福島の酒に導かれた、一日限りのイベント
次の縁へ旅する、導船
福島の食と酒の“今”を伝える「テロワージュふくしま」が企画したプロジェクト「FUKUSHIMA SAKE SEVEN」。
昨年10月に行われたそのオープニングイベントをきっかけに、
[PEPE ROSSO]、[MAEN sake pairing restaurant]、[SUNDAY JAM’S CLUB]の3店が集い、今回のイベント「導船」が開催された。
[MAEN]と[PEPE ROSSO]はこれまでもコラボレーションの経験があったが、[SUNDAY JAM’S CLUB]が加わるのは今回が初めて。
「テロワージュふくしまをテーマに、おもしろいことができたらいいよね」
そんな何気ない会話から、この一夜限りの企画は動き出した。
今回のイベントでは、3組が実際に福島で体験した食と酒を、それぞれの解釈で料理へと落とし込んでいく。
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左から[SUNDAY JAM’S CLUB]のひろむさん、[MAEN sake pairing restaurant]の井戸さん、[PEPE ROSSO]の今井さん
出会いの原点は、福島・[大和川酒造店]の蔵開きイベント。
「輪を拡げていく」をコンセプトに、東京の飲食店が招かれ、前夜祭・後夜祭で酒を酌み交わす中で自然と距離が縮まっていった。
イベント開催日の一昨日には、3人で釣りへ。
大シケに見舞われ、釣果は小魚が数匹ほど。それでも、その魚をどう使うかを考え、それぞれが日頃つながりのある魚も持ち寄りながら、メニューを組み立てていく。
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寿司のシャリに使う米は、大和川ファームのもの。細部まで、福島との接点が丁寧に選ばれていた。
当日は立食形式での提供。
スープや、[PEPE ROSSO]の農園で採れた野菜を使った前菜が並ぶ中、メインとなったのはコラボレーションによる握りと、“お題”に答えるかたちで生まれた料理たちだ。
コラボ握りは、[SUNDAY JAM’S CLUB]のひろむさんが握り、具材やアイディアを[PEPE ROSSO]の今井さん、[MAEN]の井戸さんがそれぞれ持ち寄る。
昨年の蔵開きで、今井さんと井戸さんが仕込んできたネタを、ひろむさんが握る——そんな即興的なセッションが思いのほかおもしろく、「もっとやりたいね」と話していたことも、今回の企画につながっている。
そして、[MAEN]からのお題は「フラン」、[PEPE ROSSO]からは「ペペロンチーノ」。自分たちの得意分野を、あえて他者に委ねるという試みだ。
イベント名の「導船(do, sen)」には、さまざまな意味が込められている。
場をつくり、成立させ、また次へとつながる縁を導くこと。
「なんかおもしろくない?」「それ、いいじゃん」
そんな軽やかなテンションのまま、料理と酒、人の流れが生まれていく。
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「めちゃくちゃやばいから食べてみて」
今回のイベントでは、提供する酒に合わせ、前日夜遅くまでペアリングを確認し合ったという。
「チェックしすぎて、朝になっちゃいそうだった」そんな一言にも、彼らの人柄がにじむ。
当日提供された酒は、FUKUSHIMA SAKE SEVENから、[ぷくぷく醸造]と[大和川酒造店]、そして[かわうちワイナリー]。
[MAEN]が普段扱っている日本酒を軸にしつつ、日本の食材との相性がいい[かわうちワイナリー]のワインも組み合わせる構成に。
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日本酒は冷酒に加え、お燗でも提供された
ペアリングは、[MAEN]の御子柴さんが担当。
料理一皿一皿と向き合いながら、実際に合わせ、互いに「おいしい」と感じたものだけが提供された。
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平日の昼間にもかかわらず、店内は終始にぎやか。
3店舗が交わることで、それぞれの客層が混ざり合い、新たな出会いや楽しみが自然と生まれていく。
今回のイベントは、まだ船出に過ぎない。
次の停泊地が、今からもう楽しみだ。
この日提供されたメニューより

コラトゥーラとピスタチオのソース、ビーツでマリネした寝かせたカンパチ
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奄美のハタと、石川の丸芋、西洋わさびとミルクのソース
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太刀魚のペペロンチーノ。トマトとブロッコリー、仕上げに炒った大和川酒造の酒粕
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そば巻きのように巻かれた冷やしペペロンチーノ
Photo by Yuki Nasuno(写真 那須野友睴)
Text by Terra Owen