USEUM SAGA 第7弾 開催

佐賀の食材と器に向き合う、二人の料理人の饗宴


PromotionPromotion  / Mar 28, 2026

器と料理が交差する場所へ

佐賀県はこれまで、県内料理人が地元の食材と器への理解を深め、その技術や感性を表現・発信する場として、プレミアムレストランイベント「USEUM SAGA(ユージアムサガ)」を開催してきた。美術館に作品を飾るように、料理と器をともに味わう──そんな体験を通して、佐賀の食文化の奥行きを伝える試みである。

7弾となる今回は、佐賀県有田町にある[九州陶磁文化館 CAFE USEUM ARITA]を舞台に開催。器の産地・有田ならではの空気の中で、料理と器が響き合う2日間のコラボレーションが実現した。

7回目を迎えた「USEUM SAGA」は、37日・8日の2日間、全3部・各回8組限定で開催。会場には青・黄・赤・白・黒といった呉須の見本皿が装飾されるなど、空間全体で有田の世界観を演出していた。

今回の主役となったのは、“We believe in Cooking” の信念のもと、食べる人に喜びを届けることを大切にしている料理人、髙岡盛志郎氏(薪の宿から/佐賀・有田)と、“食べることで健康になる料理”をコンセプトに独自の表現を追求する引地翔悟氏(NIRVANA New York/東京・赤坂)。異なるフィールドで活躍する二人だが、共通しているのは、素材と向き合い、その本質を引き出す姿勢だ。

髙岡氏は、地元生産者との関係を大切にしながら、野菜の持つ旨みを最大限に引き出す料理で知られる存在。一方の引地氏は、これまで何度も佐賀を訪れ、この土地の食材や器の魅力に触れてきた料理人だ。

冒頭の挨拶で、今回のコンセプトと料理への思いを語る引地シェフ(写真左)と髙岡シェフ(写真右)。本格的に動き出したのは年明けから。わずか2ヶ月の急ピッチでこの日のメニューを作り上げた。

イベントの冒頭、髙岡シェフはこう語った。「有田に移住して9年になります。これまで農家にフォーカスして料理をしてきましたが、有田に来て強く感じたのはの存在です」

個人の作家や農家と一対一で関係を築いてきた経験に加え、柿右衛門窯や今右衛門窯、井上萬二窯といった歴史ある窯元が身近にある環境。

「身近でありながら、とても偉大な存在が混在している。それが有田の魅力」

そう語る言葉には、この土地で積み重ねてきた時間の実感がにじんでいた。

続いて引地シェフは「去年初めて佐賀を訪れてから、この土地の文化の密度や食材、器にすっかり魅了されています」
今後、有田での活動も視野に入れているという彼は、「今日は、自分が感じている佐賀と、これからやっていきたいことを料理で表現したい」と語った。

土地に根ざす料理人と、外から惹かれてきた料理人。異なる視点が交差することで、この日のコラボレーションはより立体的な意味を帯びていった。

“香り”に“色”を与えるという試み

今回のコースのテーマは香りと色。その背景にあるのが、二人が共有したコンセプトだ。東京と佐賀──異なる場所で料理と向き合う二人が共通点を探る中でたどり着いたのが、引地氏の研究領域でもある「香り」というテーマだった。しかし、香りはあまりに抽象的だった。そこで二人は、「香りに“色”を与える」という発想へとたどり着く。さらにそれを五感と五色へと展開し、料理のイメージを具体化していった。それぞれの料理には、最初に浮かんだイメージの言葉がタイトルとして与えられている。

各テーブルに配されたメニュー表には、今回携わった料理人・生産者が考える五色のイメージをインタビュー形式で掲載。誰の言葉かを想像しながら、料理とともに楽しむ仕掛けが用意されていた。

さらに今回のコースは、すべてヴィーガンメニューで構成された。有田という土地が海外からの来訪者も多い場所であることを踏まえ、食習慣や文化の違いを越えて誰もが楽しめる料理を目指したという。同時に、これからの食のあり方を見据え、世界基準のガストロノミーへと接続していく意志も込められている。

