
古舘佑太郎「あの人とあの店で」
崎山蒼志くんと「もうやん飲み」がしたい(2/3)
これまでのお話はこちら ▷ 第1回
崎山くんの変化はきれい
古舘 俺は18歳でCD出して「早い」って言われてたけど、でも結局バンドってみんなやってるし、オーディション出たりとかして仲間もできるし、ロックバンドっていうものの中でみんな色をつけてやってるけど、崎山くんって“崎山くんしかいない道”を歩いてるじゃん。孤独感ってある?
崎山 あるんですけど、最近はけっこう楽しいというか。同い年ぐらいの友達ができたりとか新しい人たちに触れて、自分の気持ちも変わってきました。「僕もここでこういうのやってみたい」とか「ああいうの取り入れたいな」とかポジティブな気持ち。まぁ孤独感もずっとあります。トゥルーマン・ショーの悩みみたいな。
古舘 絶対そうだよな。でも、なんか崎山くんの初期の曲と「Haeven」あたりの曲の間には変化があったような気がして。その変わっていくグラデーションがめっちゃきれい。俺は超ゼロか百かだから。インディーズでやってた18〜19歳の頃から二十歳でメジャーデビューして、それから「人に伝えなきゃ!」みたいな強迫観念みたいなのがすごかった。それまでは自分のために音楽やってたのに、ガラッと変えちゃったというか、グラデーションがきれいじゃない。その結果迷子になってアジアを放浪することになるんだけど(笑)。崎山くんはそのグラデーションの描き方が半端ない。その時ってどういう感情で作ってたの?
崎山 「Haeven」は過去曲だったんですよ。
古舘 あ、そうなんだ!
崎山 はい、中学生の時に作った曲です。だけどアレンジがついたのが出て、段々とやりたいことに近づいていった。多分そういうことが合致していったというか、できることが増えていく過程がアルバム(メジャーデビューアルバム『find fuse in youth』)に詰まっているのかもしれません。それがグラデーションに見えてるというか、そう聴こえてるのかな。
古舘 最初の2枚(『いつかみた国』と『並む踊り』)と「Haeven」で印象がちょっと違う気がしたんだよね。自分を変えるって必要なことなんだけど、みんなガサツになっちゃったり悩んだり、自分を見失ったりする。
崎山 自分も全然雑だなと思っちゃいます。
古舘 まじで!? 線が綺麗に描かれてるって思うんだよね。「Haeven」が過去曲っていうのはすごく意外。要は15歳ぐらいの時に作曲したってこと?
崎山 そうです、14歳とかで書いてて、YouTubeにもその時の動画があります。
古舘 あれ14歳で作ってんの? なんかへこむわ(笑)。俺の予想は、“崎山蒼志”が始まって、自分のための内向的な音楽からより広く届けるために試行錯誤して、元ある崎山くんと新しい崎山くんの融合に苦悩して生まれたのが「Heaven」なんじゃないかって、勝手に俺の物差しで測ってたんだけど。違うの?
崎山 前の曲なんです。
古舘 前の曲をガラッと変えたとかじゃない?
崎山 ちょっと印象は違いますけど。
古舘 そうなんだね、それは完全に取り違えてました。崎山くんを15歳の時から知ってるから、それ以降を見ててずっと思ってたんだよね。けっこうみんなそのデビュー前後での変化の部分で失敗しがちだよね?
崎山 そうですね、そう感じるし、そう思うし、悩みますよね。
古舘 俺は自分を卑下するとかそういうことじゃなくて、魔改造しすぎて自分が分かんなくなっちゃった人だから。

ツナアボカドカレーが到着
崎山 僕アボカド大好きなんです。うん、旨い。
古舘 最近のもうやん飲みの時はカレーじゃなくておつまみで飲んでたから、実は夜のカレー系のメニュー食べたことがないんですよ。
辻社長 うちはお蔵入りメニューがめちゃくちゃあるんで、メニューに載ってるのはかなりの精鋭です。ごはん抜き、カレーの具だけもありますよ。

追加注文する古舘さん。「ご飯抜きいいっすね!」とラムカレーのライスなしをセレクト
崎山くんは戦いの場に行くよね
古舘 いやでも、今の話はマジで話さないと分かんなかったな。勝手に自分の経験の中と照らし合わせちゃうんだろうな。いちリスナーの解釈だけど、自分の好きな音楽を追求するみたいな感じでやってるのかなと思ったり。
崎山 それはちょっとあります。
古舘 そのバランスがうまいからな〜。「目を閉じて、失せるから。」がめっちゃ好きで。あれ相当好き勝手ね。
崎山 そうですそうです。もう当時の気持ちのまま、家でレコーディングして。実家の和室で、iPadで。ミックスちょっとして。
古舘 基本はギターで作る曲が多い?
崎山 多いですね。最近弾き語りで作れなくなってきちゃって。ギターのコードをボイスメモに録って、それをカットして、同じルートで並べて。ずっとそれみたいな。決めることが早くなる。
古舘 自分でギター弾いて作るとルーティーンにはまるから、あえて作為的なものじゃなくてってことか。
崎山 それに気持ちが上がらないと歌が作れないというか。新しいことしないとっていう状態になってる。
古舘 すでに6作作ってるもんね。自分が18歳から33歳までの15年で、ミニアルバム除いてフルアルバム5枚だから。22歳で5枚はやばいね、そのペース。
崎山 おかしいです、汗出してますよ。どんどんやりたいことが増えすぎて、どうしようみたいな。
古舘 じゃあ今すっごい楽しくない? 俺は20代振り返ると、ガソリンが切れた状態でエンジンふかすような作業だったから。思い出すとエンジンの悲鳴が聞こえてくるというか。そもそも崎山くんと違って音楽が家で流れてる家庭じゃなかったから。俺は中3の時に失恋して悲しくて、バンドだ!って始めただけで、そもそもガソリンが少なかったのに走り出したって感じ。だから、これもやりたいあれもやりたいってなる探究心は羨ましい。
崎山 自分でどうやるか考えながらやっていくっていうのは難しいですよね。
古舘 そういえば上白石萌歌さんのアルバムに提供してるよね? 同じアルバムかな?
崎山 僕は次の次の作品(『adieu 4』収録の「ほしくず」)です。古舘さんの(作詞作曲・『adieu 2』収録の「愛って」)すごい好きです。
古舘 聴いてくれたんだ! The SALOVERSが解散する時にソロアルバム作ってて、それに入ってた曲で。でも崎山くんが楽曲提供するってなんか意外だった。崎山節というか、崎山くんのあの声とあの独特なギターのリズムとか、他の人がどう再現するんだろうっていうか。

