外食産業の未来を考えるカンファレンス

FOODIT TOKYO 2018開催


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 19, 2018

外食の未来が生まれる場所を作ろう

外食産業の未来とITを考えるイベント、「FOODIT TOKYO 2018」が9月13日に開催された。「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまり、4回目を迎えたこのイベント。日本が世界に誇る外食産業のリーダーたち、そしてテクノロジーの分野を引っ張っていくビジネスパーソンが集結した。

「未来」を見据えた次世代型店舗運営の創造

▲ ロイヤルホールディングス株式会社代表取締役会長 菊地唯夫氏 (左) 株式会社ワンダーテーブル代表取締役社長 秋元巳智雄氏 (右)

基調講演には、ロイヤルホールディングス株式会社代表取締役会長 菊地唯夫氏と、株式会社ワンダーテーブル代表取締役社長 秋元巳智雄氏が登場。次世代型の店舗運営について語った。ロイヤルホールディングスでは、社会構造が変容していく中で将来のスタンダードとなりうる飲食店の形を模索しているという。昨年オープンしたレストラン、「GATHERING TABLE PANTRY」は「ロイヤルホスト」で培ったセントラルキッチンのオペレーションを生かしながら、会計の完全キャッシュレス化、配膳はロボットが行うなど、プログレッシブな取り組みを実践している。店舗運営をする中で、テクノロジーが業務を代替し、労働時間の短縮に成功した。その結果、締め作業など、比較的価値を生み出さない業務領域に人間がタッチする機会を削減。ゲストと対面で接する時間が長くなり、顧客に提供したい価値をより届けられるようになった。飲食店という労働集約型のビジネスモデルにおいて、労働者人口の減少というのは大きな課題である。しかしテクノロジーが人間の業務領域を補完することで、ホスピタリティを最大化させることが一つの道であると語った。

その後のセッションは3つの会場に別れ、未来の外食シーンを作っていくイノベーター達による、熱量高いセッションが行われた。

アプリで変わる飲食店の顧客コミュニケーション

▲ 左から、株式会社ヤプリ エバンジェリスト 金子洋平氏、株式会社プロントコーポレーションの中村基氏、矢野純子氏

株式会社プロントコーポレーションの中村基氏と矢野純子氏、そしてアプリケーション領域でサービスを展開する株式会社ヤプリ、エバンジェリストの金子洋平氏が登壇。プロントコーポレーションにおける自社アプリの開発・導入による効果を語った。次の30年を見たときに、これからの時代を作っていく20代、30代というのは大きなターゲット。彼らが常に携帯しているスマートフォンに効率よくコネクトする手段として、アプリケーションの導入こそ最適解だという。今までリーチできていなかった新商品情報やクーポンを、プッシュ通知で届けることができるようになった。また、単に商品情報を届けるだけでなく、アートや旅などの情報も届けている。自社アプリのダウンロード数も快調で、顧客とのコミュニケーションをより密なものにしている。

ユニフォームのちからで、働く姿をブランド価値に

▲ シタテル株式会社 セールス・マーケティング部 鍛治村忠氏

シタテル株式会社 セールス・マーケティング部の鍛治村忠氏は、飲食店の「ユニフォーム」という視点から飲食業界のさらなる盛り上げを期す講演となった。空間や作業面を考慮し、オリジナルに作られたユニフォームは若者を中心として採用の増加に繋がった。また従業員のモチベーションがアップし、接客の質が向上したという事例も報告された。同社では、酒造メーカー「福光屋」、生どら焼き専門店「DOU」やラーメン店「IPPUDO」のユニフォームを手がけている。また昨年開業したTRUNK (HOTEL) のパーカーやバスローブなどもコンセプチュアルに製作。

飽和化する外食産業。究極の「オリジナリティ」とは

▲ レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役 本田直之氏 (左) 、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授 柳瀬博一氏 (右)

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授 柳瀬博一氏をモデレーターとし、レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役 本田直之氏が日本国内・国外の飲食店の最旬情報を語った。近年の飲食シーンを劇的に変革したのがインスタグラムの登場だという。昔だったら埋もれていたはずの情報が、一瞬にして世界中へ拡散することが可能になった。これはインスタグラムがビジュアル先行のメディアであり、共通言語を必要としないことが一因として挙げられる。クリエイティビティやオリジナリティをハイレベルに可視化できたものは、世界に届くポテンシャルがあるのだ。

また、「楽しい」という体験も大きな価値であるという。「美味しい」「美味しくない」という判断基準は、民族や文化によって異なるが、「楽しい」という体験は世界共通だ。「楽しい」も、ワールドクラスのコンテンツへ化ける要素の一つではないか。飽和する外食産業の中にも世界に繋がる道はあると力説した。

