
シティライツ・レストラン
011「名ばかりの処暑を払拭する端正な冷やしカレー蕎麦」
この日は8月も最終日。こんなにも数多く「残暑が厳しい」と口にした夏は過去になかったと思います。今週末は特に予定が入っておらず、土日のどちらかは20キロくらいゆっくり走ろうと思っていたのですが、土曜日も日曜日も10キロ少し走ったところで体がSOSを発し、帰宅せざるを得ないほどに、まだ夏の終わりが見えてきません。
今週は月曜日に会社のメンバー6人で[赤垣屋]さんへお邪魔し、その時に「やっぱり赤垣屋はカウンターで飲みたいな」と思い、木曜日に予定していた友人との約束も[赤垣屋]にしました。その木曜日においてはカウンターで飲めたにも関わらず、「やっぱり赤垣屋は1人飲みに尽きるな」と感じ、次の日の金曜日に1人で行ってしまった始末です。
土曜日には朝のランニングを済ませた後、赤垣屋の若大将が営む[ザコトラ商店]にも行ってしまい、流石に好きすぎて自分が恥ずかしくなったほどでした。走ってお酒を飲み、走ってお酒を飲み、飴と鞭を繰り返された今日の僕の体は、[そば処 松庵]の夏メニューである「冷やしカレー蕎麦」を無性に欲していました。
ささっと冷水シャワーを浴び、扇風機の前で体の冷却を済ませると、体が欲するものを素直に摂取するため、家から北上するバスへ乗り込みました。平日は毎日オフィスへ南下していくのに対し、真逆の方向へ進んでいく今日はいつにも増して休日感に満たされています。
京都は日曜日定休のお店が多い中、[そば処 松庵]は日曜日も営業しているという事が、足しげく通ってしまう理由の一つな気もします。また、季節がいいときは食後の散歩も兼ねて上賀茂神社まで歩き、心身共に幸福感に満たされる少し贅沢なお出かけになるのですが、この日はまだ残暑が猛威を振るっているため断念。
バスに揺られること20分。神光院前のバス停で降り、ほんの数分歩けばすぐに着きます。
控えめなお店構えがどこか愛らしく、落ち着きを感じます。入り口そばにある本棚にはあまから手帖や家庭画報が並べられ、この辺りからもお店の雰囲気が伝わってきます。
お志ながきには様々な種類の蕎麦が書いてあり、季節のメニューは壁にかかった黒板やメニュー紙に手書きで記載されています。
複数人で来る時は鶏山椒焼きやだし巻きを頼み、蕎麦前を楽しみながら蕎麦に進んでいくのですが、この日は1人で来たこともあり単品勝負。
いつも蕎麦を目当てに来ているのですが、メニューを見ると丼物も気になってしまい、この日はハモ天丼に心を持っていかれそうでした。ただ、ランニングが終わった時の自分の声に従い、お茶が運ばれてくると間髪を入れずに、冷やしカレー蕎麦大盛りとお冷を頼みました。大盛りはプラス100円。
5つのテーブルが有るこぢんまりとした店内はすぐに満席になり、1名客が僕を含め3組、2名客が2組で、皆さん思い思いの時間を静かに過ごしておられ、店内に品性すら漂っていました。またの機会にお酒好きな友人と来て、蕎麦前を楽しみながら焼酎や冷酒を昼から引っ掛けるのもいいな、なんていう妄想を抱き、その時に何を注文するか勝手に作戦を練っていると、お目当ての蕎麦が運ばれてきました。
最近の京都は街中のお蕎麦屋さんへ行くと高確率で海外の方がいて、彼らは日本人特有の蕎麦を啜る音が苦手だと聞くので、いつも彼らの気持ちを鑑みて音を立てて麺を啜ることを控える自分が出てきます。
しかし、今日は中心地から上賀茂まで北上し、店内には日本の方しかおらず、カレー蕎麦なので洋服に飛ばさないよう細心の中止を払いながら、勢い良く蕎麦を啜っていきます。空っぽの胃の中にカレー蕎麦という力強さのある麺類を入れ込み、体全体に勢いよく栄養が回っていく躍動感が伝わってきます。
カレー蕎麦というのは蕎麦の香りや味を楽しみづらいという点では邪道とも思えますが、カレー系の麺類というのは無性に食べたくなるタイミングがあります。カレー蕎麦やうどんというと冬の寒いときに食べる体を温めるメニューという印象もあるのですが、それを冷やしで、しかももたつかずさっぱりした夏らしい味わいで食べられるのが堪りません。
ここの冷やしカレー蕎麦は麺の上に乗せられた鶏肉やそぼろ肉の甘味が徐々に汁に溶け込んでいき、スパイスを効かせたカレーで発汗作用が呼び起こされることもなく、夏でも安心して楽しめます。汗っかきには堪らないほど、優しさと冷たさが共存した逸品なのです。最後は残った汁を蕎麦湯で割り、少し温かくなった身体にお冷を流し込み、ご馳走様。
1,265円ちょうどを支払い、上賀茂神社へ足を伸ばさなくとも少し気持ちがよくなった昼食でした。
この良い流れを維持して、アーセナルファンとしてとても楽しみにしている今晩のリバプール戦も勝ってもらい、最高の気分で週の始まりを迎えたいところです。
ちなみにその試合は0-1で敗北しましたが、落ち込むことなく前を向いて行こうと自分に言い聞かせ、新たな一週間を迎えました。
そば処 松庵
京都府京都市北区西賀茂坊ノ後町16-3(Google Maps)
11:00〜15:00/17:00〜20:00
水定休
IG @shoan_soba
- Naru Developments
上沼 佑也 / Yuya Uenuma
1995年生まれ、埼玉県出身。中学から都内の学校に通っていたこともあり、約15年間は東京で時間を過ごし、2022年10月より京都へ移住。明治大学とカリフォルニア州立大学へ通い、卒業後はコンサルティングファームに就職。その後、Insitu(現Staple)に入社し、ホテルや飲食店、Coffeeブランドの立ち上げなどを経験したのち、Naru Developmentsに転籍。現在は旅館の企画開発や運営に携わる。趣味は食べ・飲みに加え、ランニング(太らないために)とサッカー(アーセナルファン)。湯呑や椅子などをはじめモノ好きで、リサイクルショップのオンラインストアをチェックすることが日課になっている。