美味しい惣菜が食べられる衣食複合店舗

食とスタイルが “回遊” する世田谷[CAILO]


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 23, 2025

1F|惣菜民味──朝から夜まで寄り添う惣菜屋
2025年6月に東急世田谷線・上町駅近くの世田谷通り沿いにオープンした[CAILO]。衣食複合店舗として朝9時から夜22時まで営業し、時間帯ごとに異なる表情で地域の日常を支えている。

店に入るとまず目に飛び込んでくるのは、大きな丸太の上に設えられたショーケース。そこには、その日に用意された惣菜がずらりと並んでいる。揚げ物、炒め物、和え物など、彩り豊かな料理が目の前に広がり、思わずどれにしようかと悩まされる。惣菜を選ぶ時間そのものが、この店の大きな楽しみのひとつだ。

ショーケースに並べられた惣菜。取材の日は「カボチャとベーコンのクミンサラダ」「しょうゆ麹としょうが麹のゴーヤーチャンプルー」「切干大根とエリンギとキクラゲのカボス和え」「揚げなすニラタレ」「明太子とミツバの春雨サラダ」「えのきの唐揚げセリジェノベーゼ」「にんにく醤油豆乳マヨ唐揚げ」「自家製ラー油の味噌キーマ」のラインナップ。

この惣菜をつくっているのは、「惣菜民味(そうざい・たみ)」の店主・千竈(ちかま)民子さん。かつてはアパレルの世界で働いていたが、料理好きが高じて独学でケータリングを始め、実店舗を構えるに至った。今も子育てをしながら日々カウンターに立ち、温かな笑顔で迎えてくれる。その姿もこの店の風景に自然に溶け込み、惣菜民味の魅力を形づくっている。

接客と子育てを同時にこなす千竈さん。その姿もまた、惣菜民味らしい風景のひとつ。

「メニューはなるべく旬なものを使いたいなと思っているので、定期的に変えています。あとはお惣菜なので、毎日来ても飽きない。食べごたえはあるけど、食べやすい味付けを意識しています」と千竈さん。

人気メニューは、その日の惣菜を少しずつ盛り合わせた「惣菜ぜんぶ盛り」。ライスをつければスープが付いて、定食のように楽しめる。 その日の惣菜 をワンプレートで丸ごと楽しめ、食べ応えも抜群。

惣菜ぜんぶ盛り(¥1,200)にライス(¥300)を追加してワンプレートに。メインの惣菜は1種類。ライスにはスープも付く。

もちろん、惣菜単品でも注文が可能。軽く飲みたいとき、ガッツリ食事を楽しみたいとき、お好みでカスタムを楽しむことができるのもうれしい。また、時間帯ごとに違う顔を見せ、日常のさまざまなシーンに寄り添う。朝はご飯と惣菜を合わせて “朝ごはん” に、夜はナチュールワインやビールとともに“おつまみ”として。そんな楽しみ方もおすすめだ。

入り口入ってすぐの棚には国内外からセレクトされたワインやビール、焼酎のほか、小物がセンスよく並べられている。
スイーツはイベント出店などで人気のGOOD BYE BAKEが提供。 写真は「酒粕チーズケーキ」と「パッションフルーツチーズケーキ」。

内外装の設計・施工を手がけたのは、建築家とグラフィックデザイナーのユニットでヴィンテージの衣装、家具、雑貨を販売する店舗を営む「LAF」。「お惣菜だからこそ、盛り付けのプロセスを見てもらえるようにカウンターに高い台は設けなかったんです。色とりどりのお惣菜を目の前で盛り付ける方が、食べる側としても気分が高まるはず」とLAFの山越裕之さん。店主の千竈さんとも何度も話し合い、“料理のライブ感” を大切にした空間が形になった。

大皿からていねいに取り分けられる惣菜。旬の味を少しずつ集めた“全部盛り”は、その日の惣菜民味をまるごと味わえる一皿。

さらに「千竈さんはとても明るい方。だからこそ分け隔てなくフラットに接客できるよう、家の台所の延長線上のような空間を意識した」とも。人懐っこい世田谷という街の空気と響き合い、誰でも自然になじめる場所になっている。

