
焼酎がちょっと気になってる人にこそ、行って欲しい店
昼も夜も美味しい、兜町にできた居酒屋[MARUYAMA]
代々木上原の[MAISON CINQUANTECINQ]や[Lanterne]、器のギャラリー[AELU]などを手がけてきた丸山智博さんが、この春、日本橋・兜町に居酒屋[MARUYAMA]をオープンさせた。
しかも、店に並ぶのは、話題の焼酎や日本酒の数々。どうやら焼酎にも相当力を入れているようで、そのラインナップを覗くだけでも期待が高まる。ちょうど2月発売のRiCE No.39「焼酎のない人生なんて」で、焼酎の特集をまるっと一冊組んだばかり。
今、焼酎のムードがぐんぐん熱を帯びてきている中、そんな新店の噂を聞きつけたら、確かめずにはいられない。というわけで、日本橋へと向かった。
場所は、複合施設[K5]の1階。以前レストラン[caveman]が入っていたあの場所だ
昼はおむすび定食、夜はアラカルトの居酒屋
焼酎に期待が集まる一方で、昼は定食、週末はランチコース、夜はアラカルト。[MARUYAMA]は、時間帯によって楽しみ方が変わる。
平日限定のランチは、おむすびを中心にした定食スタイル。岩手県産の銀河のしずくを使用し、海苔は海苔ソムリエ・島田由美子さんが季節ごとにセレクト。具材は常時6種類ほど揃い、そこから好みの2つを選ぶ仕組みだ。王道の塩むすびから、「酒粕明太子発酵バター」のような遊びの効いた組み合わせまで。そんなおむすび一つひとつにも、丁寧な仕込みと、丸山さんならではの味の工夫が詰まっている。
「おむすび定食」は1500円〜。汁物、厚焼き玉子、漬物、小鉢が付いてくる
「例えば“鶏そぼろ”は、一度炭の香りをつけてから、
また、中東のスパイスミックスを取り入れた“焼き鯖とザアタル”もユニークなメニューの一つ。白ごま、オレガノ、タイム、スマック(酸味のあるスパイス)を混ぜたもので、「日本の“ゆかり”に少し似ているんです」と丸山さんは言う。
「おむすびは定番のようでいて、組み合わせ方で表情が変わるんです」と丸山さん
平日ランチの定食のほかに、土日祝にはランチコースも。季節の食材を使ったショートコース(4,000円)とフルコース(6,000円)があり、シーンに応じて使い分けられるのがうれしい。
夜になると、雰囲気は変わって居酒屋へ。40種以上のアラカルトが並ぶメニューには、定番の酒肴に、センスの効いたメニューが交ざる。
たとえばこちらの冷菜「翠のたぬき冷奴」。人形町の[高柳豆腐店]の絹豆腐に、アボカド、新玉ねぎ、パセリピューレの天かす、牡蠣醤油、パセリオイルが加わり、見た目も味わいも洗練された一皿。
焼売は、丸山さんの地元でもある安曇野の放牧豚にホタテ、タケノコを合わせ、発酵バターと黒七味で仕上げ、じんわりと旨味が広がる味わい。そのほか焼き物、揚げ物、蒸しものから甘味まで、酒の進む品々が並ぶ。
焼酎の楽しみ方も、アップデート
こうなると、やっぱり欲しくなるのは、いいお酒だ。“焼酎が主役”というだけあって、提供の仕方にもぬかりなし! 驚かされたのは、レモンサワーやお茶割りといった定番の一杯にも、焼酎の種類が使い分けられていること。
レモンサワーには「芋」、梅サワーには「米」。焼酎ごとに合う割り方がされていて、ついあれこれ飲み比べたくなる
さらに、焼酎が持つ味をじっくり楽しみたい人には、焼酎をあらかじめ水で割り、数日かけてなじませた「前割り」というスタイルも用意されている。
「焼酎って、角が取れて丸くなるまでにちょっと時間がかかるんです。前割りにしておくと、飲み口が柔らかくなる。それを少し温めて、お燗にすると香りが立って、より華やかな表情になるんです」
香りを逃さないよう、グラスはワイングラスで提供するのもこだわりだ。
また、オリジナルドリンクも見逃せない。「特製ジンジャー」と名付けられた一杯は、生姜・山椒・唐辛子という3つの“辛み”を効かせたドリンク。ノンアルでも、芋焼酎と合わせてカクテルにしても楽しめる。
「焼酎をあまり飲んだことがない方にも、入り口を用意したかったんです。ちょっと面白くて、でもちゃんと美味しい。そんな一杯を、最初に」
ほかにも、雪下人参と柑橘、かぶせ煎茶を合わせたドリンクなど、焼酎と組み合わせる発想は幅広い。
そしていま、丸山さんが強く感じているのは、居酒屋という場が持つ“自由さ”と“文化性”についてだ。
いろんなスタイルが共存できるのが居酒屋
「居酒屋って、安くて美味しいものも、素材や料理にこだわったものも、いろんなスタイルが共存できる場所なんです。そこに焼酎や日本酒のような、日本文化の象徴ともいえるものが加わることで、もっと広がっていく可能性があると感じています」
これからは酒蔵の人がカウンターに立ち、直接お客に注ぐイベントも準備中だという。
「この場所で生まれた表現や文化が、少しずつでも、広い世界に波紋のように広がってくれたらうれしいですね」
日本の伝統に、今の感覚を重ねながらもっと自由に、もっと開かれたかたちで育てていく。焼酎も、居酒屋も。[MARUYAMA]では、さっそく新しい風が吹いていた。
✅この記事のPOINT🍽️🍶
・MARUYAMAってどんなお店?
代々木上原の人気店を手がけた丸山智博氏による、東京・日本橋兜町の新店。複合施設[K5]1階に位置し、焼酎にフォーカスした“進化系居酒屋”として注目を集める。
・メニューの特徴は?
昼は岩手県産米「銀河のしずく」を使ったおむすび定食(1,500円〜)や、土日祝限定の季節のランチコース(4,000〜6,000円)を提供。夜は焼売や冷奴など、ひと工夫ある酒肴が40種類以上揃うアラカルト中心の居酒屋スタイル。
・焼酎とドリンクの魅力は?
「芋焼酎のレモンサワー」「米焼酎の梅サワー」など、銘柄に応じた最適な割り方を採用。希少銘柄の“前割り”や“お燗”も用意され、ワイングラスで提供。ノンアルや焼酎カクテルも豊富で、焼酎初心者にも優しい構成。
・ランチとディナー、どう使い分ける?
平日は一人でも入りやすいおむすびランチ、週末はゆっくり楽しめるコース。夜はしっかり飲みたい人向けに、焼酎と小皿料理で過ごす居酒屋時間を提供。ビジネス街・日本橋での昼夜の使い分けにもぴったり。
・コンセプトと今後の展開は?
“焼酎文化のアップデート”を掲げ、居酒屋という日本独自の食文化を現代的に再編集。酒蔵とのコラボイベントやポップアップも今後予定。伝統と創造が交差する、日本橋・兜町らしい新たな食の拠点。
MARUYAMA
東京都中央区日本橋兜町3-5 K5 1F
Tel. 03-6661-0923
Lunch 11:30-14:30(コースL.O. 13:00 / 定食L.O. 13:30)
Dinner 17:00-22:00(フードL.O. 21:00 / ドリンクL.O. 21:30)
IG @maruyama_tokyo