連載「世界の台所から」#1

イギリス 「リーキとポテトのスープ」を作る


Ai ItoAi Ito  / Apr 25, 2026

世界には、どのような食文化があるのだろう。

正直日本にいれば、手軽に美味しい海外の料理が楽しめる。ただ、それらはピュアな異国料理というより、日本の個性が反映された「越境異国料理」だと思っています。

昨年タイを訪れたとき、ガパオを食べて驚きました。日本では鶏肉が使われたものが一般的ですが、タイでは鶏肉に限らず、豚肉や牛肉などから選ぶことができます。タイに在住経験のある知人に勧められ、豚肉のガパオを実食。油でしっかりと炒められた豚肉の旨みに、ニンニクと唐辛子の力強い刺激が重なり、ガパオの概念が覆されました。

日本で食べる「越境異国料理」ももちろん美味しい。むしろ大好きです。毎日でも食べたい。 ただ、その土地の食材で育まれてきた料理を、現地で味わう感動は格別です。初めて目にする料理や食材に、どこか怯えながらも、早く口にしてみたいと期待が溢れる。食べ終えた後には「これは何なんだろう」と、次々に探究心が湧いてくる。感情が揺さぶられ、高揚感に満たされていく。

ああ、またあの体験を、あの瞬間を。

そんな感動をもう一度味わいたくて、半年間世界の料理と出会う旅に出ました。

ロンドンのマーケットに置かれた山盛りの野菜。日本にはない野菜が大量に売られている。

はじめまして。フリーランスのディレクター/マーケターのあいです。RiCEではクリエイティブチーム「ami」の一員としてSNS運用にも関わっています。

食やライフスタイルに関わる仕事をする中で、世界の文化への興味が高まり、この春から半年間の旅に出ています。最初の1ヶ月はイギリスに滞在し、その後の2〜4ヶ月目は大陸側へ渡り、オランダ・ドイツ・イタリア・フランスなどヨーロッパ各国を巡る予定です。最後の2ヶ月はスリランカやタイ、ベトナムなどを経由して、日本へ戻る計画です。

最初の1ヶ月を過ごすのは、食文化にネガティブな印象を持たれがちなイギリス・ロンドン。誰もが「ロンドンはご飯が美味しくない。」と耳にしたことがあるかもしれません。

1ヶ月過ごしてみて、「美味しくない=食文化が発展していない」というわけでは決してないと感じました。

調理が簡単で、保存性が高く、安価で、ハイカロリー。そうした「理にかなった料理」が残り続けてきただけなんだと思います。

たとえば、産業革命期に労働者のために作られた、ハイカロリーで温め直しもしやすい蒸しパイ。日曜の礼拝に向けて事前に仕込まれ、帰宅後すぐに食べられる肉料理。安価な肉でも、臭みや硬さを気にせず食べられる煮込み料理。

流動的な歴史のなかで異国の食材や文化も取り込みながら、現在の食文化が形づくられてきたのだと、この1ヶ月で強く感じました。

左:パブで食べた腎臓を煮込んだシチューが入った蒸しパイ(キドニープディング) 右:ローストビーフ、シュークリームの生地のようなヨークシャープディングにたっぷりのグレイビーをかけていただくワンプレート(サンデーロースト)

この連載では、海外の食文化から得た気づきをもとに、滞在先のスーパーやマーケットで食材を買い、実際に自分の手でその土地の料理を作っていきます。

第1回は、イギリスの定番「リーキとポテトのスープ」。

リーキは、いわゆるポロネギ。日本の長ネギより太く、甘みがあり、ネギ特有の香りが穏やかなのが特徴です。

私とリーキの出会いは、ロンドンで最初に行ったスーパー。ネギといえば、日本、中国、韓国。そんなイメージが強かったので大量に積まれている風景に驚きました。試しに買い、大雑把に切ってスープに入れてみたところ、くたくたに煮込んだリーキは口の中でとろけて甘さが広がりました。その瞬間、「もう日本のネギに戻れない」と、あの細身のネギに謝りました。

数週間後、ガストロパブでメニューを眺めているとそこには「リーキとポテトのスープ」の文字が。どれどれ、本場のリーキのスープはどんなものかと試しに頼んでみると、リーキの本気に心を撃ち抜かれました。具材の形を残さず攪拌された滑らかなスープは、リーキの甘さを前面に、ネギの青い香りをポテトが包み込んで優しくまとまりのあるひと皿でした。ほんのり感じる青さが、クリーミーなスープを爽やかに仕上げてました。

調べてみると作り方も材料もとてもシンプル。ぜひ、皆さんも作ってみてください。
ロンドンのスーパー。基本バラ売りになっていて、形や大きさもばらつきがあるので量り売り。特に唐辛子、生姜のバラ売りはかなり助かる。

リーキとポテトのスープ

材料

・リーキ:2本
・じゃがいも:2~3個(中サイズ)
・玉ねぎ:1/2個
・塩:適量
・バター:10g(オリーブオイルでも可)
・ストックまたは水:500ml(水の場合はコンソメなどあると◎)
・チャービル:適量(仕上げ用)

日本で作る場合、リーキは長ネギ(下仁田ネギや深谷ネギが手に入る場合はそちらで。)でも代用可能。チャービルは仕上げ用のためなくても、もしくは細ネギで代用可能。

作り方

1.ストックを準備する

ストック、いわゆる出汁。これがあることで味に深みが増すため、余裕があれば野菜の下準備や炒めている間に仕込んでおけるとなおよし。

今回のレシピの主役ではないため、細かな材料と手順は割愛しますが、鶏のガラや骨付き肉、香味野菜をじっくり煮込み、旨みを引き出します。

鶏ガラと、手持ちの野菜をあるだけ鍋に入れてみた。

2.材料を切る

火が通りやすいよう、全ての野菜を薄切りにする。

リーキと玉ねぎは同時に炒めるため火の通りが均一になるよう、それぞれ厚さにばらつきがないようにしたかったが、宿泊先の包丁の切れ味が悪くなんとも自由な見た目に仕上がってしまった。

3.炒める

鍋にバターもしくはオリーブオイルを引き、リーキ、玉ねぎを弱火で炒める。このタイミングでふたつまみほど塩を振っておくと、野菜の水分が出てより旨みが引き立つ。

野菜の甘さを出すイメージで、焦がさないようじっくりとしなっとするまで火を通す。

4.煮込む

鍋にストック(もしくは水)とじゃがいもを入れ、中火で20分ほどじっくり煮込む。

じゃがいもが崩れるくらい柔らかくなったらOK。

5.撹拌する

ミキサーやブレンダーで撹拌し、滑らかにする。この時点で味が薄ければ塩で調整する。

ストックが少なかったのか、少し硬めに仕上がってしまった。

野菜の旨みがぎゅっと詰まった、優しくまろやかなスープの完成。

お好みでチャービルや胡椒をかけるのもよし、たくさん作って飽きてしまったら焼いた鶏肉やトマト、ほうれん草などを加えて食べるのも美味しかったです。

 

 

RiCE編集部からお便りをお送りしています。

  • 最新号・次号のお知らせ
  • 取材の様子
  • ウェブのおすすめ記事
  • イベント情報

などなど……RiCEの今をお伝えするお手紙のようなニュースレターを月一回配信中。ご登録は以下のページからアドレスとお名前をご入力ください。

ニュースレターの登録はコチラ
PARIYA CHEESE STAND Minimal Bean to Bar Chocolate
BALMUDA The Kitchen
会員限定の最新情報をいち早くお届け詳しく