焼酎がちょっと気になってる人にこそ、行って欲しい店

昼も夜も美味しい、兜町にできた居酒屋[MARUYAMA]


RiCE.pressRiCE.press  / Jun 7, 2025

代々木上原の[MAISON CINQUANTECINQ]や[Lanterne]、器のギャラリー[AELU]などを手がけてきた丸山智博さんが、この春、日本橋・兜町に居酒屋[MARUYAMA]をオープンさせた。

しかも、店に並ぶのは、話題の焼酎や日本酒の数々。どうやら焼酎にも相当力を入れているようで、そのラインナップを覗くだけでも期待が高まる。ちょうど2月発売のRiCE No.39「焼酎のない人生なんて」で、焼酎の特集をまるっと一冊組んだばかり。

今、焼酎のムードがぐんぐん熱を帯びてきている中、そんな新店の噂を聞きつけたら、確かめずにはいられない。というわけで、日本橋へと向かった。

場所は、複合施設[K5]の1階。以前レストラン[caveman]が入っていたあの場所だ

昼はおむすび定食、夜はアラカルトの居酒屋

焼酎に期待が集まる一方で、昼は定食、週末はランチコース、夜はアラカルト。[MARUYAMA]は、時間帯によって楽しみ方が変わる。

平日限定のランチは、おむすびを中心にした定食スタイル。岩手県産の銀河のしずくを使用し、海苔は海苔ソムリエ・島田由美子さんが季節ごとにセレクト。具材は常時6種類ほど揃い、そこから好みの2つを選ぶ仕組みだ。王道の塩むすびから、「酒粕明太子発酵バター」のような遊びの効いた組み合わせまで。そんなおむすび一つひとつにも、丁寧な仕込みと、丸山さんならではの味の工夫が詰まっている。


「おむすび定食」は1500円〜。汁物、厚焼き玉子、漬物、小鉢が付いてくる

「例えば“鶏そぼろ”は、一度炭の香りをつけてから、おむすびの中に卵黄の醤油漬けを加えることで旨味を立たせています」と丸山さん。

また、中東のスパイスミックスを取り入れた“焼き鯖とザアタル”もユニークなメニューの一つ。白ごま、オレガノ、タイム、スマック(酸味のあるスパイス)を混ぜたもので、「日本の“ゆかり”に少し似ているんです」と丸山さんは言う。

「おむすびは定番のようでいて、組み合わせ方で表情が変わるんです」と丸山さん

平日ランチの定食のほかに、土日祝にはランチコースも。季節の食材を使ったショートコース(4,000円)とフルコース(6,000円)があり、シーンに応じて使い分けられるのがうれしい。

夜になると、雰囲気は変わって居酒屋へ。40種以上のアラカルトが並ぶメニューには、定番の酒肴に、センスの効いたメニューが交ざる。

たとえばこちらの冷菜「翠のたぬき冷奴」。人形町の[高柳豆腐店]の絹豆腐に、アボカド、新玉ねぎ、パセリピューレの天かす、牡蠣醤油、パセリオイルが加わり、見た目も味わいも洗練された一皿。

焼売は、丸山さんの地元でもある安曇野の放牧豚にホタテ、タケノコを合わせ、発酵バターと黒七味で仕上げ、じんわりと旨味が広がる味わい。そのほか焼き物、揚げ物、蒸しものから甘味まで、酒の進む品々が並ぶ。

焼酎の楽しみ方も、アップデート

こうなると、やっぱり欲しくなるのは、いいお酒だ。“焼酎が主役”というだけあって、提供の仕方にもぬかりなし! 驚かされたのは、レモンサワーやお茶割りといった定番の一杯にも、焼酎の種類が使い分けられていること。


