
連載「丼 ── 魅せる『文様』、もてなす『構造』」#2
装飾としての丼②
器によって料理の印象はガラリと変わる。特にラーメンは基本的に丼ひとつで完結することが多く、料理を映えさせる役割を超えて、店の“顔”になるケースも多い。「この丼を見ると、あの店を思い出す!」「この丼を見ただけで、あの時の感動がそのまま蘇ってくる!」といったように、ラーメンと必ずセットで語られる、味にとっても体験にとっても欠かすことのできない名脇役なのである。
自分が好んで通っている店がどんな丼を使っているのかを知ることは、味だけにとどまらない自身のラーメン体験を紐解く鍵となるはずだ。
前回はクラシックな“中華”を表す文様を取り上げたが、今回はそれ以外の馴染み深い柄について整理していこう。

特に「唐草文様」に親しみがある人も多いのではないか。もともとは古代ギリシャの文様で、それがメソポタミア文明、エジプト文明を経てシルクロードを渡り、中国を経て日本へと伝わったものだ。草木や花をモチーフにした図柄は世界中に溢れているが、和洋中いずれの料理にも合う、世界的にスタンダードな柄と言えるだろう。それゆえ細分化も進み、葡萄唐草や忍冬(にんどう)唐草など、建造物や装飾品に用いられるものから、食器にしっくり馴染むものまで多岐にわたる。

その中で、日本で独自に発展した唐草文様が「蛸(タコ)唐草」であり、江戸時代に伊万里焼などで普及していった。蔓(つる)が渦を巻き、葉の形がタコの足の吸盤に似ていることから名付けられたと言われている。繁栄や長寿を象徴する吉祥系でもあり、ラーメンだけでなく、うどんなどの丼にあしらわれることも多い。

また「十草(とくさ)」も、ラーメンだけでなく日本蕎麦の丼として馴染みがあるし、花(桜など)や和草をモチーフにした「錦柄」に親しみがある人も多いだろう。吉野家の牛丼の器(有田焼)のような柄、といえば伝わるだろうか。1912年に人形町で誕生した大勝軒も、本店や系列店では同様の小ぶりな錦柄の丼を使用していた。
柄といえば「どこに入るか」もポイントで、丼の外側なのか内側なのかによっても印象と役割がだいぶ違ってくる。丼の外側は「胴」、内側は「見込み」と呼ばれるそうだ。「胴」に描かれる柄はまさに装飾で、器としての外装の見栄えを良くする。逆に「見込み」に描かれる文様は、食べる人を常に楽しませる役割を果たす。さらに言えば、最近は俯瞰から写真を撮ることが増えた。その際、「見込み」の柄はまさにラーメンの顔となるのだ。
その「見込み」の柄が発展したものが、店名入りの丼だと言えよう。もともとは出前に行った食器がきちんと店に返ってくるための名入れだったと言われているが、今では写真を撮ってSNS等に投稿してもらう際の「最高の宣伝」へと役割を変えている。デザインが機能を果たすようになった典型例と言えるだろう。

- ラーメン考古学者 / Ramen Archiver
渡邊 貴詞 / Takashi Watanabe
IT、DXコンサルティングを生業にする会社員ながら新旧のラーメンだけでなく外食全般を食べ歩く。note「ラーカイブ」主宰。食べ歩きの信条は「何を食べるかよりもどう食べるか」
note.com/takashi_w/
instagram.com/acidnabe/<
Takashi Watanabe
Takashi Watanabe 
Ayaka Hironaka 
Youta Kondo 
Sakurako Nozaki 
Hiroyuki Aoyama 
RiCE.press 















