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オリンピックと食に通じる「世界の調和と不和」


Akimasa SugikuboAkimasa Sugikubo  / Mar 3, 2018

「僕はオリンピックが嫌いだ。」

ついこの間まで平昌オリンピックが盛り上がっていたのに、いきなり何を言い出すのだろうと思う人もいるかもしれないが、正確にいうと昔は嫌いだった、が正解だ。
今も昔もオリンピックが始まる頃には苦労話のオンパレードになり、お金がない、メダルを取っても何ももらえないという話で盛り上がっていて、そのせいか、本人がその競技が好きだからとか、その人の思いにみんながタダ乗りしているような感じがして嫌悪感を持っていた。
何年か前の冬季オリンピックでは、服装や態度が悪いと選手を叩き、自分たちの常識を押し付ける。当時のスノボのようなまだ新しい競技は真面目を絵に描いたような人間がするわけないし、昔からだいたい新しいことはやんちゃな人間や変わった人間が始めることが多いのに世の中に正義は一つしかないと思っている人間が多いようだ。
今回のスノボではそういうことはなかったが、隣の国ではパシュートでの選手の振る舞いが問題になり思いっきり叩かれていたから、パシュートでは本当はこうあるべきだということがこれから浸透していくのだろう。
そういうことを繰り返し、普通の子たちが増えてきて裾野が広がり、その競技がこなれていくのだろうと考えている。

「僕は食が大好きだ。」

高校をすぐにクビになり15歳で石川県を離れ、大阪のうどん屋で住み込みをしながらアルバイトを始めた。それ以来お菓子屋やパン屋、レストランやホテル、大阪、神戸、淡路島、東京、横浜、パリなどいろんなところで働いてきたがずっと大好きだということは変わらない。
特に17歳で初めてお菓子屋さんに就職した日のことを今でも忘れない。
見るもの、教わるもの、食べたもの、全てが新鮮で楽しくて、「こんなに面白いんだったら早く言ってよー。」と心の中で叫んだことを今でも思い出す。
これだったら一生の仕事にできると思ったあの気持ちは、今でも間違いじゃなかったと胸を張って誇れる出来事の一つである。

そんな感じで始めた飲食の仕事だけど、当時はまだ作り手の方に女性はほとんどいなかった。いても「アナタ元ヤンですよね」みたいな気合いの入っていそうな人が多かった。でも飲食の世界も次第に裾野は広がり、それから何年か経つと女の子が増えだして、挙げ句の果てにはおとなしそうな「アナタこんな業界に入って大丈夫ですか」と思ってしまうような子たちが入ってきた。心配になった僕は、先輩に「あんな普通の女の子が入ってきましたけど大丈夫ですか?」と相談しに行ったこともある。飲食の世界もひと昔前はまだそんな時代だったのだ。

「多様性のある世界が好き。」

右であろうが、左であろうが、思いが強くなればなるほど、攻撃的になる。
自分自身のアイデンティティを守るため、相手もそれを大切にしていることも忘れて、人は戦う。
それぞれが個人の思いを保ちつつ、相手を尊重することは本能と争うことで、いまのところ人間にしか与えられていないチャレンジだ。AIならその垣根も簡単に飛び越えていきそうだが、困難に立ち向かうことに価値を見出してみたい僕がそこにいる。
食の世界にも多様性は生まれ、細分化も進む。
いわゆる修行をしている一部の食の世界は深く、狭い世界に入り込む。
一方で、そことは違う新しい人種は裾野を広げ、壁を取り払い新しい価値を生み出し、多様性の広がりをもたらす。
長い歴史の中でトライアンドエラーを繰り返して出来上がった世界の住人は、新しい世界で行われるトライアンドエラーを非難する。
いつも歴史は繰り返し、そしていつのまにか調和する。

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