日常と非日常のあいだを歩く
東京ローカル花見ガイド | 神保町編
お花見をしに、ちょっと遠出をするのもいいけれど、3月末なんて年度末。
休みを迎える頃には、予定を立てていたはずなのに、思った以上に疲れている。
「場所変えよう」「集合時間遅くしよう」
あの手この手で、予定をキャンセルしないように調整。
心から会いたいのに、体がついてこない日もある。
でももう知っている。
そういう日こそ、無理のない範囲で外に出て、美味しいものを食べて、太陽を浴びることが意外と効くということを。
◎神保町
前回の国分寺に引き続いてやってきたのは、千代田区・神保町。
2025年には、『Time Out』が選ぶ「世界で最もクールな街」1位にも輝き、海外の人にとっても、日本の人にとってもまず思い浮かぶのは古本・カレー・喫茶の街。
でも今回は、平日は学生とサラリーマンの街でありながら、休日には少し違った顔を見せる神保町でのお花見。
日常の延長にあり、無理をしないまま、それでもちゃんと気分が上がる。
そんな一日のはじまり。
神保町の花見ルート
12:00 [SR coffee & ice cream Jimbocho]
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13:00 [Soif Tokyo]
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二の丸公園
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17:00 [pharos coffee]
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19:00 [ChatGatto]
12:00 [SR coffee & ice cream Jimbocho] 遅めスタートと、始まりのコーヒー
こうも急に朗らかになると、体がアイスクリームを求め始める。冬の寒さを忘れられないのか、かじかまずにカップを持てるのがうれしいのか。
それでも、一日の始まりのホットコーヒーは譲れない。
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すべて店内でつくられるアイスクリーム。定番の「ホワイトミルク・黒ゴマ・抹茶」ほか、シーズンなどによりラインナップは変わり、いつ来ても楽しめる。
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クッキーやパウンドケーキなど焼き菓子も豊富。今回は、「レモンとポピーシードのパウンドケーキ」と「チーズペッパークッキー」を購入。
[SR coffee & ice cream Jimbocho]はコーヒー屋によるアイススタンド。
兜町にロースターがある[SR COFFEE]による、“いつかアイスクリーム屋をやりたい”というオーナー念願の一軒だ。
今日はお花見の気分で来ているし、せっかくだから春らしいものをと思い、ホワイトミルクといちごソルベを。
そしてコーヒーは、ブラジルブレンドのロングブラック。そのすっきりとした味わいと澄んだ心地に、ホワイトミルクのミルキーさといちごのぷちぷちとした甘さが重なって、止まらない。
近くの錦華公園で、ベンチに広げて食べる。
お昼休憩の終わりに追われない公園のベンチって、こんなにいいんだ。
レジャーシートなんかいらないんだよな、と思いながらも、ハトに狙われ始めたので、少し巻きで切り上げることに。
そして、「チーズペッパークッキー、おつまみに買われる方も多いんです。」
という言葉を鮮明に思い出すくらい、ワインが飲みたくなってきた。
13:00 [Soif Tokyo] みんなで開ける用のボトルの下見だし。休みだし。
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左から、ドイツ・ラインヘッセンのドルンフェルダーシルヴァーナー(ロゼ泡)、ドイツ・ファルツのポルトギーザー(ロゼ)、フランス・ジュラのトゥルソー(軽赤)。
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最近、北杜がホットスポットだと思う瞬間がめちゃくちゃ多いのだが、実際問題遠い。
よいしょってしないといけない距離。
でも、その距離の先にあるはずのものが、神保町の日常のなかにもある。
「ボトルの情報をすべてオンラインに載せてはいない。実際に足を運んで、“こんなのあるのか”って。古着やレコードのように掘り出す感覚をワインショップでも持ってもらいたいというのもある。」と話すのは、山梨・北杜に拠点を持つ[Soif Tokyo]の窪田さん。
この考えは、神保町を訪れる人にきっと刺さる。
人も物も、ここではすべて一期一会。
角打ちとして有料試飲を楽しんだうえで、気に入った一本を買って帰ることもできるし、相談しながら気分にぴったりの一本を選ぶこともできる。
ちなみに選んでもらった3本は、どれも「お花見っぽいワインを選んでください」という難題に応えてくれたもの。
真ん中のロゼを試させてもらったが、たしかにお花見っぽい。
ロゼなのに軽赤のようなニュアンスで、プラムのようなきれいな酸味が立つ。
さくらの塩漬けや和菓子とも合いそうな、そんな春らしさがある。
次の「お花見だし飲もう」の会に向けて仕込んでおこうかな。
重いから後で、なんてもう考えない。
[二の丸庭園] ふかふか芝生ランキング一位。あと桜。
