水野仁輔のスパイストリップ

「遅れてやってきた冷麺の味」 in 韓国・ソウル


Jinsuke MizunoJinsuke Mizuno  / May 29, 2018

ムルレンミョンとビビンネンミョン

冷麺に大きくふたつの系統があることを知ったのは、韓国に行ったときのことだった。

いや、本当はもっとたくさんの系統があるのかもしれないけれど、朝鮮半島の冷麺は、平壌発祥の “ムルレンミョン” と咸興発祥の “ビビンネンミョン” の2種類があるそうだ。ムルが「水」という意味で、ビビンが「混ぜる」という意味であることから想像がつく通り、ムルレンミョンはスープに麺が浸った状態のもので、ビビンネンミョンは言ってみれば、汁なし冷麺といったところだろうか。

AIR SPICE (レシピ付きスパイスセット) を引っ提げて韓国にイベントをしに行ったことがある。ソウルのシェフたちとコラボレーションでスパイスカレーを作った。そのときにたまたま会場にとある日本の女性誌の編集者が顔を出してくれた。初対面の彼女とあれこれ話をしてみると、取材で滞在しているのだという。

「明日は冷麺を何軒も食べ歩く予定なんです」

「へえ! 楽しそう!」

「いらっしゃいますか?」

「いいんですか?」

「一人で食べるの、大変だから」

多くの料理雑誌の編集者がリサーチや取材であちこちの店を回り、胃袋の限界と戦いながら仕事をしていることを僕は知っていたから、お言葉に甘えて食事のお手伝いに、と同行することに。翌日は、予告通りの冷麺三昧だった。

カメラマンが撮影し終えた冷麺を片っ端から食べた。どれも個性的でおいしかった……、はずなのだが、どうにも記憶が曖昧だ。それよりも何もしないのに効率よく人気店の冷麺を食べまくっていることへの自戒の念を思い出す。こういうものも後味というのなら、僕はうまいのにまずい不思議な冷麺を食べたことになる。それは誰のせいでもなく、僕のせいである。

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