夢のビアフェスをブルワーの言葉と共に振り返って

ミッケラーのMBCTってどうだった?


RiCE.pressRiCE.press  / Oct 5, 2018

MBCT2018レポート クラフトビールのパラダイス

9月23日 (日) 、24日 (月・祝) の2日間にわたって開催された「ミッケラービアセレブレーション東京 (MBCT) 」。両日とも昼 (11:00〜14:30) と夜 (16:30〜20:00)  の2部制で行われ、4セッションで毎回異なるビール計320種類が提供された。それもヨーロッパ、アメリカ、アジアの選りすぐりのブルワリーのビールを樽生  (あるいはレア物ボトル) で、そしてもちろん飲み放題で満喫することができるという、「世界で最もクレイジーなビールフェス」は本物だった。

明治神宮のいちょう並木を抜けた草野球場の一角が記念すべき第一回開催となるMBCT2018の会場。からりと晴れたまさしくビール日和の日曜日、会場に集まった国内外のビアファン。特製グラスに次から次へとビールが注がれ、会場がビールの楽園に変わるまでには長くかからなかった。

▲ 1台のキッチンカーに34つのブルワリーが2つのタップを構えた

ニュージーランドホップが芳しいOTHER HALF (アザーハーフ、アメリカ) のアメリカンIPAからスタートすれば、お隣からはLERVIG (ラーヴィグ、ノルウェー) のバーボン樽熟成かつココナッツなどをブレンドしたインペリアルスタウト。CLOUDWATER (クラウドウォーター、イギリス) のNEIPA (ニューイングランドIPA) とDDH (ダブルドライホップド) の略称クイズを美味しくクリアすれば、ウォーター繋がりSTILLWATER ARTISANAL (スティルウォーター・アーティザナル、アメリカ) のホップドゴーゼ……といった具合に、多種多様に進化しつづける最先端のビールをまさしく「セレブレート」して回った(色とりどりのビールの入ったグラスを掲げてスマホで写真を撮る人が多くいたわけだが、あれは祝杯を掲げるようだなと思った) 。とりわけ長い行列を作ったのは、世界でも数カ所でしか飲むことのできないランビックを振る舞ったBOKKEREYDER (ボーケレイダー、ベルギー) と、まるでココアやスイーツのようなスタウトやフラッペをトッピングするサワーエールなど進化系ビールで楽しませてくれたOMNIPOLLO (オムニポーロ、スウェーデン) だった。オムニポーロのブルワー、へナック・フェンティは「地球の裏側でこうやってビールを注いでるっていうこと自体本当にすごいことなんだけど、地球の裏側の人たちが僕たちを知ってくれていて興味を持ってくれているのはさらにすごいことだと思うよ」と素直な嬉しさを話してくれた。「こんなにきれいでお行儀よくて、それでいて熱さも感じられるあったかいイベントは他にないね。素晴らしいよ」

▲ 濃厚なチョコレートソースのようなオムニポーロのビールには、絶えない行列が

もちろん上で触れたのはMBCTで提供されたビールのほんの一例だ。参加したみなさんは何種類のビールを飲んだか覚えているだろうか?多くのビアファンで賑わいを見せたものの、ちょうどよいスペース感の会場はとても快適でピースフルな場所となった。主催者であるミッケラーのミッケル・ボルグに話を聞いてみると、この感覚はビールで酔った自分だけの気まぐれではないと合点がいった。

「コペンハーゲンでミッケラービアセレブレーションを始めた理由というのは、自分たちのパーティーのように感じられるフェスティバルを作りたいと思ったからなんだ。友達もブルワーもみんなイコールで。コマーシャルな部分は排除して、ブルワーもブースの裏にいるんじゃなくてみんなと一緒にしゃべったりしながら楽しむ。今回もそうなっているよ。ゲストもブルワーもリラックスしてビールを楽しめる場所だ。自分も過去12年ブルワーとしてたくさんのフェスティバルに参加したことがあるけど、こんな風に楽しめる場所は少ない。これはコマーシャルのためのフェスではない。クラフトビールカルチャーのためのフェスだ。それがみんな楽しんでくれている理由だと思うね。今まで酔っ払ったところを見たことない日本の知り合いがすごく酔っ払ってるのを見られるのはすごいでしょ? 」