崎山 テーマがあることってすごく好きで。すぐ書きたいって思いました。最近は『パリピ孔明 THE MOVIE』の劇中歌を作りました。それは水カンの詩羽さんに。
古舘 俺はロックバンドっていうカテゴライズに入るけど、崎山くんってそのカテゴライズではないし、やっぱりちょっと特異な場所にいるじゃん。であればそれを追求していければいいじゃんって思う人もいると思うんだよね。俺だったらそうしちゃう気がする。でも崎山くんってタイアップとかするじゃん。それすげぇなと思って。こもらないというか、戦いの場に行くよね。それはなんでなの?
崎山 興味ですね。やってみたいっていう。
古舘 崎山節を炸裂させるだけじゃなくて、タイアップ作品の中で自分がどういう曲を作れるか、みたいなことにも興味があるんだね。
崎山 そうですね。でも一つのことをストイックに極める方がブランディング的にいい可能性もありますけど、僕はそれができなくて。注意散漫なんですよ。ぐしゃぐしゃ系っていうか。そういうのも影響してるのかな。だから同時にいろんなことできた方が嬉しいっていうか。
古舘 それで脳を埋め尽くした方が気が楽というか、それちょっとわかるかも。一つのことをずっとやってると貧乏ゆすり止まらなくなるような。でも三つぐらい同時並行だと気持ちが落ち着くというか、それはすごくわかる。
崎山 自分もめちゃくちゃわかります。気分転換で。
古舘 戻ってこれるしね、一方通行じゃないっていうか。俺の場合は役者がそうかもしれない。音楽でうわーってなった時に、一旦こっちにいくとリフレッシュできる。
崎山 それ素敵ですね。

古舘佑太郎|Yutaro Furutachi
俳優、ミュージシャン。1991年4月5日生まれ、東京都出身。2008年、バンド「The SALOVERS」を結成し、ボーカル・ギターとして活動スタート。2015年、同バンドの無期限活動休止後、ソロ活動を開始。2017年、新たなバンド「2」を結成し、2021年に活動休止。2022年にバンド名を 「THE 2」に改め再開するも、2024年に解散。俳優としても活躍し、2014年、映画『日々ロック』でデビュー。以降、NHK 連続テレビ小説『ひよっこ』、NHK 大河ドラマ『光る君へ』などに出演。主演映画に『いちごの唄』『アイムクレイジー』などがある。今年3月12日には初の書籍『カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記』が発売された。(新刊発売インタビューはこちら)
IG @yutaro_furutachi崎山蒼志|Soushi Sakiyama
シンガーソングライター。2002年8月31日生まれ、静岡県出身。2018年、『日村はゆく』(Abema TV)の出演をきっかけに注目を浴びる。同年、16歳でファースト・アルバム「いつかみた国」をリリースし、2021年にアルバム「find fuse in youth」でメジャーデビュー。多数の映画やドラマ、アニメの主題歌を提供。2023年7月19日にはTVアニメ『呪術廻戦 懐玉・玉折』のエンディングテーマ「燈」をリリースし、ストリーミング総再生数は1億回を突破。今年4月25日公開の『パリピ孔明 THE MOVIE』では劇中歌を書き下ろした。また、2025年1月には初のエッセイ集『ふと、新世界と繋がって』も発売され、文芸界からも注目を浴びている。
IG @soush.i_sakiyamaもうやんカレー 246 渋谷店
東京都渋谷区渋谷1-7-5
Tel 050-5462-2922
WEB moyan-shibuya.foodre.jp
IG @moyancurry_official衣装(古舘さん)
トップス ¥29,700、ボトム ¥44,000 / 共に Old park (オールド パーク、HEMT PR 03-6721-0882)
シューズ / スタイリスト私物衣装(崎山さん)
ニット ¥59,400 / Kota Gushiken (コウタ グシケン、info@kotagushiken.com)
ボトム ¥34,100 / KHONOROGICA (コノロジカ、HEMT PR 03-6721-0882)
インナーカットソー、シューズ / スタイリスト私物Photo by Mishio Wada(写真 和田美潮)
Styling by Kie Fujii(スタイリング 藤井希恵)
Hair & Makeup by Asumi Washizuka(ヘア&メイク 鷲塚明寿美)
Text by Yoshiki Tatezaki(文 舘﨑芳貴)
Edit by Ai Hanazawa(編集 花沢亜衣)
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 Takashi Watanabe
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