高知県産の大木をチェーンソーで成形したLAFオリジナルのスツールは移動可能。最大15席ほどあり、カウンターでひとり時間を楽しむのも、動かして仲間と賑やかに囲むのも良し。

螺旋階段──「回廊」としての象徴
店名「CAILO」は「回廊(かいろう)」に由来している。1階の惣菜と2階のアパレルをつなぐこの階段は、単なる動線ではなく「食から衣へ、衣から食へ」と人を循環させる仕掛けだ。ぐるぐると上り下りする過程そのものが、この店の体験を象徴しているのだ。

CAILOの象徴である螺旋階段は、もともと建物の奥にあったものをあえて手前に配置。街と店の人の動きをつなぐ“回廊”として機能している。

2F|国内外からセレクトしたアパレルと小物の空間
螺旋階段を上がった先には、アパレルのフロアが広がる。セレクトされるブランドは O-、gourmet jeans、crepuscule、Marvine Pontiak shirt makers、bagjack、Homeless Tailor、HEALTH、COTTON PAN、bocodeco、GA SA TANG など。ギミックが効いたドメスティックブランドを中心にセレクトしているほか、古着も扱っている。またヴィンテージのものから作家ものまで小物類も充実。定期的に入れ替わり、常に新しい発見があるよう工夫されている。

惣菜の香りが漂う1階から見上げると、螺旋階段の先に服が並ぶ ──CAILOならではの “食と衣の回遊” がここにある。
洋服に加え、古物から若手作家のアイテムまで並ぶ2階フロア。古物は設計施工したLAFがセレクトしたものも並び、暮らしにさりげない刺激と彩りを添えてくれる。

オープンから数ヶ月が経ち、多くの人が訪れている。入口のショーケースに並ぶ惣菜に心を躍らせ、千竈さんの温かな接客に迎えられ、目の前で盛り付けられるライブ感にワクワクする。そして螺旋階段をぐるぐると上がれば、暮らしを彩る服や小物と出会える──その循環こそがCAILOの核。「食があるからこそ、ふらっと立ち寄れる。今日は惣菜を持ち帰ろう、そのついでに2階ものぞいてみよう、と自然に足が回遊する店を目指しているんです」と店長の上小家 翔貴さん。

惣菜と服にとどまらず、展示やイベントの舞台にもしていきたい」とCAILOの可能性を語る上小家さん。

その言葉通り、日中は老若男女、地元の方を中心に和やかな雰囲気が流れている。夜は服好きの若者たちが集まり、食を楽しみながらファッション談義に花を咲かせる。街の空気と人の温度を映し出すこの場所は、世田谷らしい暮らしの風景を育んでいる。

「長く続けられる場所にしていきたい。地元の方々に愛されるのはもちろん、地方からも人を呼び込みたい」。CAILOはこれからも“回遊”をキーワードに、街と人をつなぐ拠点へと育っていくはずだ。

CAILOの外観。階段をモチーフに”回廊”をイメージしたロゴもLAFが手がけた。正面の大きなガラス窓からは惣菜や服がのぞく。街と店が自然に交わる風景をつくり出している。

(店舗情報)
CAILO
住所:世田谷区世田谷1-21-8
営業時間:
1F 惣菜民味 9時~22時
2F CLOTHING 11時〜20時 
※日曜 12時〜20時
月、火曜休
IG @cailo_store/

(クレジット)
Photo by Taro Oota(写真 太田太朗)IG @taro_oota
Text by Shingo Akuzawa(文 阿久沢慎吾)

WHAT TO READ NEXT

RiCE編集部からお便りをお送りしています。

  • 最新号・次号のお知らせ
  • 取材の様子
  • ウェブのおすすめ記事
  • イベント情報

などなど……RiCEの今をお伝えするお手紙のようなニュースレターを月一回配信中。ご登録は以下のページからアドレスとお名前をご入力ください。

ニュースレターの登録はコチラ
PARIYA CHEESE STAND Minimal Bean to Bar Chocolate
BALMUDA The Kitchen
会員限定の最新情報をいち早くお届け詳しく