おいしい裏話
「がちょう」(RiCE No.47に寄せて)
姿を考えると気持ちが沈んで、謝りたいような気持ちになる。
でも、店先にきれいに並べられた各部位を見ているとただ感謝だけが湧いてくる。こんなにもすみからすみまで食べさせてもらったから、私たちは今日も生きていけるんだ、そんなふうに素直に思う。
所要時間20分ほどで、さっとそういう力のあるものを、大量の野菜といっしょに食べて会社に戻る出版社やカメラマンの人たち。
彼らが元気なのは、新鮮なものをたくさん食べているからだ、と心から思う。
別の日、新鮮な食材のあらゆるものの出汁が出たおいしい鍋に、締めの麺や春雨を入れましょうよ!と日本人たちが言ったら、台湾の出版人たちは「もうお腹いっぱい、スープを都度飲んだから充分!」と言っていた。言われてみたら確かにそうかも。
日本のお店での冷凍肉の薄切り、洗ってからずいぶん経ってる野菜、カピカピのきのこなどなど。いつもはちょっと不満足だからごはんでごまかしてるのやも、とちょっとだけ思った。
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『ヨシモトオノ』がある。