新時代を切り拓く食のクリエイターを発掘
「RED U-35」のグランプリ&ファイナリストをご紹介!
11月16日(火)、日本最大級の若手料理コンペティション「RED U-35 2021 ONLINE」のグランプリ“RED EGG”が発表されました。見事、次なるスターに選ばれたのは六本木のイノベーティブレストラン[Ichii]でシェフを務める堀内浩平氏です。
ここでは堀内浩平氏に加え、準グランプリに選ばれた日本橋、DDD HOTEL内[nôl]ディレクターの野田達也氏、長崎県島原市のガストロノミー[Pesceco]オーナーシェフの井上稔浩氏、[ベトナム料理とワイン CHILAN]オーナーシェフのドグエンチラン氏を、1次審査で提案された料理と共にご紹介します。
「RED U-35」とは?
「RED U-35(RYORININ’s EMERGINGDREAM U-35)」は、夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(クリエイター)を見いだし、世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の食業界の総力を挙げて開催している料理人コンペティションです。36歳以下(※)の若手料理人の発掘・応援を目的としています。
(※前回大会中止に伴う特別措置として、例年は35歳以下のところ、36歳以下を対象とします。)
今年6月に募集が始まった本大会は、総勢508名が応募。1次審査では自己PRと共にテーマである「未来のための一皿」のメニューを提案し、2次審査では提案した「未来のための一皿」のメニューを映像で表現、3次審査はオンライン面談が行われ、審査員が食べてみたいと思う料理、会ってみたいと思う料理人を選出しました。最終審査では、家庭でできる「未来のための一皿」を新たに考案、調理人にオンラインで指示しながら料理を完成させる「リモートクッキング審査」が行われ、伝える力が審査されました。
未来のための一皿
今年の大会テーマは「未来のための一皿」。料理人として考える「未来のための一皿」とは何か? 未来に向かい、私たちはどう生きていくべきか? 料理人にはどんな使命があって、何ができるのか? 2021年をきっかけにどんなレガシーを残せるのか? 出場者にはテーマを自由な解釈で受け止め、世界が唸る表現とメッセージが求められました。
グランプリ“RED EGG” 堀内浩平[Ichii]
▲堀内浩平「芽吹き」
「今回のテーマでまず頭に浮かんだのは、大切な家族と自分の未来です。私は出身地である山梨県の風土や自然、生産物の魅力を世界の人々に伝えるレストランをソムリエの兄と作りたいと考えています。それは自分達の夢でもありますが、いつもお世話になっている生産者さんへの感謝や、支えてくれる家族の幸せに繋がると信じています。
今回の料理にはそんな未来への希望を表現しました。黒い球体は生命を感じさせる卵や惑星を連想させ、黒色にすることで不穏な気配を、不自然な割れ方で突然訪れた悪い出来事を表しています。
しかしそんな困難な状況でも土、新芽、花、実などの命が芽吹き、新たな希望が生まれる一皿にしました。食料問題、フードロスなどを考え、食材は切り落としの鹿肉と野草を中心に組み立てています。調和のとれた五味すべてを感じる味わいに多彩な食感と香りで仕上げています。多様な価値観が認められる豊かな世界を願った作品です」(堀内)
「自然、造形、インスピレーション」を料理のスタイルにする堀内浩平氏。山梨県の魅力を伝えられるよう、食材だけでなく、お皿も山梨県の作家さんのものを使用しているのだとか。現在は[Ichii]でシェフを、今後はソムリエである兄と共にお店を開く予定ということで、これからの活躍が期待されます。
アクセス :東京都港区西麻布3-1-22 サイビル2F
昼営業 :11:30~14:00(土日・祝日のみ)
夜営業 :18:00~22:00(最終入店時間20:00)
~21:00(最終入店時間19:00 土日・祝日)
定休日 :月曜日
準グランプリ“GOLD EGG” 野田達也[nôl]
▲野田達也「畑を食べる」
「初挑戦した6年前、美味しさとは? 何のために料理をしているのか? 自身を深く掘り下げ幼少期の記憶にあった祖母の糠漬けを軸に、父の畑で育った野菜を使い創作した料理です。今も作り続けており自身を確認する指標にもなっています。
漬けると栄養価を上げ乳酸菌豊富な食材へと変化させる妙法。原料は玄米、水、塩のみ。糠漬けに限らず、日本独自の四季と各地の風土が生み出した多様な漬物文化とそこに紐づく素晴らしい知恵に学ぶべきことが数多くあると感じます。未発展の時代に育まれた知恵だからこそ、これからの時代に向けたヒントや豊かさの本質があると思います。
