連載「名店のシグナル〜 一段上の食べ歩き論 〜」#1

ラーメンメディアの行間を読む技術①


Takashi WatanabeTakashi Watanabe  / Jan 7, 2026

新シリーズはラーメンの食べ方にフォーカスしてみたい。

「何を食べるかよりも、どう食べるのか」

は筆者、食べ歩きの信条でもある。ただ、ひとくちに「食べ方」といっても、どういった作法で食べるのかという単独のイシューではなく、食べ歩き全般に渡るいくつかの形を提示してみたい。

12回はラーメンメディアの読み方について。

食べ歩きの指南となる本やテレビといったメディア。現在、最新の情報収集のツールはネットに移り変わり、いずれAIがパーソナライズドされた情報を集めてくるだろう。雑誌やテレビなどの他のメディアは、すでに別の役割を果たしている。その伝え方や影響力、もしくは求められるものは、時代とともに変化しているが、食べ手側は、それらの中からいいとこどりができるため情報は多層化し、それを使い分けているとも言え、また食べ手の(年齢などの)レイヤーによって、美味しいラーメンに出会うメディアが異なっているとも言える。

ただ、同時に情報が溢れ、飽和しているともいえる中で、自分らしい食べ歩き、感じ方を失わずに食べ歩きを楽しむためには。それが今回のテーマである。

まずは、ラーメンとメディアの関係を簡単に振り返ってみたい。時系列にまとめてみる。

◆ラーメンメディア黎明期(1900年~1950年)
評論やガイドではなく、広告や調理法を伝えるテキスト新しいラーメンという料理の日本国民に紹介するという純粋な情報伝達と教育

◆評論家、専門的論評の先駆者たちの登場(1950年~1970年)
食文化全般を扱う文筆家や文化人たちの発信単なる一次情報からキュレーション(推奨)への移行

◆ガイドブックの時代へ(1970年~1980年)
ガイドブックの登場。住所、電話番号、簡単なメニューといった最小限の情報散発的なエッセイから、消費者向けの体系化された情報フォーマットへの移行

◆テレビの時代(1980年~)
近代的なメディア(テレビの影響力)主導型ラーメンブームが起こる一夜にして社会現象を巻き起こすことができ、また他メディアが追随するため自己増殖的な熱狂サイクルの誕生

◆雑誌・ムックの増殖と黄金時代(1990年代後半~)
ラーメン消費の「バイブル」としての地位を確立新店舗特集、トレンド分析、ランキングの登場によりラーメン業界の産業化を促す

◆デジタル・ディスラプションと「集合知」の時代(2000年代〜)
ブログ、個人サイト、大規模口コミデータベースの普及情報の主導権が特定の評論家から個人の「集合知」へと民主化。誰もが発信者・批評家になれるボトムアップ型モデルへのパラダイムシフト。

◆ソーシャルメディアと視覚優位の時代(2010年代後半〜現在)
Instagram、YouTubeなど視覚主導のプラットフォームの隆盛視覚的インパクト(映え)や拡散力が盛り付けや店づくりを規定。メディアの特性がラーメン自体の設計思想を左右する、より深い相互共生関係の構築。

 デジタル時代において消費される「情報」は、前述の通り、多層的である。それは、口コミサイトの点数、評論家の称賛、Instagramの「いいね!」の数、店主の修行先の物語、そして使用されている食材が希少である、あるいは高価であるという知識など、あらゆる要素を含む。

この結果、食事体験が、純粋な感覚的評価ではなく、事前に消費した情報を追認するだけの「確認作業」になってしまうことがある。食事は、もはや舌の上だけで行われるのではなく、情報で満たされた頭の中で完結するプロセスへと変貌しつつあるのだ。

 一方で、食べ歩きの目的は何か?というテーマも浮かんでくる。

この記事を読んでいる熱心な食の探求者たちは、その目的が多岐に渡ることを十分に知っているだろうが、あまり食に関心のない方からすると、え?美味しいものをいろいろと食べてみたい、ってことじゃないの? それ以外あるの?と思われるかもしれない。

もちろん、根っこの部分ではそうなのだが、タイプは様々だ。最新の情報が欲しい(発信したい)人、いわゆるミーハーな人。知的好奇心に突き動かされて、「知る」ことがメインな、別の意味で情報が欲しい人。SNSなどに投稿して、いいね!を得ることで承認欲求を満たしたい人。等々。

純粋に黙々と自分の舌を満たすために食べ歩きをしているサイレントマジョリティは、それら情報の受け手側というわけだが、いずれにせよ、メディアを「使って」食べ歩いている。だが、目的が多様化されてしまったメディアのオススメやバズりに騙され、傷ついた人たち、最新の情報を追うことに飽きてしまった人たちが多くいることだろう。

 次回、一段上の「ラーメン食べ歩き術」を語っていきたいと思う。

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