レモンサワーには「芋」、梅サワーには「米」。焼酎ごとに合う割り方がされていて、ついあれこれ飲み比べたくなる

さらに、焼酎が持つ味をじっくり楽しみたい人には、焼酎をあらかじめ水で割り、数日かけてなじませた「前割り」というスタイルも用意されている。

「焼酎って、角が取れて丸くなるまでにちょっと時間がかかるんです。前割りにしておくと、飲み口が柔らかくなる。それを少し温めて、お燗にすると香りが立って、より華やかな表情になるんです」

香りを逃さないよう、グラスはワイングラスで提供するのもこだわりだ。

また、オリジナルドリンクも見逃せない。「特製ジンジャー」と名付けられた一杯は、生姜・山椒・唐辛子という3つの“辛み”を効かせたドリンク。ノンアルでも、芋焼酎と合わせてカクテルにしても楽しめる。

「焼酎をあまり飲んだことがない方にも、入り口を用意したかったんです。ちょっと面白くて、でもちゃんと美味しい。そんな一杯を、最初に」

ほかにも、雪下人参と柑橘、かぶせ煎茶を合わせたドリンクなど、焼酎と組み合わせる発想は幅広い。

そしていま、丸山さんが強く感じているのは、居酒屋という場が持つ“自由さ”と“文化性”についてだ。

いろんなスタイルが共存できるのが居酒屋

「居酒屋って、安くて美味しいものも、素材や料理にこだわったものも、いろんなスタイルが共存できる場所なんです。そこに焼酎や日本酒のような、日本文化の象徴ともいえるものが加わることで、もっと広がっていく可能性があると感じています」

これからは酒蔵の人がカウンターに立ち、直接お客に注ぐイベントも準備中だという。

「この場所で生まれた表現や文化が、少しずつでも、広い世界に波紋のように広がってくれたらうれしいですね」

日本の伝統に、今の感覚を重ねながらもっと自由に、もっと開かれたかたちで育てていく。焼酎も、居酒屋も。[MARUYAMA]では、さっそく新しい風が吹いていた。

✅この記事のPOINT🍽️🍶
・MARUYAMAってどんなお店?
代々木上原の人気店を手がけた丸山智博氏による、東京・日本橋兜町の新店。複合施設[K5]1階に位置し、焼酎にフォーカスした“進化系居酒屋”として注目を集める。
・メニューの特徴は?
昼は岩手県産米「銀河のしずく」を使ったおむすび定食(1,500円〜)や、土日祝限定の季節のランチコース(4,000〜6,000円)を提供。夜は焼売や冷奴など、ひと工夫ある酒肴が40種類以上揃うアラカルト中心の居酒屋スタイル。
・焼酎とドリンクの魅力は?
「芋焼酎のレモンサワー」「米焼酎の梅サワー」など、銘柄に応じた最適な割り方を採用。希少銘柄の“前割り”や“お燗”も用意され、ワイングラスで提供。ノンアルや焼酎カクテルも豊富で、焼酎初心者にも優しい構成。
・ランチとディナー、どう使い分ける?
平日は一人でも入りやすいおむすびランチ、週末はゆっくり楽しめるコース。夜はしっかり飲みたい人向けに、焼酎と小皿料理で過ごす居酒屋時間を提供。ビジネス街・日本橋での昼夜の使い分けにもぴったり。
・コンセプトと今後の展開は?
“焼酎文化のアップデート”を掲げ、居酒屋という日本独自の食文化を現代的に再編集。酒蔵とのコラボイベントやポップアップも今後予定。伝統と創造が交差する、日本橋・兜町らしい新たな食の拠点。
MARUYAMA
東京都中央区日本橋兜町3-5 K5 1F
Tel. 03-6661-0923
Lunch 11:30-14:30(コースL.O. 13:00 / 定食L.O. 13:30)
Dinner 17:00-22:00(フードL.O. 21:00 / ドリンクL.O. 21:30)
IG @maruyama_tokyo
Photo by Abe Takuro(写真  阿部 拓朗)
Text by Sakurako Nozaki
(文 野﨑櫻子)

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