僕らの[BIG BABY ICE CREAM]は、東急東横線の新丸子駅の東映会という商店街の中にあります。

近年、都市開発をしている武蔵小杉の流れも汲みながらも、地元の方々が多く住んでいる街です。

最近では、地方から学芸大学や都立大学に一人暮らしをして、結婚を機に子育てがし易い新丸子周辺に移り住む方々が多くいるように思います。

他の街に比べると、より世代の幅があり新旧の方々が交じり合っている本当に素敵な街です。

[BIGABABY ICE CREAM]の上に住んでいる大家さんがBIGBABYの場所で昔やっていた呉服店。何店舗か新丸子で店舗展開をしていた。大家さんは、新丸子に若者をという想いでいつでも僕らの応援してくれている。感謝

そういう新丸子という街である為、僕たちは「三世代で楽しめるアイスクリームダイナー」というコンセプトでお店を運営しています。

新丸子という街(地域)だからこそ、三世代というお客様の幅を持たせ、アイスクリームとダイナーを掛け合わせる事でさらにお店の独自性と幅を持たせ、“地域とお店の関係性”の矛盾を無くし一貫性を持たせています。

このコンセプトは、もし僕らが渋谷や中目黒、恵比寿などの商業的な地域で路面店のお店をやるとしたら地域性が異なる為、矛盾してしまうような気がしています。

このように地域性から生まれる「三世代で楽しめるアイスクリームダイナー」のコンセプトを起点にお店作りをします。

例えば、

「三世代で楽しめるアイスクリームダイナー」だから、
提供サイズをとってもシングル、ダブルの下のベイビーサイズを設け最低価格は、手頃な420円(創業当初は¥290でした。)にし三世代が楽しめるように価格設定にしています。

「三世代で楽しめるアイスクリームダイナー」だから、
店内デザインも、大人が楽しめるカウンター、若者が座るハイテーブル、幼い子や高齢な方が安全に座って楽しめる低いL字カウンターでデザインしています。

「三世代で楽しめるアイスクリームダイナー」だから、
アイスクリーム屋でなく、アイスクリームを使用した幅広いメニュー展開できることやドリンクやお子様と一緒に来られる親御さんが嗜められるお酒まで展開しても矛盾しません。

一方で2店舗である、[NOON]と[PARLOR NOON]は、新丸子とは異なり都心である目黒という街で多様な国籍のビジネスマンが多く商業的な大企業や中小企業、ファッションブランドのヘッドオフィスがあります。

目黒店舗。1階がレストラン、2階がカフェ

商業的で国際色のある地域だからこそ[NOON]では、「NEW ASIAN STANDARD」、[PARLOR NOON]では「嗜好品の楽園」というコンセプトで新丸子とは異なった地域へのアプローチで営業をしています。

ここで設定するコンセプトは、あくまで自分達の経験や活動、旅などを通じて考えてきた事や日々考えている事を、なるべく曖昧な言い回しやフレーズを避け名詞を使用しよりコンセプトを明確にするように心掛けています。

世の中には多くのお店があり多くのコンセプトが存在しますが、自分たちの考えや哲学を反映すれば、それは他のお店とは少し異なる独自性に繋がるように思っています。

ここでいうお店における独自性に関しては今後の連載で書こうかなと思っています。

こうした事を土台に、お店は地域と密接な関係にありますが、何よりお店で働いている人達が自発性を持ち日々の細かい作業と気持ちを込めたお店作りが地域性とお店を飛び超えてお店の輪郭を濃くし地域に根付いていくのだとも思っています。

僕が日本で一番好きなカフェ[café le garcon]。オーナーご夫婦の人柄、内装、ドリンク、フード、音楽全てが個人的に好きです。地域に存在する素敵なお店です

僕は、自分の店が街の一角の素敵なお店であり続ける事が、その街の方々にほんの少しだけ貢献はできるのではないかと思っています。

その先に、僕らの時代の新しい老舗店になるといいなと思っています。

新丸子と目黒の街角にあるお店(ダイナー)で、僕らの時代の新しい老舗店になる想いを込めて今日もどこかの店舗に立っております。

ご来店頂けたら大変嬉しく思っております。

TAGS

WHAT TO READ NEXT

RiCE編集部からお便りをお送りしています。

  • 最新号・次号のお知らせ
  • 取材の様子
  • ウェブのおすすめ記事
  • イベント情報

などなど……RiCEの今をお伝えするお手紙のようなニュースレターを月一回配信中。ご登録は以下のページからアドレスとお名前をご入力ください。

ニュースレターの登録はコチラ
PARIYA CHEESE STAND Minimal Bean to Bar Chocolate
BALMUDA The Kitchen
会員限定の最新情報をいち早くお届け詳しく