
恵比寿にオープンした秘密基地[Gaumarjos TOKYO]
ジョージアワインの聖地が誕生。
雄大なロマンを感じさせるジョージアワイン
ここ数年、私はジョージアワインに飢えていた。
赤、白、ロゼに続く「オレンジワイン(アンバーワイン)」が日本に浸透しつつあった2017年、私はジョージアのナチュラルワインに出会った。飲んだそばから、独自の路線をいく味わいにはまった。果実味だけではない、土や草、スパイス、紅茶のようなタンニン感、発酵のニュアンス。ときには出汁のような旨味まで感じる味わいに衝撃を受けた。
造り方もユニークだ。
円錐形の素焼き土器の甕「クヴェヴリ」を地中に埋め、ブドウを果皮や種、果梗とともに発酵・熟成させる。これは、世界最古と謳われる約8000年前から受け継がれているジョージアの伝統的製法だ。クヴェヴリを用いた伝統的なワイン造りは、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されている。
私が流行の先端として知ったオレンジワインのずっと先、原点回帰と再発見の源にジョージアワインはあったのだ。

ジョージアのナチュラルワインたち。写真はすべて、「ノンナアンドシディ」によるインポート。ナチュラルワインの中でもクヴェヴリで造られるワインはさらに生産量が少なく、国の全生産量の約5%ともいわれる。
ルカツィテリ、ムツヴァネ、キシ、ツォリコウリ、サペラヴィ。どれも聞きなれないブドウ品種なのは当然で、ジョージアには500を超える土着のブドウ品種がある。ヨーロッパとアジアの境界、コーカサス山脈に抱かれた大地で育ったブドウで、土中の甕で醸す。なんて雄大なロマンを感じさせるワインなのだろう。
ブドウの果皮由来の複雑味や力強さ、タンニン感、出汁っぽさを備えたジョージアのオレンジワインは、料理と合わせると世界がぐっと広がる。合わせられる料理の幅が広く、スパイスを多用したエスニック料理や和食にも相乗する。品種を覚え、飲みこんでいくほどに、私はジョージアワインに取りつかれていった。
ジョージアのナチュラルワインにはまるも、飲める店が少ない
ただ悩みは、常時ジョージアワインが飲める店が少ないことだった。
ジョージアワインであれば何でもいいわけではなく、飲みたいのはジョージアのナチュラルワインだ。
というのも、ジョージアは20世紀のソ連統治下では、効率重視の大量生産システムが導入され、欧米風のステンレスタンク醸造への転換や、ブドウ固有品種の削減が進んだ。現在、生産量の約90%が大量生産システムによるもので、クヴェヴリにみるような伝統製法は、家庭レベルの自家醸造でひっそりと守られるのみとなっていった。
頼みの綱は、日本でいち早く、ジョージアのナチュラルワインの輸入を手掛けていたインポーター「ノンナアンドシディ」だ。外で飲めないなら宅に常備するしかない。
「ノンナアンドシディ」で買っては自宅で愉しみ、しまいには毎年の入荷時期になると、1年分をまとめ買いするようになっていた。

ジョージア東部のカヘティ州シグナギ地区チバニ村にある「Pheasant’s Tears(フェザンツ ティアーズ)の醸造所。クヴェヴリワインを世界に広めた、ジョン・ワーデマンさんのワイナリーで、土中に埋めたクヴェヴリでワインを醸す。(写真提供/高橋朋也)

「Pheasant’s Tears(フェザンツ ティアーズ)」のブドウ畑とクヴェヴリ。非常に肥沃な大地で、農薬を使わずに育てるブドウのポテンシャルの高さが、パワフルな味わいにつながるともいわれている。(写真提供/高橋朋也)
ジョージアワインの基地「Gaumarjos TOKYO」誕生!
そんな渇望のオアシスとなる店「Gaumarjos TOKYO(ガウマルジョス トーキョー)」が、2026年10月1日、東京・恵比寿に誕生する。歓喜。
「Gaumarjos(ガウマルジョス)」はジョージア語で「乾杯!」を意味し、ジョージアのナチュラルワインを中心に扱う。

東京・恵比寿「Gaumarjos TOKYO(ガウマルジョス トーキョー)」。有機・無農薬原料で焼き上げるグルテンフリーベーカリー「ORGANIC JUNKIE(オーガニックジャンキー)」の夜の部門として、17時から営業する。

店内は、1卓のダイニングテーブルを囲んで、相席でワインや料理を愉しむスタイル。ボトルを買って帰ることもできる。
店主の高橋朋也さんは、5年間ジョージアに住み、現地のナチュラルワインの第一人者・ジョン・ワーデマンさんのもとで料理とワインの学びを深めてきた。その橋渡しをしたのは、ジョンさんとも交流の深い「ノンナアンドシディ」岡崎玲子さんだ。
2018年からは度々ジョージアへ渡航し、「本場のワインと本格的なジョージア料理をもっと知りたい」という思いのもと、移住を決意。ジョンさんのワイナリー「フェザンツ・ティアーズ」運営のレストランや、首都トビリシのワインバー「ポリフォニア」で料理の経験を積んだ。「ポリフォニア」は、ナチュラルワインとブラッシュアップした郷土料理で知られ、ワイン造りの仲間たちも集う店である。

