RiCE PEOPLE INTERVIEW

白冰 (FOOD&COMPANY) 後編


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 18, 2018

2013年にオーガニック食材をメインに扱う食料品店[FOOD&COMPANY]を学芸大学に設立し注目を集めると、今年は新宿と湘南に続けて2店舗を出店。成長を続ける[FOOD&COMPANY]の代表・白冰さんのインタビューを前後編二回にわたってお届けする。後編では[FOOD&COMPANY]、そしてグローサリーストアの今後のあり方について話を伺った。(前編はこちら)

売り場のエンターテイメント化

————オンラインでの販売についてはどう考えていますか?

 現在は店舗の方に多くのお客様が足を運んでくださっているので、オンラインは一つのカテゴリーとして取り組めればいいかなと考えています。小売はネット通販に取って代わられていくと言われていますけど、ぼくは小売自体は絶対に無くならない商売だと思っているんです。ただこれまでの売っているだけのやり方ではネットには絶対に勝てないですよね。だから売り場自体をもっとエンターテイメント化していって、お店での体験自体が価値を持つようにしていきたい。例えばディズニーランドみたいに、そこに行くと楽しい!という売り場にどんどんしていきたい。そのために機械化できるところは機械化していくのも手だし。レジを人間がやる必要がなくなったら、その分お客さまの接客にあたったり、試食販売をしたり、人間しかできないコミュニケーションを大切にしつつ、新しい小売りの形を突き詰めていきたいと思っています。

—————お店での体験という意味では学芸大学店ではワークショップを定期的に開催されています。今後考えていることはありますか?

 お弁当やデリはフードロスにもつながるので今後やっていきたいと思っています。現状だと商品が傷んで売れない状態まで劣化した場合、それを生かす手段がありません。湘南だと農家さんに野菜を引き取っていただいて、鶏の餌にしてもらえているのですが、東京ではそれができないので。ダメになる前に料理で使えたら一番いいですよね。そういう体制にして生ゴミとかもほとんど出ないお店にしていきたいです。[FOOD&COMPANY]としては、現在3店舗ですけど社会に与えるインパクトを持ちたいという目標があるので、それを実現するためにはどうしたらいいのか考えているところです。

————路面店は増やしていきたいですか?

 そうですね。路面店は増やしていきたいです。テナント出店か路面出店問わず、しっかりぼくたちの考えに共感してくださるかというところを大切にしたいと思っています。いまは商業施設の中に食の健康やオーガニックの商品が買える場所をテナントとして誘致する施設も多く、よくお声がけいただくのですが一度もお店に来たことがなかったり、あまりぼくたちのことを知らずに誘われることもあったりして。そうするとその商業施設自体にも理念がないように感じてしまいますし、ぼくたちもむやみに出店したいわけではないですから。今回の新宿ルミネさんやT-SITEさんはぼくたちの理念を理解した上で、こういうショップにしてほしいというイメージが明確にありましたし、すごく熱意を感じたので一緒にやらせていただこうと思い実現したんです。商業施設はたくさんある中で、それぞれの色を出すために小さなお店の役割がすごく大切だと思うのですが、そういう小さなお店ほどみなさん強い想いをもってやっていらっしゃるので、その想いを理解しないで出店してくださいと言われても難しいのではないかと思います。

これからのグローサリーストアの形

————それだけいまグローサリーストアが求められているということだと思うのですが、グローサリーストアのこれからについてはどのように感じてらっしゃいますか?

 ものを仕入れて売る、というシンプルな形態の効率を追求してきた小売ですが、小さい企業は今後もっとユニークな体験や、ここでしか買えない商品が買えるとか、ここで同じ趣味の人に繋がれるなどといった、付加価値が求められていると思います。大手には同じ商品の値段で競っても勝てないので商品のセレクト (編集力) やオリジナル商品の開発などが手段としては考えられます。現在はプライベートブランド (PB) の商品も増えていますが、なんでもPB化すればいいというわけではなくて、PB化する理由がある商品はそうすればいいと思うんです。例えば本当に良い醤油屋さんがあるのに、PBで中身が同じでパッケージが違うだけのものを作るならやる意味はないですよね。メーカーの顔は見えていた方がいいし、ラベルを貼り替えられて自分たちが作ってないような商品になって売られるのは気持ちいいことではないはずです。野菜にしても店での値段設定は安すぎず高すぎずのバランスをすごく考えています。“良い”ものであると理解していただいても、高くて買ってもらえないではダメなので、普段使いで買ってもらえる価格にするという点はすごく大切にしています。ぼくたちも継続的に買えないと農家さんたちをサポートできないですし、一回買っておしまいというわけにはいかないですから。

————お話を聞いてみて、[FOOD&COMPANY]が支持されている理由がよくわかりました。今後の展開も楽しみですね。

 コミュニティを大切にするという点でいうと、学芸大学店は本当に地元の方に来ていただいて支えてもらっていますし、湘南店は生産者の方とのつながりを一番感じられるんです。知り合った方が、また知り合いの人を紹介してくださってそこからつながる、ということが多くて。新宿店は駅中なのでまた違うのですが、3店舗になって優秀なスタッフも入ってきてくれたし、それぞれ店舗によって全然色も違うのでチャレンジでもあるんですけど面白いです。まだまだやりたいことはあるのでさっきも言いましたが、[FOOD&COMPANY]として社会にインパクトを与えるようなことをやっていけたらと思っています。


RECOMMEND ITEM

「KOVAL」¥6.760

出張で金沢に行ったときにたまたま入ったバーに置いてあったのがこのウイスキー。気になって話を聞いてみたら、原料もすべて有機で。ちゃんとUSDAのオーガニック認証も付いているんです。シカゴの蒸留所で夫婦で作っているんですけど、世界でも珍しいHybrid Stillで蒸留していてこれまでに世界的な賞をいくつも受賞しています。パッケージも綺麗なので、プレゼントにしても喜ばれると思います。自分が発掘したということでも思い入れのある商品です。

「ウエダ家の自然発酵乳酸菌」¥1.359

横浜にあるウエダ家という家族経営でやってらっしゃるところが作る乳酸菌のパウダー。発酵の過程で人間がいちばん美味しいと感じるタイミングで発酵を止めて顆粒にしています。普通に飲んだりもできますし、ヨーグルトに入れたり、ぬか床に入れると腐りかけていたのが蘇ったり。あとはクッキーとか作ると、捻り方で味が変わってちょっとチーズっぽい味になったりとかも。彼らは深い哲学に基づいてやってらっしゃるのですが、彼ら自身もうまく説明できないみたいで、だからぼくもうまく説明できないんですけど(笑)、とにかくすごく面白い商品です。

白冰 (バイ ビン)
1987年北京生まれ。5歳から横浜に移住し日本で教育を受ける。大学は米国NYに留学しファッションマーケティング&マネージメントを専攻。卒業後日本に帰国し、ファーストリテイリングに入社。退社後、2013年11月にオーガニック食材をメインに扱う食料品店、FOOD&COMPANYを設立。

FOOD&COMPANY
東京都目黒区鷹番3-14-15
11:00〜22:00
無休 (年末年始除く)
http://www.foodandcompany.co.jp
CREDIT
写真: きくちよしみ

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