
波平龍一の暮らしの料理
第四回 夢の「梅干百珍」
定まらない季節と献立
前回の冒頭は「やっと、春が到来しましたね。」という一文で始まったわけですが、どうやら少しだけ気が早かったみたいです(笑)。
なかなか暖かくなりきらないなあと思っていたら急に暑くなったり、はたまた寒くなったり。3月終わりから4月の頭あたりに体調を崩したという方も多かったのではないでしょうか? かくいう僕も、鼻風邪から始まる発熱で少しダウンしてしまいました。
バシッ!と春になってくれさえすれば、自然と春らしいものが食べたくなり、すんなりと献立も決まるのですが、これだけ季節が定まらないと日々食べたいものもなかなか定まりません。
「昼間は暑かったから少し酸味のあるものにしようか、でも夜は冷えるし体が温まる鍋物の方がしっくりくるかな……」
脳内にいろんなお料理が浮かんでは消え、気づけば思ったよりも長いことスーパーの中をウロウロ。
ある日の買い物でまさにそんな流れにハマりかけていたところ、鮮魚売り場で飛び込んできた<旬モノ!!小イワシ!!>の文字。その時ふと、自宅に自家製の梅干しが大量にある事を思い出し、その日の献立はめでたく小イワシの梅煮に決定しました。なんとなく色々見て回るのではなく「旬」を頼りに売り場を眺めると選択肢が絞られ、献立を考えるのも少し楽になるのかも?と、小さな気づきを得た出来事でした^^
めでたく献立も決まりましたので、小イワシと共に帰宅し早速トライ! 骨までホロホロにしようと思うと時間がかかりますが、この日は短い時間でフワッと仕上げてみたので、所要時間約15分ですぐに幸せな食卓が整いました。
イワシでなくとも、その他小さめのお魚や切り身での代用もOKです。季節のお魚で是非お試しあれ!
RECIPE|小イワシの梅煮
【材料(2人分)】
・小イワシ 8〜 10尾ほど *今回は頭とはらわたがないものを購入。
・梅干し 3粒ほど
・水 300c(コップ二杯くらい)
・酒 大さじ1
・みりん 大さじ1
【手順】
①イワシ以外の材料を火にかける
イワシがなるべく重ならずに並ぶサイズの鍋かフライパンに、イワシ以外の材料を加えて火にかける。梅干しは適当にほぐして、種も入れる。
②イワシを並べ入れる
①のアルコールが飛ぶ程度に約5分ほど中弱火にかけたら、弱火にしてイワシを並べ入れる。アルミホイルなどで落とし蓋をし、8〜10分ほど加熱したら火を止める。少し休ませて放冷したら盛り付けて完成!
波平家、第一次梅干しブーム到来
わずか二つの工程で完成する極めてミニマルなレシピになりました。生姜などの香味野菜や中華系の香辛料なんかを加えてみるのもおいしそうです。ぜひ自由にアレンジして、自分だけの梅煮レシピを作ってみてくださいね!
サムネイル写真にある汁物も実は梅干し料理。
ほぐした梅干しと、にぼし少々、具材を適当に火にかけて、必要があれば醤油と酒で味を調える。すっきりとした味わいのお吸い物がカンタンにできちゃうのでこちらもおすすめです。
この日の晩ご飯をきっかけに、波平家には現在「第一次梅干しブーム」が到来しています。
特に今、大興奮で試作を重ねているのが、梅干し出汁を使ったお料理なのですが、毎度発見が多く、自宅での料理が一層楽しく、且つお手軽になりました。
梅干し出汁の特徴は、鰹出汁ほど香りに主張がなく、素材の風味そのままに旨みと塩味をダブルでプラスすることができる点です。魅力的すぎる……少しのコツさえ押さえれば、活用法はまさに無限大♾️
遠い昔、江戸時代に出版された料理本に『豆腐百珍』というものがありますが、この分だといずれ『梅干百珍』が書けそうだなあという夢が膨らむくらいに、我が家では新たな梅干し料理がどんどん生まれています。
梅干しってちょっと古臭いイメージを持たれがちですが、こうやって新たな魅力を見つけると見え方も変わってきますよね。
ほんのりとした酸味と、ググッと底から上がってくるような旨みを感じる今回の一皿には、島根県・旭日酒造さんの日本酒「御幡の元気米」を合わせてみました。
常温でするりと飲み込んだのちに広がる風味は緩やかながら骨太で、原料の底力を感じさせるような堂々とした表情があります。小イワシの梅煮との相性もバッチリでした。
手羽先みたいに身離れが良く、手で摘んで次々と食べていくのが小気味よく、この日の晩御飯はお酒も交えながらあっという間に平らげてしまいました
病み上がりの身体を腹の底から元気にしてくれた季節の梅干し料理。夢の「梅干百珍」出版を目指して、これからも新たな梅干しの魅力を、美味しく楽しくマイペースに、掘り下げていきたいと思います。
- 暮らしの料理 調理担当
波平 龍一 / Ryuichi Namihira
1993年、神奈川県出身。大学卒業後、東京の懐石料理店にて料理人としてのキャリアをスタート。その後、京都に拠点を移し、中東篤志氏に師事。現在は、東京あきる野にて自然農に取り組んでいる、妻の波平雪乃と共に[暮らしの料理]の屋号で晩御飯企画を主宰。 その他イベントへの参加や商品開発を中心にフリーで活動中。
IG @namihei_kome
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