金沢イタリアン3選 あえて寿司・和食以外という選択肢。
魚好きが集まる[PES]
金沢の食と聞けば、多くの人が和食や寿司、海鮮を連想するだろう。しかし、金沢がそれだけではないことは言うまでもない。金沢の人が毎日お寿司を食べているわけはなく、イタリアンやナチュラルワインなどは、日常の食文化に溶け込み、奥行きを広げている。なぜなら、クオリティの高いイタリアンが多く揃っているからだ。そこで野菜、魚介、肉が魅力的な3軒を紹介する。
🥬野菜編:野菜に惚れ込んだ[LOTO]
🍖肉編:ジビエにワインに[neuron]
魚介に特化した[PES]
[PES]は、かつて[とおりゃんせKANAZAWA FOODLAB]という現代版屋台村にお店を構え、一旦閉店後、2025年7月に現在の場所に再オープンした。オーナーシェフの関盛尋斗さんは、かつて金沢の名店[ボッテガ ディ タカマッツォ]で研鑽を積んだ。そのときのシェフと冗談交じりに「魚介だけのイタリアンがあったらおもしろい」と話していたことを実現した。
「石川で地元食材を使うとなると、魚だと思ったんです。そこで思い切って肉を使わず魚介を中心にしたイタリアンというコンセプトに挑んでみました」
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例えば、パスタが全部で7〜8種類ある。通常ならば半分ほどはお肉のメニューが入ってくるだろうが、すべてを魚介で考えなければならない。すると魚の調理法のバリエーションが増えてくる。「魚だけでもできます」とシェフが言うように、ひとつの魚をあらゆる方向から味わい尽くすようになる。
ある日の黒板パスタメニューは9種類。セロリのジェノベーゼを除いて、魚介のパスタが並んでいた。
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アオリイカとカラスミのアーリオ・オーリオ(2400円)
パスタはリングイネ。シンプルにオリーブオイルとニンニクで。少しアサリの出汁が入っている
魚介なので、より鮮度が重要という点で、仕入れにおける論理は刺し身を提供する和食や寿司に近くなってくる。時期のものを、鮮度のいいうちに、素材そのものをシンプルに味わってもらう。まるで和食のような哲学のイタリアンができあがった。魚の品質が高い金沢を堪能できる新しい業態だ。
「魚ばかりなので、素材を余らせずに、鮮度のいいうちに回わせるというメリットもあります」
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オーナーシェフの関盛尋斗さん
魚は近所の魚屋さん[魚幸(うおさち)]から仕入れている。
「いわゆるまちの魚屋さんですが、卸売りもやっていて、手当てがとても丁寧で信頼できます。おまかせして、仕入れた魚でその日のメニューを考えていきますね。最近はクジラが入ったので『クジラのタルタル』なんてメニューもありました」
こうして仕入れた魚によってその日のメニューが決まっていく。自然と魚を見る目も鍛えられそう。この日のカルパッチョはサワラ。
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「皮目にうまみが詰まっているので、皮を引いてしまうと、淡白な味になってしまいます。炙ることで香りが立ち、脂のうまみを際立たせています」
「いま、サワラは旬ですか?」と聞くと「ちょうど脂がのっておいしい時期ですね」と応える。まるでお寿司屋さんでの会話のようだ。
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柳サワラの炙りカルパッチョ(1800円)
カルパッチョの切り身がとても大ぶり。サワラの半身のままである。全体的にポーションを多めにして、シェアして食べることを前提としている。
「気軽な雰囲気でカジュアルにワイワイ食べてほしいと思っているんです」
かつて[とおりゃんせKANAZAWA FOODLAB]で出店していたときは、“ワンオペ”だったので、メニューもすこし限定的にしていた。しかし今は態勢も整え、自由に楽しんでもらえるようになった。
「あまりこちらのエゴは出さず、いろいろ食べてもらえるようになりました。基本的には『寒いから温かいもの食べたいかな』とか、お客様がいま食べたいであろうものを想定してメニューを考えています」
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魚好きが集まるというイタリアン。魚大国の石川県で、和食、寿司以外のアプローチができた。魚好きはもちろん、肉好きが通っても、新たな境地を開けそうなイタリアンだ。
PES
石川県金沢市香林坊2丁目3-15
18:00〜24:00
定休日 水曜日+不定休
09080923051
IG @pes.kanazawaPhoto by Hiroki Tagawa(写真 田川紘輝)IG @hiroki_tagawa
Text by Tomohiro Okusa(文 大草朋宏)