カカオ見聞録

いざ、チョコレートの旅へ


Takatsugu YamashitaTakatsugu Yamashita  / Feb 9, 2018

皆さん、はじめまして山下と申します。
私は渋谷区富ヶ谷に本店を構えるMinimal – Bean to Bar Chocolate -(ミニマル)というブランドを運営しています。Minimalは、チョコレートの原料であるカカオ豆を直接農園から仕入れ、自社工房でカカオ豆(Bean)の焙煎からチョコレート(Bar)になるまでを一気通貫して製造しているBean to Barというスタイルの専門店です。
現在、東京都内の富ヶ谷・銀座・白金高輪・池袋に4店舗(工房併設は3店舗)を運営しています。

実は私は3年前の2014年までサラリーマンでした。2014年に脱サラしてチョコレートブランドを起業しました。会社員に不満があったわけでもなく、むしろ仕事は順調でとても楽しかったといえます。加えて当時の私は、チョコレートに関して素人、製菓業に関して素人、小売業に関して素人の三重苦という状態でした(笑)。普通に考えると無謀と思える挑戦でしたが、論理では説明できない衝動に突き動かされて私は会社を辞め、2014年12月にMinimalを創業しました。この連載を通して、私の人生を変えた衝動の正体を追い求め、私が魅了された「新しいチョコレートの世界」を皆さんと一緒に紐解いていきたいと思います。

初回は私の活動を通して今後皆さんにお届けしていくあらましを話そうと思います。カカオや、身近なチョコレートに関して意外に知らないこともあるかもしれませんのでぜひお楽しみ頂ければ嬉しいです。

▲ カカオは南国のフルーツだけに思いのほかカラフル。チョコレートはこのカカオポッドの中のカカオ豆からできる

冒頭でも触れましたが、チョコレートの原料はカカオ豆です。カカオ豆は北緯と南緯20度以内の赤道直下の国々に生育しています。実はカカオは南国に生育するフルーツなのです。そのフルーツのタネがカカオ豆で、そのカカオ豆からチョコレートができます。Minimalはカカオ豆の中でもTop10%と言われている高品質のカカオ豆のみを買付し、仕入しています。そのため私はカカオ豆の買付にアジア・中南米・アフリカの国々に年間3か月~4か月程度訪れます。実はその産地で今少しずつですが変化が起こっています。その変化の正体はカカオ経済が「量」経済から「質」経済に変わっているという事です。正確に言うと、これまでカカオ豆の「量」だけが重視されて取引されていたところに、「質」に目を向ける農家が少しずつ出始めたといった状態でしょうか。

▲ 買い付けに訪れた現地で出会ったカカオ農家。皆自分のカカオを嬉しそうにアピールする

この流れで何が起こっていくかというと、私見では10年~20年スパンで「スター農家」が生まれると思います。つまりカカオの「質」にこだわって素晴らしいカカオ豆を作る農家が出てくる。更には彼らがその豆を使って自らチョコレートを製造して売る。そうすると「あれ?このチョコレート美味しいぞ!」となって「スター農家」=「スターチョコレートメーカー」が誕生します。生産国は多くが経済的には途上国です。スター農家の誕生はこれまで貧しかったカカオ農家の生活向上に加えて、途上国ゆえにこれまでほとんど消費されていなかったチョコレートの地産地消が加速します。また消費国の皆さんからすると、これまでは安さで選ぶ廉価版のお菓子や、ブランド名で選ぶ高級チョコレートといった大きくは2択だったところに、第3の選択肢として農家やカカオ豆で選ぶといったことが当たり前になるかもしれません。「よし今日はホンジュラスのサロモン農園のチョコレートにしよう」といったまるでワインやコーヒーのようにチョコレートを選ぶ日がすぐ近くまで来ているかもしれません。実際にカカオ産地ではローカルのチョコレートメーカーがボコボコと立ち上がっています。この動きは今後確実に加速していきます。今まで消費地にしかなかったメーカーが産地にも増えてチョコレート戦国時代に突入するかもしれません。

▲ チョコレート消費国であるアメリカのチョコレート展示会の様子。

産地に行く一方で私は、チョコレート消費国であるヨーロッパ・アメリカにも品評会や催事出店などで年間数回訪れます。チョコレート消費の中心にあるヨーロッパ・アメリカでも近年チョコレートの消費に傾向は変わってきています。消費国の多くのチョコレートの作り手は、少しずつカカオ豆自体の品質に注目してきています。ただよくよく見てみるとこの品質に注目するといっても、ヨーロッパとアメリカでも少し流れが違うので面白いです。ヨーロッパでは、オーセンティックなショコラティエやパティシエといった人たちが中心です。当たり前ですが、チョコレートの修行を積んだプロフェッショナル達がより良い素材を求めてカカオの質にこだわりはじめています。「エクアドル産60%チョコレート」など近年多くの高級ブランドが産地とカカオ濃度表記を用いるようになりました。一方アメリカでは、「健康」「オーガニック」そして「クラフト」というキーワードでチョコレートに対する消費者の価値観が変わってきています。実はその中心にいる作り手たちはチョコレートの素人が多いのです。IT起業家や建築家など異分野の人間がどんどんクラフトチョコレートに参入しています。プロの多いヨーロッパに比べて、アメリカは異業種参入が多い。スタートアップ文化のアメリカらしいことが実はチョコレートでも少しずつ起こっています。興味深いですね。なぜアメリカは素人参入が多いのかもこの連載でいつか扱いたいと思います。

そして、最後に私たち日本。日本のチョコレート市場がここ10年間で市場規模が1000億に届くほど伸びていることをご存知でしょうか。実は和菓子を抜いて、菓子カテゴリーでも最大規模なのです。当然日本を主戦場にしている私たちMinimalもこの市場の変化の影響を大きく受けています。もっと言うと、この成長過程に生まれた突然変異が私たちかもしれません(笑)。そんな身近な日本という市場を通して新しいチョコレートの流れに触れていきます。

▲ 日本の菓子売上高。チョコレート市場は成長傾向。カテゴリー別で最大規模5000億円を突破

私は自ら足を使い、実際に現地に行って、今チョコレートの世界の先端でフツフツと起こっている何かを肌で体感しています。この連載を通して、カカオ産地、チョコレート消費国、そして日本のカカオとチョコレートにまつわるリアルな体験談を皆さんにお届けしたいと思います。ぜひカカオとチョコレートを通して世界で今起こっている変化を一緒に感じて頂ければ幸いです。そして、その変化は、大きな意味では食の世界全体に共通する大きな変化ではないかと思います。21世紀を生きる私たちが直面している変化を一緒に考えるきっかけになれば嬉しいです。ぜひご期待下さい。

Minimal – 富ヶ谷本店
住所: 東京都渋谷区富ヶ谷2-1-9
電話: 03-6322-9998
時間: 11:30〜19:00
定休: なし
https://mini-mal.tokyo

WHAT TO READ NEXT

BALMUDA The Kitchen
会員限定の最新情報をいち早くお届け詳しく