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神保町から竹橋の方に向かって歩くと、そこには皇居東御苑が。
その中でも二の丸庭園、「桜の島」や「梅林坂」など、春を感じられるエリアが点在している。
奥に見える高層ビルに対して、手前にある木々が自然のままだと違和感が出そうなコントラストなのに、細やかに手入れされている分、画として違和感をあまり抱かない。
というか、むしろ一体化しているようにも見える。
ただ、おすすめはふかふかの芝生。いままで数々の芝生に寝転がってきたが、二の丸庭園の芝生が一番ふかふかで、ぎっしりと敷き詰められている。右に出るものがない気もする。
散歩として通り過ぎるのではなく、一回腰をおろして、寝ちゃう。
上を向いて寝てしまえば、ビルも何も見えない。太陽だけを感じられる。
気づけば、ちゃんと桜の下にいる。
17:00 [pharos coffee] 夜ごはん前にちょっとだけ。この時間に飲むのは浅煎りに限る。
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オープンから仕入れた生豆が売り切れ次第、新しい銘柄を出しそれぞれに番号を付ける。ちなみに14番は、ETHIOPIA Bella Lulo TOH#1 Natural。
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併設されるギャラリーでは、台湾と日本のアーティストによる展示が定期的に開催されている。
「台湾のインポーターから仕入れたコーヒー豆を、pharos独自の焙煎哲学で。日本の皆さんに、コーヒーの多彩なフレーバーを知ってほしい。」
そんな考えのもと、台湾で焙煎された豆を日本で楽しめるのが[pharos coffee]。
国によって扱う豆の種類や、コネクションが異なるなんて、これまで考えたこともなかった。
ひとつひとつのコーヒーにキュレーションをつけるその姿は、
コーヒーショップというより、コーヒー豆を作品として扱うギャラリーの方がしっくりくる。
ここでは、コーヒーはただ「提供する」ものではなく、「展示する」ものになる。
そんな体験を通して、毎日飲むコーヒーとの新たな向き合い方を覚えた。
毎日そう向き合うことはできないけれど、できる日のために、ポケットにしまっておくことにする。
19:00 [ChatGatto] 家の外で食べるけど、家庭料理。そして最後はワインで締める。
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合わせるのはフランス・ジュラのサヴァニャン。ふきのとうとジュラの山のイメージ、魚、そして石灰で真っ白な畑でとれたミネラルの強いサヴァニャンが合うのでは、とのペアリング。
一日の最後にたどり着いたのは、ワイン食堂[ChatGatto]。
Chat(仏)Gatto(伊)。どちらも“猫”を意味する名の通り、フランス料理とイタリア料理、それぞれをルーツに持つ料理人2人による店。
お茶から野菜、魚まで、主な食材のほとんどは愛媛のものだ。
春らしい一品としていただいたのは、ふきのとうのバターソースのニョッキ。「伊予美人」という里芋を使った自家製ニョッキに、軽くスモークした愛媛産の魚を合わせる(この日はスズキ)。
「美味しくても、毎日食べても疲れない料理が前提。
かちっとはまったものより、味わいに遊びがあるような、家庭料理に近いものが多い」
という言葉通り、しっかり美味しくて、どこか軽やかで、食べ進めても疲れない。
ひとつの店だけど、それぞれが料理人として存在できるような形。
フランス料理、イタリア料理という境界線はなく、やりたいことをやりたいように。
猫のイメージでもある、“型にとらわれずのびのびと自分らしく”。
今の自分にも、どこか刺さる。
疲れたときの外食で、
「何食べたい?」に対して「食べて疲れない料理」と返すことがある。
その答えが、ここにあったのかもしれない。
食べて、ちゃんと元気になる。
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お花見があるから、今しかないから、なんとか外に出られた日。
日常の延長なのに、どこか非日常でもあった。
神保町で過ごした一日は、
日常と非日常のあいだを、ただ歩いていただけなのかもしれない。
それで、十分だった。
(SHOP INFO)
SR coffee & ice cream Jimbocho
東京都千代田区神田神保町1-22-2
12:00~17:00(16:45 L.O)
日曜・月曜定休
IG @sr_coffee_icecream_jimbochoSoif Tokyo
東京都千代田区神田神保町1-42-15-1B
日曜・不定休
12:30~20:30(金曜以外)
12:30~22:00(金曜)
IG @soif.tokyo
※今夏、神保町内移転予定pharos coffee
東京都千代田区神田神保町 1-25-4
11:00~19:00
IG @pharoscoffeeChatGatto
東京都千代田区神田神保町1-54-19
12:00~14:30(水木金 / 14:00L.O)
18:00~23:00
月曜定休
IG @chat.gatto
@chat.gatto.jinbouchouPhoto by Yuki Nasuno(写真 那須野友暉)IG @yuki_nasuno
Text by Terra Owen