RiCE PEOPLE INTERVIEW

白冰 (FOOD&COMPANY) 前編


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 10, 2018

2013年にオーガニック食材をメインに扱う食料品店[FOOD&COMPANY]を学芸大学に設立し注目を集めると、今年は新宿と湘南に続けて2店舗を出店。成長を続ける[FOOD&COMPANY]の代表・白冰さんのインタビューを前後編二回にわたってお届けする。前編となる今回は[FOOD&COMPANY]設立の経緯を中心に話を伺った。

食品もお店も価値観を伝えるひとつのメディア

————これまでの学芸大学の店舗に加えて、今年は2月に新宿に[MINI by FOOD&COMPANY]、そして4月に[FOOD&COMPANY 湘南T-SITE]と出店が続きました。

 そうですね。ようやく落ち着いてきました。現在は両店舗共にスタッフに任せられるようになってきたので、ぼくはできるだけ実務から離れて、今後の展開についてもういちど考える時間が作れるようになってきました。

————あらためて起業の経緯を伺いたいのですが。もともとファーストリテイリング (編集部注:ユニクロなどを展開するアパレル企業 )にいらっしゃったんですよね。

 新卒でユニクロに入りました。大学の時にファッションをニューヨークで勉強していたので、そのときはファッションをやりたいと思っていたんです。

————そこから[FOOD&COMPANY]を作るわけですよね。

 オーガニックって一つの思想だと思うんです。そのオーガニックという考え方がぼくと妻 (谷田部摩耶さん/バイヤー) が世の中に伝えたい考え方とすごく似ていた。ぼくたちは起業すると決めてから2年くらい旅をしながらいろいろなところを巡ったのですが、その中で感じた理想とする価値観がいくつかあって。それがオーガニックというすでにある思想にとても近いものでした。そのオーガニックの思想を食品を通じてお客様に伝えることで、世の中を変えていこう。というのが[FOOD&COMPANY]を作った理由です。だからぼくたちは、食のビジネスを始めたくて起業したというよりは、食品を一つのメディアと捉え、食品にオーガニックの考え方をのせて発信しています。お店もメディアだし、売っている商品もメディア。[FOOD&COMPANY]の商品にはそういう想いや価値観が詰まっているんです。

————お店のコンセプトなどは奥様と二人で決めたんですか?

 最初にもうひとりティナというメンバーがいました。彼女は広告代理店で働いていたんですけど、コミュニティデザインを大学で勉強していたんです。オーガニックの思想の中にコミュニティを大切にするという考えがあるのですが、グローサリーストアでコミュニティデザインをするという観点から興味を持ち協力してくれました。そして内装もランドスケーププロダクツから独立したばかりのスタジオドーナツにお願いして、いままで旅を通じて感じていたことを言語化しコンセプトに落とし込でいきました。

スーパーマーケットではなくグローサリーストア

————影響を受けたお店はありましたか?

 コペンハーゲンに行ったときに、マーケットとスーパーが一緒になったような面白い施設があったんです。外でファーマーズマーケットをやっていて、中は全部ガラス張り。ハーブの専門店とかコーヒーショップとか小さなお店が入っていて、マーケットとしてすべて揃うようになっている。そしてそれぞれのお店にちゃんと個性があるんです。そこにはすごく衝撃を受けました。もちろんアメリカの[WHOLE FOODS MARKET]や[TRADER JOE’S]にも影響は受けてますけど、それをそのまま日本でやっても合わないと思ったので、いろいろなところのエッセンスを組み合わせているようなイメージです。ぼくたちは[FOOD&COMPANY]を説明するときにスーパーマーケットじゃなくてグローサリーストアという言い方をしています。アメリカのグローサリーストアって野菜も売っているスーパーとコンビニの間みたいな感じ。地元の人がやっていて、顔見知りになったり。小さいですけどそのエリアのコミュニティの中心になっている。昔ながらの食料品店というよりは、いまっぽい効率的な部分もあるんですけど人の温かみもあるようなお店なんですよね。日本はスーパーマーケットが効率を追求しすぎていて、お店に行っても楽しくない。だから[FOOD&COMPANY]は買い物の楽しさも伝えていけたらいいなと思っています。

