水野仁輔のスパイストリップ

「紺碧の海に浮遊する上海料理」 in 中国・上海


Jinsuke MizunoJinsuke Mizuno  / May 3, 2018

「青地に料理」は憧れの組合せ

青が料理をおいしく見せる色であることを僕はとっくの昔から知っていた。10年ほど前だろうか、インドで買ってきたゴア料理の小さな専門書のスタイリングが独特かつ大胆だった。確か鶏肉を丸焼きにした料理がブルーの皿に乗っていたのだけれど、その皿の奥、遠くには同じ青色の小さな車が映り込んでいるのである。あれを見て以来、「青地に料理」は僕にとって憧れの組合せになった。

上海を旅したとき、現地在住の編集者が「おいしい上海料理はここなのよ!」と連れて行ってくれたレストランがある。名前も場所も憶えていない。というよりも、あえて憶えたりメモしたりしないことにしている。忘れてしまったら行かなければいいし、どうしても行きたくなったら彼女に連れて行ってもらえばいい。僕にとって店の情報はそのくらいライトなものだ。

同じ理由から都内での食事は写真も撮らないと決めている。ただ、地方や海外に行くと誘惑に負けて撮りまくってしまう。そのたびに「まだまだ修行が足りないな」と思うのだけれど。

できるだけ記録という作業を避けて食事をするのは、別のことで印象深く脳裏に焼きつけておきたいと思っているからだ。たとえば、あの紺碧のクロスにのった白い皿。その上の色とりどりな料理の華やかさと味わい。紺碧のクロスはまるで深海のようで、料理はその  “海の上” を浮遊しているかのようだった。

そうか、だから “上海” 料理なのか! いや、絶対にそんなはずはないのだけれど、僕にとっての上海料理はあのテーブルの上に凝縮されていたと今でも思う。

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