『業態開発』の終わりと「飲食企業2.0」

▲ Pizza 4P’s Corporation 代表 益子陽介氏 (左) 株式会社カゲン取締役 子安大輔氏  (右)

Pizza 4P’s Corporation 代表 益子陽介氏と、飲食店のプロデュースを行う株式会社カゲン取締役 子安大輔氏の講演では、ベトナムで人気を博しているPizza 4P’sがいかにして業態の多層化が行われているのかが紹介された。ピザに使うチーズの生産から自家焙煎のコーヒーを提供するなどの食材のことについてはもちろん、店舗の空間デザインを拘ることの重要性なども語られた。

ファンからあつい支持を受ける
「365日」が変えたパン屋の常識

▲ 365日」 /「 15 ℃」のオーナーシェフ 杉窪章匡氏 (左) 『RiCE』『RiCE.press』編集長 稲田浩 (右)

「365日」 /「 15 ℃」のオーナーシェフ 杉窪章匡氏と『RiCE』『RiCE.press』編集長 稲田浩のセッションでは、杉窪氏が現在の「365日」と「15℃」ができるまでの流れを経営面から説明。飲食店では異例である週休二日制を取り入れ、なおかつ従業員一人一人に対して作業効率の検証を行うなどの人材教育の話や、大量生産のパンが真似できないよう、機械では作ることのできない生地の作り方をしているなどの裏話も飛び出した。

レシピの「データ化」と「AI」で
食文化はどこまで変わるか

▲ クックパッド株式会社 金子晃久氏 (左) 建築家 豊田啓介氏 (右)

クックパッド株式会社研究開発部スマートキッチングループ グループ長 金子晃久氏と建築家 豊田啓介氏とのセッション。クックパッドでは、料理の過程を全て機械化するのではなく、あえて人間が「楽しい」と思う部分を残しつつ機械に頼るという「人と機械の協調」を目標にしており、レシピのデータ化や料理をAIに任せることによってどこまで食文化が変化していくのかに焦点を当てた講演となった。

次世代の「仕事観」は飲食店の未来をどう変えるか

▲ 左から、株式会社トレタCRM事業本部長 瀬川憲一氏、カフェ・カンパニー株式会社代表 楠本修二郎氏、株式会社トレタ代表取締役 中村仁氏

最後のセッションは未来総研というテーマで、外食産業の未来について議論が行われた。このカンファレンスの実行委員長である、株式会社トレタの代表取締役である中村仁氏と、同社CRM事業本部長、瀬川憲一氏が登壇。さらに日本のカフェ・カルチャー、外食シーンを牽引するカフェ・カンパニー株式会社代表 楠本修二郎氏も加わり、将来の飲食業界について語り合った。

外食産業の未来を考える上で、未来を担う世代のことを考える必要があるだろう。未来を担う88年ー96年生まれの世代は、「ミレニアル世代」や「ゆとり世代」などと呼ばれる。彼らは、「よくありたい」「ソーシャルグッドな仕事をしたい」と思う傾向にあるという。そんな彼らが立ち向かわなければならない未来はどうだ?オリンピックに沸く中、つい目先の2020年を追いがちだが、世界はすでに2030年を見ている。またその先も常に視野に入れなければならない。超高齢化はもちろんのこと、世界的な食糧不足が起こり、また日本だけでなくアジアにも人口減少がやってくる。全てがつながっている未来のために、私たちはどんなアクションをすればいいのだろう。

▲ 真剣に耳を傾ける参加者たち

渋谷の再開発が進んでいく中、カフェカンパニーはパナソニック株式会社、株式会社ロフトワークと協働し、渋谷に100BANCHという空間を作り上げた。これからの時代を担う若い世代とともに、次の100年につながる新しい価値の創造に取り組むための施設だ。カフェスペースとコワーキングスペースを中心に、様々なコミュニティが同時多発的にプロジェクトを行い、ケミストリーを生んでいく場所。若い世代にはトップランナーからのメンタリングの機会が提供され、プロジェクトがどんどんブラッシュ・アップされていく。プロジェクトを行う際に基盤となるコミュニティの存在が、未来を作っていく鍵になると強く語った。

▲ 会場には多くの参加者が集まった。7割が飲食関係、2割がIT関係とのこと。

めまぐるしく動く時代の中、キラリと光る未来はテクノロジーなしにはありえない。そんな中で外食産業とIT、それぞれの分野の第一人者のセッションに対し、真剣にメモを取ったり、エネルギッシュな眼差しを向ける参加者の姿が印象的であった。将来を担う若い世代も見受けられたようだ。刺激的な講演の数々が、未来へのアクションのきっかけを与えた一日になっただろう。

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