ふたりが提案する新しい市場街

「HIBIYA CENTRAL MARKET」南貴之 × 丸山智博 スペシャルインタビュー


RiCE.pressRiCE.press  / Apr 3, 2018

2018年3月29日にグランドオープンを迎える東京ミッドタウン日比谷。その3階に、クリエイティブディレクター南貴之と老舗書店「有隣堂」によるアーケード型複合ショップ「HIBIYA CENTRAL MARKET (ヒビヤ セントラル マーケット) 」も同日オープンする。

南貴之が手掛ける小さな街のような複合型店舗「HIBIYA CENTRAL MARKET」。食事や酒、本や衣服などが揃えられ、誰もが郷愁や親近感を抱き、居場所を見つけられるように編集された新しい場所。そこに入る飲食店「一角」のプロデュースは、代々木上原を中心にフレンチビストロ「MAISON CINQUANTECINQ」や「Gris」、和食居酒屋「Lanterne」、器をテーマにしたギャラリーを併設するレストラン「AELU」や「9STORIES」などを手掛ける丸山智博。そんな「HIBIYA CENTRAL MARKET」のトータルプロデューサー南氏と「一角」を手掛ける丸山氏の両氏をインタビュー。全く新しいコンセプトで人が集う場所、提供される食、その核心に迫る。

: (三井不動産から) この話をいただいたのは3年ほど前で、東京ミッドタウン日比谷ができたらやりたいことをプレゼンしたら、企画を気に入ってもらえたのはよかったのですが、こんなでかいところやる予算どうしようと思っていたんです。そしたらある日、日本橋の料亭みたいなところに呼び出されまして、そこで初めて有隣堂の専務にお会いしたんです。有隣堂の専務が僕のプランを気に入ってくれて、「一緒にやりたい」って言っていただいてからのスタートでしたね。1年半か2年くらい前だったと思います。

————南さんのもともとあった青写真に有隣堂さんがのってくれたと。

:いろいろ自由にやらせてもらえることになって。有隣堂さんは僕がやることに「あれ駄目これ駄目」とは言わなくて、本当に協力していただいて。しかも「本も置かなくてよい」って言われたんですけど、僕は逆に本を置きたかったんです。だから「Library」ってお店は「本を置かなくてよい」ってところからスタートだったんです。で、いろいろ考えてたときに、ここ (一角) は昼は定食屋、夜は居酒屋がよいなあと思っていて、代々木上原にある (丸山さんの店) 「Lanterne」によく行ってたので、丸山君に「唐揚げとハイボールのある、昼は定食屋、夜は居酒屋みたいな店やりたいんだよね」って話をして、その話にのってもらって今日に至るって感じですかね。

▲ 居酒屋「一角」

————最初お話もらったときは丸山さんはいかがでした?

丸山: (今まではフレンチを軸に次々と店を創り上げてきたが) 日本のことをやりたかったので、居酒屋で。だから波長が合ったというか。

:海外の人からすると、居酒屋っていうのはもっともいろんなものを食べれて、いわゆる大衆的なもので、この形態も面白いし。日本人からすると、馴染みがあって居心地がよい。わかりやすくホッとする場所で、その両方が合わさってるものがよくて、だから居酒屋なんです。そこカオスにしたかったので、ここですごいおしゃれなレストランやっちゃうと、 (東京ミッドタウン日比谷内には) そもそも他にもレストランありますし、そういうんじゃないんだよなあって思っていたんです。

▲ 「一角」の夜メニュー

—————普通共存しないものがこの空間にありますよね。合わさってる編集感というか、他に無いですよね。

:たとえば地方に行くとアーケードとかあるじゃないですか。あれ謎で、なんでアーケードあるんだろうなあといつも思ってて。道だけ決まってて、テナントがデザインされてないから、印象がごっちゃごちゃじゃないですか。あれってもうちょっとうまくできると思っていて、それはダイレクションがないからだなと思っていたんですよ。ごちゃごちゃで床屋さんもあったり居酒屋もあったりこんな店もあるのに、共存させられるんじゃないかと思っていて。だから今回それにトライしてみたというところです。でもトリートメントされすぎちゃうとすごいつまんなくて、慣れてる人からすると「うまいこときれいに区画に整理したな」みたいなことになっちゃうんで。一番最初からフリーハンドですから、僕ら。道を先に作ったんですよ。子供がふたりで遊んでる想定で。道がまずできて、そこに区画を区切っていって、そこに僕が後からテナントを決めたみたいな、そんな作り方なんですよ。

丸山:村長なんです (笑)。

:どこにもない感覚にしたくって。でも (やりたいことは) 日本なんですけど、日本人のミックスカルチャーの感覚は世界でも飛び抜けてると思っていて、そういう意味でも日本らしく東京らしいんじゃないかなと思っています。

————「HIBIYA CENTRAL MARKET」には床屋もあればキヨスクもあって美味しいコーヒー屋があって、その編集感覚がすごいですよね。

: (HIBIYA CENTRAL MARKET内の) ひとつひとつはスペシャルな人たちに参加をお願いしているので、ありえないような化学反応がこの区画の中で起きたら面白いなと思っています。3/21なんかは (東京ミッドタウン日比谷の) ファミリーデイで人がたくさんいたんですが、海外の人なんかもいらっしゃってて、そこに日本の人もいて、家族づれもいて、お爺ちゃんお婆ちゃんもいて、人が入ることによってヴィジュアルが完成するんです。

▲ 理容「ヒビヤ」

————参加をお願いした人選はどうなされたんですか?