今回、髙岡、引地の両シェフに加えて、長崎県雲仙で活動する[sagoggio(サゴッジョ)]の新藤桂一郎さんがドリンクを担当。特にノンアルコールドリンクは、“半径20キロの素材をテーマに、佐賀の食材や自身で採取した植物からを構成。ペアリングではなく、コースとして楽しむ新たな体験を提案した。
佐賀のブランドいちご「いちごさん」を、雲仙の湧き水で水出しし、野生酵母で発酵させた一杯。瓶内二次発酵によるやわらかな炭酸に、蒸留した佐賀海苔の香りを重ね、土地の記憶を閉じ込めた。

器が語り、料理が応える

USEUM SAGAのもう一つの主役が「器」だ。今回も、人間国宝の作品をはじめ、国内外で活躍する佐賀県内の作家による器が用意された。

器は単なる“料理を盛るもの”ではない。色、質感、重み、余白──そのすべてが料理の印象を変え、食べる体験そのものを引き上げる存在だ。

皿の上に置かれた料理は、まるで展示作品のように静かに佇む。しかし一口運べば、その印象は一変し、味覚や香りが立ち上がる。

会場には、佐賀県内を中心に料理人、生産者、器作家、そして食や器に関心の高い参加者が集う。シェフたちも調理の合間に客席を回り、料理の説明や会話を交わしながら、コミュニケーションを楽しんでいた。

提供されたのは、二人の創造性が交差するコース料理。佐賀の野菜を中心に構成された一皿一皿は、シンプルでありながら、薪火や温度、香りのコントロールによって、素材の可能性を何層にも引き出していく。そこに器が重なることで、視覚・触覚・嗅覚・味覚──五感すべてを使う体験へと昇華される。

 2日間限定のこの空間は、レストランでありながら、どこか展覧会のような静けさと緊張とともに大きな期待感をまとっていた。

1品目 春待ち土 / 柿右衛門窯、青春のとびら / 今右衛門窯、潮騒の丘から / 柿右衛門窯 by 引地シェフ

(写真下)左から、春待ち土(根菜 / 小豆)、器は柿右衛門窯。コースの幕開けに、内臓をやさしく温めるスープとして構成され、これから続く料理への期待を静かに引き上げる。中央は潮騒の丘から(サボイキャベツ、佐賀海苔、じゃがいも)、器は柿右衛門窯。サボイキャベツで包んだサモサを、柏餅のような仕立てで表現した一皿。右は、青春のとびら(菜花、カシューナッツ、シェリー)、器は今右衛門窯。インド料理のパニプリをベースにした、ひよこ豆のペーストを揚げたアミューズ。

2品目 私の好きな食べ物 / 太田早紀 by 髙岡シェフ

私の好きな食べ物(パプリカ、初摘み生のり、山葵、イセヒカリ、天吹の赤酢)。田んぼと有明海の香り──、高岡さんの幼少期の記憶をかたちにした一皿。生海苔とご飯に、赤パプリカをマグロに見立てた寿司を重ねる。有田と波佐見を拠点に可愛らしい絵付けの作風が人気の太田早紀さんの器にて。

3品目 なごり雪 / 井上萬二窯 by 髙岡シェフ

なごり雪(大根、蕪、ゲンコウ、柚子胡椒)。大根と蕪を重ねた繊細な構成を、美しい造形の人間国宝・井上萬二窯の白磁にて。ゲンコウのソースの爽やかな酸味がやさしい味わいを引き立てる。

4品目 僕の現在地 / 14代今泉今右衛門・川口武亮 by 引地シェフ

僕の現在地(白石レンコン、茄子)。焼きナスのペーストをベースにしたレンコンのマサラ。引地さんの現在地としてのインド料理を、ヴィーガンで表現した一皿。写真上の器が人間国宝の14代今泉今右衛門さんご本人の作品。墨はじきという白抜きの技法が特徴。写真下が有田で活動している川口武亮さんの器。有田では珍しい土ものの作家だ。

5品目 羅針盤 / 柿右衛門窯 by 引地シェフ

羅針盤(トマト、イチゴ、ビーツ、ハーブ)。トマトとイチゴを主役に据えたアチャール的なイメージで、先ほどのカレーに対する軽やかな一皿。柿右衛門窯の赤絵から着想を得た色彩が印象的で、料理そのものよりも器とともに成立する関係性を探る一品。有田で器と共存する料理を模索する、現在地とこれからを示す。