その土地や人を知り、寄り添い、感謝することで足るを知る。美味しさや幸せの捉え方で人生の価値は、大きく変わるのではないでしょうか。料理人として私は、そんな気付きのきっかけとなるような心の食事を作らなければと思います。これが私の考える『未来のための一皿』です」(野田)
「愛情」を料理のスタイルにする野田達也氏は、昔の知恵を大切にし、人々に寄り添った一皿を提案。現在はフリーランスの料理人として各地で活動する傍ら、日本橋馬喰町「DDD HOTEL」の一角にある[kitchen space nôl]のディレクターも務めています。[nôl]は今年ミシュラン1つ星を獲得。実は過去にも「RED U-35」2015年、2019年準グランプリ、2016年シルバーエッグを受賞した実力派です。
アクセス :東京都中央区日本橋馬喰町2丁目2−1 DDD Hotel1F
コース時間:17:30~
バー時間 :18:30~
定休日 :火曜日・水曜日
“GOLD EGG” 井上稔浩[Pesceco]
▲井上稔浩「土地の料理 “多比良ガネ/手延素麺”」
「地元のひとたちに愛されてきた“多比良ガネ”(渡蟹)。そして、私の幼きころから常に身近にあり、地域の一大産業として受け継がれている島原“手延素麺”。この二つの食財(食材)をあわせてつくった『カニそうめん』です。
地方でレストランを営むものとして日々考えることは、地元の素晴らしい食財をこの先も残していくためにはどうしたらいいのか。それらの食財や生産者の方々の手仕事に見合う対価をどうやって理解してもらうのか。この土地で料理人としてできることは、土地ならではの『美味しい一皿をつくること』で生まれる喜びの循環を創ることだと思っています。
自分たちの足元にある豊かさに気づき、限りある資源の価値を伝え、土地で受け継がれた食文化を料理で表現すること。また、喜びの循環に繋がる願いをこめて。これが私がおもう『未来のための一皿』です」(井上)
「里浜ガストロノミー」を料理スタイルにする井上稔浩氏。地元島原で昔から愛されてきた食材をかけ合わせた料理を提案しています。彼が開くお店「pesceco」は海辺の一軒家。わざわざ足を運ぶ価値のある、島原への想いが詰まったお店です。
アクセス :長崎県島原市新馬場町223-1
お昼の営業:12時の部(火・水・木・金)
夜の営業 :19時の部(土曜日のみ)
定休日 :日曜日・月曜日(不定休あり)
※完全予約制(上記は入店受付時間)
※お昼の営業・夜の営業ともに6席のご案内
“GOLD EGG” ドグエンチラン[ベトナム料理とワイン CHILAN]
▲ドグエンチラン「ケとハレの間」
「未来の『生きるチカラ』のためとして、ありふれた日常の食卓(ケ)にエンターテイメント性ある非日常のレストラン(ハレ)の要素を加えた『間』の一皿を考案しました。いつもの食べ慣れたメニュー、そこにさらに少しだけの美味しい・新しい・楽しいがあれば明日の活力になります。そこでベトナムを代表する郷土料理であり、自身のおふくろの味でもある米麺料理フォーを多角的に見直し、食材・調理法の選定とプレゼンテーションを組み立て直しました。
広島の地でお世話になっているアジアの野菜やハーブに特化した農家と抗生物質不使用・地鶏の平飼い飼育にこだわった養鶏農家に直接足を運び、そこで得た食材=厳しい自然を生き抜いた命と、それを育ててくれた農家に感謝して調理します。食べ手には日常の食事をただの消費と捉えるのではなく、自身の身体と心を整えるための喜びの時間であると伝えたいです」(ドグエン)
「感謝」を料理スタイルにするドグエンチラン氏。ルーツをベトナムに持ち、自身が開くお店ではベトナム料理と自然派ワインを提供。惜しくも今月の予約はいっぱいだそうですが、広島に訪れる機会があれば、彼女の丁寧で温かみある料理を、大切な人と一緒に囲みたいですよね。
アクセス :広島県廿日市市阿品4-2-39
営業時間 :12:00~15:00
定休日 :火曜日~金曜日
今年は大会初のオンライン開催ということで、料理人としての腕だけでなく、人柄やプレゼンテーション能力が問われるものに。「RED U-35」公式YouTubeでは、今回ご紹介した4名の受賞者以外の参加者の映像も公開されています。彼らの食にかける想いを知り、若き才能たちが生み出す料理を、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょう。
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