水野仁輔のスパイストリップ

「すさんだ心を洗い流す焼き小籠包」 in 中国・上海


Jinsuke MizunoJinsuke Mizuno  / Apr 25, 2018

ふん、小籠包なんてもん。

……とまあ、それまではそう思っていたのである。「だいたい」と「はねぇ」を前後に足してもいいくらいだった。だいたい小籠包なんてもんはねぇ。それほどおいしいもんかねぇ。OLさんじゃあるまいしねぇ。もともと斜に構えて世の中を見ているようなところもちょっとあると自覚しているが、冷めた目で見ていたもんだ。

こう書いたら、勘のいい人でなくても「なるほど、固定概念を覆すほどうまかった」って話なんだな、と想像がつくだろう。その通りなのである。だいたい (また、だいたいと言ってしまった) 、だいたい小籠包を焼いた料理だなんて、そんなものが存在すること自体が驚きだった。上海に長いこと住む編集者が、連れて行ってくれた。オーナーと顔見知りのようで、歓待だった。

思ったよりも大ぶりなその玉は、テニスボールとゴルフボールの間くらいだろうか (わかりにくい) 。真っ白な生地はふんわりもっちり、底の部分、1.5センチほどがこんがり焦げ茶色に焼き目がついている。カリッと頼もしい食感がある。中から出てきた具とジュースは、ご想像の通り、ジュワ~ッとジューシー。これらがわずか数秒の間にやってくるのだから、忙しい。

いやぁ、恐れ入ったよ、焼き小籠包。そして、これまで「だいたい」とか「はねぇ」とか軽視してきたことを恥じました。すさんだ僕の心が洗われるような食べ心地。上海旅で最も印象に残る料理となった。いま、日本にいながらに思い起こしてまた食べたくなる。最新型のドライバーでスパーンと東京に向けて打ち飛ばしてくれないだろうか。グリーンの真ん中で僕は待っているんだけどなぁ。

しかし焼いたもので洗うっていうのも、なんだかトンチンカンですな。

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