
連載「一年住んだらコスタリカ人になれるか」#2
記憶をつなぐチキンスープ
いつも朝7時くらいから、いいにおいがしてくる。
ぼくが借りている部屋はふきぬけの2階で、キッチンでホストマザーのイネスが朝ごはんを作り始めると、すぐわかる。玉ねぎやセロリを炒めたり、パクチーのフレッシュな香り。

何かあると下から呼ばれる。これは早くごみを出せと言っている。笑
ぼくはよく朝ごはんを分けてもらっている。

卵やチーズの乗ったトースト、ピリ辛のスープに浸して食べるエンパナーダ、フリホーレス(豆、あんこみたいにしてある)の包み焼き。


コーヒーはコスタリカ流のネルドリップで。
ある夜、0時過ぎたくらいに、いつものにおいがした。
あれおかしい、誰だろう。上からのぞくと、いつも9時には寝てるイネスの姿が。仕事を止めて思わずキッチンに向かうと、大きなキャリーケースを持つ男性がきていた。
「ダミアン」というぼくよりも二回りくらい年上の男性で、話を聞くと30年前に留学生としてこの家に住んでいたという。わお。
今はアメリカに住んでいて、コスタリカの海沿いにもお家があり、こっちに来るときは必ずイネスのところに一泊するのだそう。
そう、イネスはダミアンのために、30年前から大好物だったチキンスープをつくってあげていた。

料理中の背中をこっそりパシャリ。
これがコスタリカの母、レジェンドイネスのレジェンドたる所以である。
ダミアンは夜もその次の朝もチキンスープをたっぷりたいらげて、イネスにお土産のコーヒーの大袋を渡して元気に海に向かっていった。
そのあとぼくもそのスープをわけてもらった。
めちゃめちゃうまかった。
鶏と野菜のうまみがじわ~っと身体にしみわたって、シンプルな味付けなんだけど奥行きがある感じ。うまい……
イネスから。
「一番のアドバイスは、愛情を込めて調理することです(笑)。 鶏肉は骨付きの胸肉を使うと旨味がしっかり出ます。玉ねぎ、ピーマン、ニンニク、パクチー、ローリエ、オレガノと一緒に炒めます。鶏肉から旨味が出てきたら、野菜を加えるとさらに美味しくなります。完熟トマトをすりおろして加えましょう(刻むのではなく、すりおろすのがポイントです)。最後に塩と黒コショウで味を調えてください。」

味とか香りは、記憶を閉ざさずに繋いでいく役割があるとおもう。
小さいころ兄弟で包んだ餃子や、午前授業のあと早く帰って食べたキーマカレー、サッカーの試合でゴールを決めた後に食べたすき焼き、受験勉強の間のけんちん汁など。
母のつくる料理のパワーをふと思い出す瞬間でもあった。
そういえば、大学時代はじめて中南米にわたった時も、同行する方に「変なにおいのするせっけんを持っていった方がいいよ。」と言われた。「日本に帰ってきて、同じせっけんをまたお風呂で使う。その瞬間、旅行の思い出が一気によみがえってくるから。」
なるほど〜!日本で思い出すために、変なにおいを持っていく。逆転の発想すぎて目から鱗だった……。
と言いつつ今回もってくるのを忘れちゃったのだが……笑
とにかく、この一年でどれだけ「思い出したい」味やにおいと出会えるか、とても楽しみになってきた。
次回は、エレディアでの一か月の滞在を終え、いよいよコーヒー農園へいきますよ。

イネスとパクチーとぼく。酔っぱらっている。

- Coffee Traveler
佐々木 奎太 / Keita Sasaki
1997年、福島生まれ仙台育ち。大学時代、コーヒーの奥深さや、それを取り巻く環境すべてに興味を持ち始め、中南米諸国のコーヒー農園を巡る。その後、コーヒーの焙煎や大会出場の経験を生かし、フリーランスとしてコーヒーの出店をはじめる。2022年より、株式会社The Youthが運営する六本木[Common]にて店舗マネージャーを4年ほど務めた後、2026年5月より再びコスタリカへ。
IG:@tamakei9
Keita Sasaki
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Yuki Higuchi 
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