あふれんばかりの人と、冷めやらぬ熱気。iichiko 彩-IRODORI- カクテルコンペティション ジャパンファイナルが2025年11月8日（土）に東急歌舞伎町タワー[HOTEL GROOVE SHINJUKU]にて開催された。

麹が生み出す無限の可能性を引き出し、日本発カクテルを生み出すことを目標に、カクテルテーマは、「和×彩」。
ジャパンファイナルのジャッジは、[SG GROUP] ファウンダー・後閑信吾さん、 ニューヨークの [BAR GOTO] より後藤健太さん、パレスホテル東京 [ロイヤルバー] の大竹学さん、[Bar BenFiddich] の鹿山博康さん。
日本のバーシーンを牽引し、世界にも名を馳せる4名が顔を揃えた。

会場が見守る中、初代日本チャンピオンに選ばれたのは、[ザ・カハラ・ホテル＆リゾート横浜] の髙橋裕也さん。

披露したカクテル『Oedo Fashioned』は、Old Fashionedと江戸時代に飲まれていたとされる日本最古のカクテル「柳陰」を掛け合わせたツイストカクテル。
みりんや醤油といった食卓に日々並ぶ調味料を組み合わせることで、日常に根付きながらも世界に目を向けた一杯となった。

カクテルそのものの完成度に加え、プレゼンテーション力やネーミングが高く評価され、バー＆カクテル愛好家が選ぶ特別賞の「スピリット・オブ・彩天賞」とのダブル受賞となった。

掛け声や声援なども飛び交う熱気あふれる会場。その中でも特にアプローチの多様性を感じた3人を紹介したい。

■光田恭祐さん [Les CLOS]
熊本のイタリアンレストランでバーテンダーをしている光田さんは、熊本の郷土料理「辛子蓮根」から着想を得た一杯を披露。蓮根をインフューズしたiichiko彩天に河内晩柑水や蓮根水などをあわせた、出汁割のような味わいにまとめた。
チャームには出汁をとった後の蓮根を辛子オイルに絡めたチップスを添え、アクセントに。
レストランで働くからこその「食事に寄り添うカクテル」という視点が光った。

■金城流弥さん [One by one coffee]
ファイナリスト唯一のバリスタ。バリスタ視点でのアプローチと、周囲を巻き込むプレゼンテーションが際立っていた。コーヒー豆や説明書を配るなど、「聞く・見る」だけでなく体験ベースのプレゼンを構築。
iichiko彩天に米麹ミルクを用いた『和ラテ　HAKKO LATTE』は、カフェラテのやさしさと麹の奥行きが重なり合う一杯に。

■釜田椋安さん [パークハイアット京都]
バーテンダー歴わずか1年でファイナル進出。
iichiko彩天に自家製カカオリキュール、大分県産どんこ椎茸出汁、自家製ジンジャーシロップを合わせ、仕上げに塩麹フォームをフロート。
ガーニッシュには出汁殻椎茸チップスを使い、どんこ椎茸のうまみと塩麹の塩味が甘味を引き立てる巧みなバランスが印象的だった。

大会終了後、審査結果が出るまでの間にはテイスティングセッションも実施された。ファイナリストが目の前で、先ほどジャッジされたばかりのカクテルを作ってくれるという、何とも贅沢な時間だ。
カクテルが形になるまでのプロセスや素材の選び方、レシピに込めた思いを直接聞くことで、遠い存在に見えていたプロフェッショナルたちが、急に自分と同じ世界の住人だと実感する。

ファイナリストたちと三和酒類社長・西和紀さん

サステイナビリティの視点から、出汁殻まで使える出汁を使う人や、麹の蒸留酒であるiichiko彩天にちなみ、麹をキーワードとするファイナリストも多く見られた。

発酵や乾物といった日本の食文化とカクテルが交わる未来が来るとは思ってもみなかったが、出汁割や甘酒の存在を思えば、それはむしろ自然な流れなのかもしれない。

日常の中の素材にツイストを加え、新たな可能性を見せてくれたファイナリストたち。
その創造性によって、カクテルはもっと自由であっていいと改めて思い知らされた。
そして、日本の食文化から着想を得た一杯が、これからどんな世界のスタンダードを生み出すのか。そんな未来に期待が膨らむ。

Text by Terra Owen