『さよなら絵梨』と、パワフルな新茶

六煎目🍵若いからすごいわけじゃない


Emiko IzawaEmiko Izawa  / May 24, 2022

日本茶を1000日間毎日飲むというチャレンジ=「1000日茶」に挑戦中
(700日突破!)の俳優・伊澤恵美子が、お茶と漫画をペアリングする連載
「お茶に漫画が合うのだが!!」。第6回目のテーマは、若いからすごいわけじゃない

5月は新茶の季節です。

静岡で生まれ育った私にとって、5月の静岡はお茶の緑のイメージ。連休に帰省する時に新幹線から見る茶畑は私の原風景でもあります。

もともとさわやか、フレッシュなイメージのある緑茶ですが、新茶はさらにその特徴がブーストされますよね。新茶を飲むと、長生きできるという言い伝えもあります。実際、新茶にはお茶の成分である「テアニン」がたっぷり含まれていて、ストレス軽減や、睡眠の質を高めるともされています。

(実はこの原稿を書くために緑茶のカフェインで気合を入れようと新茶をいただいたのですが、テアニンがしっかり働いているようで、眠くて仕方ありません…笑)

さて、そんな新茶のお祝いをしよう!というイベントが先日、渋谷で開催されました。『Ocha New Wave Fes』です。

人気日本茶専門店6店舗が出店し、各店舗の新茶と、スペシャリテのお茶がいただけるイベント。

まだ新茶もやっと南の方のものが出回り始めたかなという時期、最高の淹れ手さんたちがセレクトした新茶、しかもそれを目の前で淹れていただきながら、新茶のストーリーもお話してもらえるという、贅沢すぎるイベントでした。

それぞれ個性ある素敵な淹れ手さん揃いなのですが、中でも熱湯より熱さを感じるお茶屋さんがいらっしゃいました。いや正確には火を止めてもずっと温度が下がらない熱湯のような人、[a drop.kuramae]のべったなさん。元々役者だったり、NYにいたりとご本人のストーリーもつきないのですが、べったなさんがお茶を淹れながら、お茶について話してくださる時の熱量が本当にすごい。

現地で交流した茶園さんとのエピソードや、そのお茶の美味しさを語る時のべったなさんの瞳は常に潤んでいるように見えるのです。

そんなべったなさんが今年用意してくれた新茶は静岡市清水区の[しばきり園]さんのもの。[しばきり園]の若き園主杉山忠士さんについてもべったなさんがお茶を淹れながらいつも熱く語ってくださるので、お会いしたことはないのに、勝手に親のように成長を見守っているような気持ちになっています。杉山さんは非常に若い茶農家さんで、ついそこに注目してしまいがちなのですが、そんなことは関係ないという意思を杉山さんからも、べったなさんからも感じます。

若いからすごいのではない。ただ、1年前の彼と、今年の彼の成長を素直に見つめ、お茶とともに伝えてくれるべったなさん。できたお茶をどう作るかというところだった昨年から、今年は、自分が作りたいお茶を作るためにどういう茶畑にするかを考えているという杉山さん。ちょっと何言ってるかわからないかもしれないほど高次元な話…。

今回のペアリングはお茶が先です。

OCHAニューウェイヴフェスでいただいたしばきり園の「峰」の新茶。出来たばかりのお茶で、火入れをした完成されたものと、その手前の段階の火入れの弱いものの二種類から選べるようになっていました。

この火入れが弱い、できたばかりのお茶。一般的に新茶は爽やかなものが多いのですが、これは結構渋み?や、茶葉そのもののような野生味を感じる。さらには火入れをしっかりしたもう一つの新茶と飲み比べると、同じ茶葉なのに味が全く違う。衝撃体験でした。

この「峰」の新茶(火入弱いver.)のインパクトやパワフルさ、ストーリーに合わせたいマンガは…。

藤本タツキ「さよなら絵梨」です。

©藤本タツキ/集英社

チェンソーマンで人気に火がついた藤本タツキ先生の200ページにわたる読切作品。実は「チェンソーマン」には乗り切れてなかった私なのですが…「さよなら絵梨」を読んで、ライバルだったら全力で潰したいと思ったし、味方だったら全力で愛したいなと思いました。

藤本タツキさんも若くして売れた印象のある方ですけど、こちらも若いから売れたわけではないのです。

衝撃を受けた手法に、手塚治虫先生がやられていた演劇的な漫画の手法を彷彿とさせるものがありました。アングルを定点にしてマンガのコマを連続して描くことによって演劇を見ているかのようにしたものがあるのですが、藤本先生はそれを映画的にやっています。しかも手持ちのカメラで撮っているような表現するために手ブレをした絵を入れ込む(描きこむ)という…。ちょっと何言ってるかわからないかもしれないほど高次元な話…。

何より「さよなら絵梨」はかつて映画に憧れて、映画を映画館で年100本見ると決めていた20代の自分を思い出したり、原石を見つけてそれを全力で愛し育ててみたいと思う今の私だったりという、“私”がライドする要素がぐっと入っているんですよね。

杉山忠士と藤本タツキ、これからどんなものを作っていくのか。

どちらも勝手に見守らせていただきたいと思います。

漫画『さよなら絵梨』(藤原タツキ)
「ファイアパンチ」や「チェンソーマン」の作者・藤本タツキ先生の200ページにもおよぶ完全新作長編読切漫画「さよなら絵梨」。主人公・伊藤優太は、実の母親が亡くなるまでの姿を映した動画を映画として学校で公開するも、最後のひどいオチで馬鹿にされてしまいます。あまりの批判に自殺しようとした優太でしたが、一人の少女・絵梨と出会ったことで、自分の映画を馬鹿にした奴らを見返すため再び絵梨と共に映画を作ることに。
お茶『峰』(しばきり園)
しばきり園で一早く手摘みを始める茶畑の新芽は、 一芯二葉で丁寧に摘んだ柔らかい茶葉には、上品な優しい茶の香り、手詰みでしか味わえないコクのある味わいが茶の季節を知らせます。

 

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