6品目 草原でキャッチボール / 川口武亮 by 髙岡シェフ

草原でキャッチボール(アスパラガス、甘酒、キヌア味噌)。春の風が駆け抜ける情景をイメージした一皿。アスパラに、玉ねぎとキヌア味噌、発酵の進んだ甘酒を合わせたスープを重ねることで、ナチュラルワインのような軽やかな発酵のニュアンスを表現。川口武亮さんの土ものの器とともに、大地の広がりを感じさせるダイナミックな一品。

7品目 大地の恵み / 中里太郎右衛門窯・弓野窯 by 髙岡シェフ、引地シェフ

大地の恵み(川久保農園の野菜、自然薯、醤油粕)。川久保農園の畑の野菜に加え、山で採取された野草を合わせた一皿。ささき農園の自然薯の素揚げに、醤油粕とともにシンプルに仕立て、大地の恵みをそのまま味わう構成に。中里太郎右衛門窯の黒と、弓野窯・中島宏の青磁、対照的な器が野菜の力強さを際立たせる。

8品目 小さな宇宙 / 照井壮 by 髙岡シェフ、引地シェフ

小さな宇宙(原木椎茸、白キクラゲ、発酵タモギタケ、じゃがいも)。山の恵みのきのこを重ねた一皿。白キクラゲの食感をアクセントに、発酵させたタモギタケのコクを重ね、この中に“小さな宇宙”を表現した。有田で活動する照井壮さんのマットな白の器が、きのこの多層的な味わいと世界観を静かに引き立てる。

9品目 今日からあなたは絵付け師さん / 照井壮 by 髙岡シェフ、引地シェフ

今日からあなたは絵付け師さん(牛蒡、バナナ、蕎麦粉、金冠、紫キャベツ、苺)。コースの締めくくりは、器への“絵付け”を楽しむ体験型デザート。照井さんの器に、紫キャベツやいちご、金柑、ココナッツ、醤油粕から作った食べられる釉薬を使い、呉須や赤絵のように自由に描く。五色の彩りとともに、有田の文化を味わう一皿。

「USEUM SAGA」は、静かな余韻を残しながら幕を閉じた。料理人がこの土地で受け取ったインスピレーション、出会いから生まれた驚きや楽しさ、そして器と料理が交差することで生まれた新しい表現。そのすべてが、短い時間の中で濃密に立ち上がっていた。

最後に再び登壇した二人のシェフ。

「デコボコなコンビでしたが(笑)、互いにプロフェッショナルだからこそバランスが取れた」と髙岡氏が語れば、引地氏も「多くを学び、視野が広がった」と応じる。異なる背景を持つ二人だからこそ生まれた対話が、この日のコース全体に深みを与えていた。

食材、生産者、器、料理人。それぞれが独立しながらも、ひとつの場で交わることで、新しい価値が生まれる。その関係性こそが、USEUM SAGAの本質なのかもしれない。

佐賀で育まれてきた器の文化と、豊かな食材。そこに外からの視点と新しい解釈が重なることで、この場所は“体験としての食”を更新しているのだ。

料理と器、そのあいだにあるもの。その可能性は、まだ静かに広がり続けている。

イベントを終えた両シェフにインタビュー

――お疲れさまでした。お二人が最初に対面したのはいつだったんですか?

髙岡 年明けですね。うちの店に食べに来てくれて。

引地 2ヶ月前くらいですよね。それでここまで形にできたのは、自分たちでも驚いてます(笑)。

髙岡 本当、びっくりですね(笑)。

――今回は器と料理、どちらから構成していったのでしょうか?

引地 まず料理ですね。全体の構成を決めてから有田に来て、料理に合う器を選んでいきました。

髙岡 そういう流れでしたね。

――香りや色というテーマを、料理に落とし込むうえで意識したことは?

髙岡 料理って結局“記憶”なんですよね。どんな経験をしてきたか、その積み重ねから生まれる。そこに香りを結びつけていった。ただ、香りだけだと抽象的すぎるので、色を与えることで具体化していきました。お互いの料理を食べて、構成を見ながら調整していって、引地さんのスパイスの強さと、自分の穏やかさをどう調和させるかを考えていました。

――お互いの料理の印象はいかがでしたか?