「Gaumarjos TOKYO」店主の高橋朋也さん。ソムリエ資格を持ち、かつてタイ料理に合わせるワインを探していた際にジョージアワインと出合い、大きな衝撃を受けた。帰国後、この基地からジョージアワインと料理の魅力を伝えるべく邁進している。

自身のワイナリーへ向かって運転するジョン・ワーデマンさんと、高橋朋也さん。ジョージア現地では日常的に一緒に仕事をしたり、食事や宴会をともにして、交流を深めていった。(写真提供/高橋朋也)
“わんこワイン”で少しずつ多種類を味わう
「Gaumarjos TOKYO」では、わんこ蕎麦ならぬ“わんこワイン”が愉しめる。
通常のグラスワイン1杯分の半量で、いろいろなワインを試すことができるのだ。抜栓しているボトルが多く、同じブドウ品種だけで12種類もの銘柄を試せる日もある。
マニアックに攻めるだけでなく、試しに少しずつ飲んでみたい、品種や造り手違いで飲んでみたい、なんて欲望も満たしてくれる。
朋也さんはジョージアワインの魅力を「力強いエネルギーに満ちていて、グラスの中に太陽を感じるワイン」と表現する。
「渡って間もない頃、ジョンにワインの味わいを聞かれて、『さくらんぼの香り』『ベリーのニュアンス』なんてコメントしたら、『何をつまらないことを言ってるんだ!夕焼けの思い出とか雨の日の匂いとか、もっと情景や感情と重ね合わせろ!』と(笑)。スペックや分析にとらわれず、心や感情でワインを愉しむ姿勢を教わりました。ほかにも、ジョンからは、周囲を深く気遣うことや、ひとりひとりを讃えるジョージアの乾杯文化『タマダ』の精神といった人との温かい接し方を学びました」。

グラスワイン1100円~。通常の半量にして倍の種類を味わえる“わんこワイン”スタイルでも愉しむことができる。ボトルワイン派7200円~。
料理だってジョージア色全開だ。
現地で学んできた朋也さんだからこそつくれる料理が揃う。現地では、野草やハーブを多用し、スパイスにはコリアンダーシードやブルーフェヌグリーク、マリーゴールドの花を粉末にしたものなどをよく使う。油は、おもにカヘティ地方で造られる、軽やかなひまわり油が中心である。
日本では入手困難な素材は、近しい素材で代用しながらつくる。それがジョージア料理から外れないラインを見極められるのは、現地での経験があってこそだ。
「日本の山菜や野草なども取り入れていきたいですね。扱っているワインがエネルギッシュな分、繊細な食材と合わせるとワインが浮いてしまうことがあります。この店では、質の高いオーガニック・自然栽培の素材と合わせることができるので、料理とワインが同等に高め合い、真価を発揮できます」

豆とツルムラサキ、ビーツを煮込んだ温かい料理「プハ ロビオ」1800円。素朴でやさしい味わい。トップにはマリーゴールドの花が飾ってある。

ジョージアの基本のサラダ、「キュウリとトマトのサラダ」1800円。この日は季節のフルーツにいちじくを添えた。ひまわり油とパクチーを合わせたドレッシングで。

定番料理のひとつ、「チーズのパン」を意味する「ハチャプリ」。提供しているのは、イメレティ地方の「イメルリ・ハチャプリ」1800円。同店では、米粉を中心にキビ粉やヒヨコ豆の粉などを使ってグルテンフリーの生地をつくっている。
「ガウマルジョス(乾杯)!」でジョージアが身近になる
「僕がここでワインバーを営むことは、ジョンをはじめ、ジョージアでお世話になった造り手たちへの恩返しのようなものです。“スプラ”のようにひとつのテーブルを囲み、彼らのワインを通して、人と人がつながっていったらと願っています」
“スプラ”とは、まさにひとつのテーブルを囲んで、大量のワインと料理とともに繰り広げられるジョージアの伝統的な宴会のことで、場を仕切る進行役のもとで行われる。
ワインと料理が一緒になって、まさに自分の血肉になった時、ジョージアはもっと近くなる。ワインの選択肢の大きなジャンルとして定着するかもしれないし、ごく日常の食卓に溶け込む存在にもなりうる。
この基地「Gaumarjos TOKYO」に、ジョージアから生産者が遊びに来ることも夢ではない。テーブルいっぱいに料理を並べ、何種類ものワインを味わい、「ガウマルジョス!」を幾度となく繰り返す。
私の憧れのジョージアワインへの飢えは、ようやく満たされる。

Gaumarjos TOKYO
東京都渋谷区東3-23-3 猪瀬ビル1F
17:00~深夜
定休 月+日か火 (月7回休み)
https://maps.app.goo.gl/86N4wYreFHAW3rrs9Photo by yOU(写真 yOU)
Text by Yumiko Numa(文 沼由美子)
RiCE.press
RiCE.press 








Promotion 












