「きょう何食べた？」は、いま東京のフードカルチャーシーンで注目を集める人たちに、ある一日の朝、昼、夜ごはんを紹介してもらう連載企画。食べ物だけでなく、その人のライフスタイル、街との関わり、仲間との時間など、“人と食と街のストーリー” を浮かび上がらせます。第２回は流しのワインバーとして人気の［gubigubi］・平澤淳一さんと浅草橋周辺を巡りました。

［饗 くろ㐂］の塩そば

長い行列の末にようやく出会える一杯。「ありがたみを感じる余裕もなく一心不乱に食べ切ってしまいます（笑）」と平澤さん。

「［くろ㐂］さんに通うようになって、もう5年くらいになります。並ぶと分かっていても、どうしても食べたくなる（笑）。

ここは“ラーメン”ではあるんですが、もうラーメンの概念を超えていると思っています。まず、このクオリティでこの価格は本当に良心的すぎる。鶏のチャーシュー、つくね、豚チャーシュー、トマト——　一杯の中に味の世界が何層にも広がっていて、食べ進める場所によって全然表情が違う。今日は小麦を3種ブレンドした麺でしたが、毎回微妙に麺の食感が違うのも楽しみのひとつです。

 平日の昼休みも来ます。並んで1時間、食べるのは5分。でもそれでも食べたい。醤油もありますが、塩を頼むことが多いです。大将のこだわりが一番素直に伝わる気がして、つい塩を選んでしまいます。

 僕は朝を食べないことが多いので、昼と夜はすごく大事なんです。午後を頑張るためのエネルギーになるし、なるべく美味しいものを食べたい。その意味で、昼の［くろ㐂］さんは本当に最高の存在。住まいは浅草だから徒歩圏ではないけれど、電車で2駅以内にこんな店があることが本当に幸せ。下町に住んでいてよかったと心から思える一軒です」

限定メニューの構想から浅草の飲食店の話まで。大将・黒木直人さんとのささやかな会話も楽しみの一つ。

丁寧に仕上げられたこだわりの自家製麺が、澄んだスープと具材の旨みを静かに抱きとめる。

饗くろ㐂
東京都台東区浅草橋１丁目２８−９
11:00〜15:00
日曜定休
IG @motenashi.kuroki

gubigubi
IG @gubigubi_official

Model by Junichi Hirasawa（モデル 平澤淳一）IG @samojunn
Photo by Misa Shimazu （写真 島津美紗 ）IG @smzms_620
Text by Shingo Akuzawa（文 阿久沢慎吾）