髙岡 やっぱり洗練されてますよね。東京っぽいというか。でも見た目だけじゃなくて、ちゃんと骨格がある。そこがいいなと思いました。

引地 ありがとうございます。髙岡さんの料理はとにかくダイナミック。アスパラをああいう形でスープに合わせる発想とか、自分にはないので勉強になりました。勢いというかパワーを感じますよね。だからみんな髙岡さんのことが好きなんだなと。

――器との関係で意識したことは?

引地 量と一体感ですね。特に柿右衛門窯の器は、料理が前に出すぎないように意識しました。器ありきで料理を成立させる。その感覚はこれからも追求していきたいです。

髙岡 自分はバランスですね。器が主役ならそれに合わせるし、料理が主役なら料理に寄せる。生産者も器も、みんなが生きるように整えている感覚です。

――引地さんは佐賀の食材をどのように選びましたか?

引地 川久保農園さんは髙岡さんに紹介していただいて、実際に畑にも行きました。「何が欲しいとは言わないで」と言われて(笑)、届いた食材を見て本当に驚きました。これができないと有田ではやっていけないなと感じました。

――川久保さんの野菜の魅力とは?

髙岡 野菜というより“人”ですね。自然に任せて育てていて、整理されていないようで、すごく強い。人としても自立している。

引地 この野菜を君はどう使うのか?って、試されている感じがありました(笑)。でもそれがすごく面白いし、惹かれます。髙岡さんも言ってましたけど「器が良くて、川久保さんの野菜があればできないことなんてないよ」って。その通りだなって思うぐらいすごい体験ができました。

川久保農園から届いた野菜。「春の手前の感じで」「赤いものを多めに」とだけ伝え、具体的な指定はしないオーダーに応えて届けられた食材たち。その自由さと完成度に、引地さんも驚きを隠せなかった。

――料理をするうえで大切にしていることは?

 髙岡 できるだけすべてを使うこと。生産者が喜ぶ形にすることですね。器も同じで、作家さんが喜んでもらえるような料理を作りたいと思っています。

――今回の器と料理の関係性については?

髙岡 柿右衛門窯の器に引地さんがトマトの料理をのせた一皿、あれは衝撃でしたね。完成された器に対して、ああいうアプローチをするのはすごい。

引地 有田に住んでいないからできるんだって言われました。普通は恐れ多くてできないって(笑)。

完成された美を持つ柿右衛門窯の赤絵。そこにソースを重ねるという挑戦的なアプローチが、髙岡シェフにも強い印象を残した。

――確かに、地元の方でもいわゆる人間国宝の方の器は目にしてきたけど、料理がのってるところは初めて見たとおっしゃっていましたね。特に印象に残った料理はありますか?

髙岡 レンコンのスパイス料理ですね。インドっぽい王道的なものをちゃんと組み込んでくる感じは好きでした。単調になりがちな野菜料理がスパイスを使うことによって味の輪郭が上がる。そこがやっぱりいいなと思いました。

引地 川久保さんの野菜と自然薯の一皿です。あれが出てきたらテンション上がりますよね。すごいエネルギーを感じました。

――最後に今回を通して感じた、佐賀の魅力とは?

髙岡 チーム力ですね。このフォーマットは世界でも通用すると思う。この器の歴史と技術があって、食材、料理人の考え方が揃っている。世界中どこに持っていっても戦えると思いました。

引地 同感です。それに何より雰囲気がいい。お客さんも温かくて、料理の原点みたいなものを感じました。東京ではなかなか得られない感覚でした。

イベントの締めくくりには、料理人をはじめスタッフ、関係者全員が一堂に集結。会場から大きな拍手が送られ、佐賀チームの結束を感じさせる瞬間となった。

USEUM SAGA
ユージアムサガは、佐賀の食材と器の魅力を掛け合わせ、料理人の表現を発信するプレミアムレストランイベント。毎年1度開催され、美術館のように料理と器を味わう、五感の体験を提案する。
HP
 https://sagamariage.jp/
IG @ sagamariage
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サガマリアージュ

Photo by Seitaro Iki (写真 壱岐成太郎)IG @seitaroik
Text by Shingo Akuzawa(文 阿久沢慎吾)

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