——— いわゆる自然食品を売りにしているお店って日本にもいくつかあると思うんですけど、たしかに[FOOD&COMPANY]は買い物をしていて一番楽しいというかワクワク感をすごく感じるんですよね。ディスプレイもごちゃごちゃしていない、適度なバランスがすごくいいなと。

 全然まだまだです。でも売り場の雰囲気は他のお店と違うというのはあると思います。できるだけ明るく、プラスチックは基本的に使わないようにしていて、木とか鉄とか質感を感じられる素材を使っています。商品の並べ方も学芸大学店は贅沢にスペースを使っていて、二列置くと狭くなってしまうので一列にして通路も広くしているんです。買い物をしやすいように、詰め込みすぎないようにというのは意識しています。

オーガニックという選択肢を日常に

————家族連れでもいいし、誰でも入りやすいですよね。

白 時間とともにそうなっていきました。最初はスッキリしすぎていて、「なんのお店だろう?」「美容院ですか?」って言われたり、「入りづらい」って言われたこともありました。最初に撮った写真を見ると綺麗なんだけどすごい無機質な感じで。でも4〜5年経って、取り扱う野菜や商品も増えてきたことが入りやすさにつながっている部分はあると思います。

————学芸大学という場所も1店舗目としては良かったですか?

 良かったです。エリアとしてすごく面白い。青山みたいな土日に行く場所ではなくて、平日に普通に買い物に行く場所。住宅地に作りたいというのは最初から考えていたことでした。アメリカだと買い物をする上で、オーガニックを選ぶという選択肢は当たり前にありますけど、日本だとファーマーズマーケットでしか買えないとか、限られている。だから普通に人が住んでいるところでそういうものが買えるというのがすごく大切だと思ったんです。学芸大学はそういった感度が高い地域ですし、すごく良かったですね。

————[FOOD&COMPANY]では「F.L.O.S.S.」という独自の食材選定ガイドラインを設けています。

 「Fresh, Local, Organic, Seasonal, Sustainable」ですね。できるだけわかりやすくしたかったので、ぼくたちの方で見極めて取捨選択して安全性を担保するというのが一番いいと思いました。ゆくゆくは「[FOOD&COMPANY]で扱っているんだったら安心だね」って言われるようになりたいですね。もちろん添加物を使っていないとか、有機の認証が付いてるとかありますけど、やっぱり人の部分も大切で。中には流行りでオーガニックのものを作りましたみたいな人や商品もあるので、そこは担当の方の雰囲気とか話した感じとかも含めてバイヤーである妻と見極めて選んでいます。

————商品を集めたり、野菜を仕入れたり、いちからグローサリーストアを始めるのはすごく大変なことですよね。

 扱いたいものがあったら直接電話して、卸さんを紹介していただいたり。そういうところから始めました。

————市場から仕入れることは考えなかったですか?

 大田市場も考えたのですが、オーガニックの野菜はほとんどしてないんです。仲卸さんでたまに取り扱っていることがあるので、お願いすれば持ってきてくれるんですけど全然揃わないんです。オーガニックだと認証のトレーサビリティーがしっかりしてなきゃいけないので、基本的にはオーガニックを扱える卸さんも有機の卸売の販売許可がいるんです。有機の小分け認証っていうのがあって、普通の野菜と有機の野菜が混在しないように区分けができているとか、細かく規定があります。流通全部に対して有機の認証が整ってなければならないので、市場だと何県産っていうのはわかってもなかなか誰が作ったかまではわからない。トレーサビリティーが担保できないところもあるので、有機専門の卸さんがいてそこから仕入れています。FAXが届くので、それを見て数字を記入して送り返すみたいな作業ですね。そういう農家さんってそもそもパソコンを持っていない方も多いので自分たちがどれだけ出荷したか把握されてないケースも多いみたいです。オーガニック業界はすごくローテクなのでそこも変えていかなきゃいけないと思っています。(後編につづく)


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白冰 (バイ ビン)
1987年北京生まれ。5歳から横浜に移住し日本で教育を受ける。大学は米国NYに留学しファッションマーケティング&マネージメントを専攻。卒業後日本に帰国し、ファーストリテイリングに入社。退社後、2013年11月にオーガニック食材をメインに扱う食料品店、FOOD&COMPANYを設立。


FOOD&COMPANY
東京都目黒区鷹番3-14-15
11:00〜22:00
無休 (年末年始除く)
http://www.foodandcompany.co.jp
CREDIT
写真: きくちよしみ

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