:わざとバラバラにしたんです。たとえばコーヒーだと、東京のおしゃれなコーヒー屋さんを入れるのもアリだったんですけど、今回お願いしたのは熊本で出会った人だったんです。熊本のコーヒー屋さんで。地方でこだわっている人けっこういて、そういう人たちを僕らの中に引き込んで、今までとまた違う面白さを出せないかなっていうのがあって、「AND COFFEE ROASTERS」さんにお声掛けさせていただいたりとか、眼鏡屋さんの人たちは一人は北海道で一人は神戸の人だったりとか。他にも地方のディーラーさんだったりとか。出すのは東京だけど、日本として世界の人たちが来たときに「こんな面白いところがあるんだ」と思ってもらえるような場所を作りたいと思っているので、今回はオールスターズで (笑)。

丸山:ははは (笑)。

:そこもセレクトさせていただいた。居酒屋の人に居酒屋 (作り) を頼んでも面白くないですよ。丸山君は安曇野出身だもんね?

丸山:そうです。

:それで丸山君がお蕎麦やりたいって言ってたから「蕎麦もいいね」って。ただ俺が好きなものがならんでる。 (丸山さんのような) フレンチの感覚がある人が居酒屋をやる方が、ミックス感がさらに増えて面白いし、その感覚って大事かなと思っています。

丸山:もうちょっとスペースがちっちゃかったら専門職の人とかがよかったかもしれないですね。

▲ 蕎麦定食

————でももう唐揚げとハイボールって鉄板で食欲に抵抗できないですからね。

丸山:「日本料理」じゃなくて「日本人料理」。日本人が好きでいろいろ取り入れて。なのでちょっとあしらえが違ったりとか。ごちゃ混ぜで日本人が作る料理みたいな感じで。日本料理になっちゃうと、割烹があって、引き算があって、って料理になるんですけどね。

————日本人料理ってなると本当にミックスだから、この場所ともシンクロしてるというか、それがこの「HIBIYA CENTRAL MARKET」の面白いところだと思います。そういう意味で「毎日来れる」ってコンセプトで「唐揚げ弁当」も出すんですよね?

丸山:唐揚げ弁当もやります。

:テイクアウトで。 (一角は) 昼間は定食屋さんになっているので。この場所で定食が食べれて。メニューもいろいろあって。

▲ 唐揚げ弁当

————サンドイッチもあるんですね。

丸山:サンドイッチも。

:鯖サンド。本来はトルコの料理なんだよね?

丸山:そうです。イスタンブールのファーストフードです。

:面白いよね。日本人って鯖にすごく馴染みがあるけど、実は鯖サンドはトルコ料理だった (笑)。

▲ 鯖サンド

————唐揚げがあってカレーがあって鯖サンドがあって、いいですよね。いろんな人のいろんな気分に合わせられますもんね。

:下手すればここに毎日来なきゃいけないような人もいるからね。

丸山:毎日おしゃれな店でランチってたぶんしないと思うんですよ。ここは肝っ玉母ちゃんみたいな店員さんもいて「メニューどうする?」みたいな。日替わりもあって。上の (東京ミッドタウン日比谷レジデンスの) 住民の人たちにも使ってもらいたいなあ。

:そこのいわゆるキヨスクのところは、わりかしそういう人たちがバーっと来て、『少年ジャンプ』買って、足んない文房具買って、弁当買って帰るとかって。

丸山:東京ミッドタウンとか商業施設でオフィスワーカーのためにやってるテナントって無いと思うんですけど。やっぱ外からのお客さんプラス上に住む人のための食堂でありたいですね。

:僕ら以外のお店の人たちは全員お客さんだと思っていますから。

丸山:ははははは (笑)。

:シール剥がしとか意外と売ってないぞ、とか。有隣堂さんとやったんでできたんです。文房具屋さんとか、いやゆる本屋さんとかやられてるので。僕らは『少年ジャンプ』の仕入れルート無いですから (笑)。じゃあ雑誌で『POPEYE』とかならべましょったって、いちいち編集部に電話するのかって言ったら、そんなのできないですから。そこ有隣堂さんはプロですから。