▲ 向かって左がミッケル氏。クラフトビールシーンを牽引するブルワー同士、互いのビールを飲みあい、繋がる機会でもある

普段は表情を変えずにクールに話すミッケルが最後にお茶目に話してくれたところに、心からの充実と満足を感じることができた。「ブルワーのためのフェス」と言ってきたミッケルの言葉通り、すべてのブルワーが今回の東京開催を楽しんでくれたようだ。

Superstition Meadary(スーパースティション・ミードリー、アメリカ) のジェフ・ハーバートは、空港から真っ直ぐ両国に向かい、子供の頃から憧れた大相撲の九月場所を観に行ったそうだ。スーパースティションは今回の出展者の中でも際立つ存在だった。ミードとは蜂蜜を原材料とする醸造酒で、ジェフは「人類史上最古の醸造酒ミードを蘇らせ世界に広めること」をミッションとして、世界中の様々な材料、工法を取り入れ新しいミードを生み出しまくっている。飲んだ瞬間「なんだこれ!でもうまい」という新たな出会いを体感した人も多いのではないだろうか。

▲ 会場は晴天に恵まれ、多くのビアファンがクラフトビールに酔いしれた

Oxbow (オックスボー、アメリカ) のティム・アダムスは、高校時代を東京で過ごした経験があるだけにMBCT参加に対する興奮は人一倍だったようだ。「目標は一年に一回は日本に来ること。将来はまた日本に住めたらいいなと思うけど、今はブルワリーの仕事が忙しいからね。でも毎年来れたらハッピーだよ」ファームハウスエールに特化し、SASUGAやMOMOKOといった日本にインスパイアされたビールも作るオックスボー。複雑だけれど飲みやすいビールがモットーだが、ロブスターをアクセントに使ったセゾンなどクリエイティビティはさすがだ。「日本のビアファンはとてもリスペクトフルだね。ただ酔っ払うだけじゃなくて、どんなビールなのか興味を持って色々聞いてきてくれる。一緒にセルフィーを撮ったりもね」「ブルワー同士もフェスを通じていい友達になれる。コラボレーションが生まれて、結果としてクラフトビールの質の向上に繋がると思うね」

▲ 幸せそうな表情を浮かべる人々で溢れた会場。ハッピーなムードが満ちていた

実際にオックスボーはヨロッコビールとのコラボレーションを行った。今回日本からは他に、箕面、デビルクラフト、AJB、志賀高原の計5組が参加した。ヨロッコの吉瀬明夫氏は「 (コラボなどで一緒に時間を過ごすことの) 積み重ねが結果カルチャーになっていく」と感じていた。ゲストにとっても「チケットが高いっていう話もあったけど、一歩中に入ると最高で。世界を旅しなきゃ飲めない、旅しても飲めないビールがあるし、プライスレスな体験っていうか。ビールひとつどれが美味しいかとかじゃなくて、トータルで3時間の体験が大事じゃないかなと感じますね」コペンハーゲン開催回にも参加した吉瀬さん。MBCCは衝撃的だったと語り、今回のMBCTもファン、業界関係者、ブルワー全ての人にとって刺激になるイベントだったと言う。海外の質が高くとても幅の広い種類のビールを目の前にすることは、自分の表現を考え直すきっかけになると言う。「世界の場で戦うというわけじゃないけど、一緒にそういう場に立った時に、どうすれば面白いことができるか考えたり。今回日本のブルワーも参加してたり、あとはチケット買って結構みんな来てるんですけど、そういうのはすごくいいと思います」

吉瀬さんが「まぁ、最高なイベントだと思います、一言で言うと」と言った時、少し大げさなくらい頷いた自分だったが、あの場にいた人たちはきっと同じように感じるのではないかと思う。

「みんな私たちブルワーを『普通の人』と感じられると思う。ビール界のアイドルのように思われているかもしれないけど、ブルワーも普通の人間で、同じようにビールを飲んで、遊ぶ。楽しむためにここに来ているんだ」ミッケルは少し遠慮がちにこう語ってくれたが、まさにそれがビールの作り手と飲み手の距離を縮めて、カルチャーをより濃いものにしていくものだと思う。そして、天気にも恵まれた幸運なMBCT2018は、まさしく東京、いや多くのアジアのブルワー、ファンをも惹きつけ、ビールカルチャーのクレイジーな発展に大きく貢献したと思う。次回がどうなるかはまだ何も決まっていないとのことだ。けれども、ファンは戻って来てほしいと願い、ブルワーは戻って来たいと願う。MBCTはとても幸せなパーティーだ。

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