
“あの味”が忘れられない。ロケ弁当録 vol.3
名前からしてワクワクする「宇宙べんとう」
「今日のお弁当、なんだろう?」フタを開けると、今日の現場が少しだけ特別になる。どこか懐かしい味、しみじみ美味しい一品、そして時々、意表を突かれる組み合わせ。ただお腹を満たすだけじゃない。お弁当には、作り手の心遣いや、ちょっとした驚きがある。この連載では、そんな“記憶に残るロケ弁”をひとつずつ、味わっていきたい。
フタを開けば、どーんと鎮座するハンバーグと目玉焼きは、もはや説明不要のコンビ。この日のお品書きは、王道の洋食弁当だが、日によってメンチカツやのり弁だったり、唐揚げだったりビビンバ麺だったり…。バリエーション豊かなラインナップに共通するのは、ちょっと豪快でいて、どこか手作り弁当のような温かさ。誰かの手が確かに入っていて、それがちゃんと伝わってくる。手に取ると、なんだか気分が高揚する。それが[宇宙べんとう]だ。
ぱかっ
手がけるのは[太陽傘(パラソル)]店主の野木早苗さん。アパレル勤務を経て料理の道に進み、2015年に南青山で[喫茶クレッセント]をスタート。後の2019年に恵比寿・広尾エリアにこの店をオープンした。
ハンバーグと目玉焼き、それだけで幸せになれる。「食べたいものを、ちゃんとおいしく食べる」それが野木さんのモットーだ。
ハンバーグはふっくらジューシー。箸で割ると中から半熟の黄身がとろり。甘みとコクが重なって、お米がつい進む。おかずの下にたっぷり詰められたごはんは、わんぱくなおかずのラインナップとは裏腹に、玄米なのもポイント。十分にお腹を満たしても、食後は軽やかに過ごせる。
そして、副菜も抜かりなく、脇役たちの仕事ぶりが超発揮。香ばしく焼かれた野菜に、シャキッとしたキャベツとレタス。甘酸っぱいグレープフルーツが乗っているのも、ちょっとした驚きがあって楽しい。こんにゃくとひじきの和え物やたくあんまで添えられていて、味わい豊か。どれも控えめな塩加減で、主役のおかずを引き立てるように下支えする。
お弁当メニューは日替わり1種類のみ。おなかをぺこぺこに減らした人も満足するボリューム感。
食べ終えたあと、なんだか気持ちが落ち着くのは、きっと手をかけて作られているから。気取らないのに、しみじみおいしい。店主・野木さんの作るお弁当には、そんな温かさが詰まっている。一度食べれば、あれもたべたい、これも食べたい。次は何が入っているだろう?と、インスタをのぞくのが、ちょっとした日課になっていく。
この日のお品書き 「宇宙べんとう」1,200円
ハンバーグ
目玉焼き
スパゲッティ
グレープフルーツサラダ
グリルド野菜
こんにゃくとひじきの和え物
たくあん
玄米