▲ キオスク

————新しい本屋のかたちという捉え方でも面白いですよね。本って微減し続けている業界で、でも街に本屋ぐらい何の用事もなく人が集まれる場所ってないんですよね。

:そこ本当に素晴らしいと思っていて、何を作るのにも人が集まる場所を作るっていうのが基本的にベースにあって、本って (人を引き寄せるような何かが) そこあるなあと思っています。ジャン・プルーヴェの展示やってて、ジャン・プルーヴェの本置いてて、本物と本が一緒に売られてることって基本的にないじゃないですか。本しかないじゃないですか。ジャン・プルーヴェのコーナーがあって、じゃあ実際にジャン・プルーヴェの本物がならんでるかっていうとならんでないので。ここで「本物ってこんななんだ」ってのを体験してもらいたい。ここに来れば体験できるんです。ポップアップでいろんなことをやっていこうと。食の方でもそういうの面白いかもねと。

丸山:いろんな人を呼んでやれたら、賑やかしという意味でも面白いかなと。たこ焼き屋さんに来てもらうとか、そのくらいカジュアルな感じで。ポップアップと言えばポップアップなんですが、屋台みたいな感じで。

————なるほど。屋台としての舞台を用意していると。

: (スペースを) 空けちゃえば全然空いちゃうから、なんでもできちゃうというか。

丸山:どう動かしてもいいし。

:フィックスしないのが面白いので。だから「MARKET」っていう。これが始まりでスタートなので、こっから僕らがいろいろ仕掛けていく中で、こういうバラバラになってるようなものをひとつにできたら面白いかなと思っています。文化的なこともそうだけど、衣食住とか全て含めてこの街の中に新しい感覚というか、僕らも予想しなかったことが起きると思っていて、僕らが気づいてないアイディアをくっつけられる可能性がある、それをいま手探りで探しています。今後、僕らに関わる人も増えるでしょうし、その中で新しいことが生まれたらいいなあと思ってるんですけどね。

————そんな予感がいっぱい感じられる場ですよね。丸山さんも代々木上原での展開からいきなり日比谷での展開で。

丸山:日比谷で居酒屋作るとは思ってなかったです (笑)。商業施設に入って、契約があって7年とか10年とかやっていく中で、洋物を真似して作っても続く気が全然してなくて。2年後にはそのスタイルのレストランに飽きてるし。真似ばっかりでなく、普遍的なものをやるべきだと思ったときに、こういう居酒屋だとずっとみんなに愛されるかなと。2年後に「変えたい」って言ってもなかなかできないじゃないですか。ここを本店にして他の直営店も作りたいですね。

:これをパッケージにしてもよいよね。ここだったら、海外の人を連れて来てもみんな喜んでくれるかなって。日本のものを海外っぽく作って、それを海外の人に見せても、「なにこれ日本人が真似したやつでしょ」みたいな感じになるじゃないですか。ここは完全にオリジナルなんでね (笑)。

————その両方のマーケットを見据えて新しく立ち上げるって一番難しいことだと思うんですけど、それをすごく鮮やかに見せてもらったなって感じはしますね。

丸山:昨日お爺ちゃんが (一角で) すごいテンション上がってて。若い子じゃなくてお爺ちゃんを感動させられたことがよかったです。「赤玉あるね」みたいな (笑)。それがすごい嬉しかったですね。お客さんに来てもらって喜んでもらうの好きなんだなって、改めて思いましたね。

:そうだよね。

————ここは客層も幅広いですし、これからの展開も楽しみにしています。

人が集う場として本屋が持ってるポテンシャルを新しい形で提案するスペース。老若男女に関わらず新しいコンセプトで提供される食、これから日比谷に出かけるのが楽しみだ。

南貴之
1976年生まれ、クリエイティブ集団「alpha.co.ltd」の代表。様々な店舗デザインやディレクションを担当。キュレーション型ギャラリーのようなセレクトショップ「Graphpaper」や、モバイル型コンセプトショップ「FreshService」等、次々と手掛け、2018年3月29日には東京ミッドタウン日比谷の3階フロアに複合型店舗「HIBIYA CENTRAL MARKET」をオープンさせる。
http://alpha-tokyo.com

丸山智博
1981年生まれ、長野県安曇野出身。かつて神宮前にあったフレンチ「ラミ・デュ・ヴァン・エノ」勤務後、代々木上原にビストロ「MAISON CINQUANTECINQ」を開店。以降、「Gris」「Lanterne」「9STORIES」「Bar à vin MAISON CINQUANTECINQ」「AELU」と次々に展開。2018年3月29日には東京ミッドタウン日比谷3階「HIBIYA CENTRAL MARKET」内にて「一角」をオープン。フードコーディネーター、メニュー開発、ケータリング等、様々な活動を精力的に続ける。RiCE.pressのキュレーター「RiCE PEOPLE」のひとりでもある。

HIBIYA CENTRAL MARKET
住所: 東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷3F (日比谷駅より徒歩3分)
電話: 03-6205-7894
時間: 11:00〜21:00 [店舗スペース]、11:00〜23:00 [飲食スペース]
URL: https://hibiya-central-market.jp

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