
あの味が忘れられない。ロケ弁当録 #4
鶏の旨味を堪能する。横浜・磯子の名物弁当[米米]
「今日のお弁当、何だろう?」フタを開けると、今日の現場が少しだけ特別になる。どこか懐かしい味、しみじみ美味しい一品、そして時々、意表を突かれる組み合わせ。ただお腹を満たすだけじゃない。お弁当には、作り手の心遣いや、ちょっとした驚きがある。この連載では、そんな“記憶に残るロケ弁”をひとつずつ、味わっていきたい。
まず目を奪うのは、弁当箱の半分を覆うように並ぶ、存在感たっぷりのだし巻き卵。幾層にも重なる卵の柔らかさに出汁がじんわりと沁み、噛むたびにやさしい甘みがふわりと残る。その下にひそむのは、生姜を効かせた鶏そぼろ。卵とそぼろ、まさに鶏の旨味を味わい尽くす弁当だ。
ぱかっ
この「米米親子弁当」をつくるのは、横浜・磯子の「ごはん屋 米米(こめこめ)」。夜は居酒屋として親しまれるこの店で、人気メニューの玉子焼きをもっと気軽に楽しんでもらいたい、そんな想いがロケ弁づくりの始まりだったという。ケータリング先の現場で声をかけられたのをきっかけに、店主の根本さんは1年をかけて声を集め、ひとつひとつ改良を重ねた。冷めてもおいしく、食欲を誘う彩りで、体力を支えるボリュームを持たせる。その地道な積み重ねの先に、今の形がある。
主役の玉子焼きは、1折あたり平均2.5個分の卵を使用し、幾層にも丁寧に巻かれている。出汁がしっかりと染み渡り、ふわふわでやわらか。頬張ると鰹出汁の旨味がじゅわっと広がり、やさしい甘みがあとを引く。
脇を固める副菜の唐揚げは外はカリッと中はジューシーに。玉こんにゃくと厚揚げの旨煮はしっとりと味が染み、ピーマンのきんぴらは店主の母の味を再現したやさしい味わい。さらに、芋の甘露煮や切干大根のナムルまで、すべての惣菜に“現場でおいしく食べられること”を意識した味付けが施されている。
「米米」という名のとおり、お米にも並々ならぬこだわりがある。魚沼産の特別栽培米「こしいぶき」を、常温でもおいしく食べられるように炊き上げる一方で、夜の居酒屋では土鍋で炊いた熱々を供する。
ハードな現場や短い休憩時間でも、しっかりとした食べ応えと、「出汁を食べる」という贅沢を同時に味わえるのが、この弁当の魅力だ。
今日のおしながき
玉子焼き
鶏そぼろ
ごはん
とりの唐揚げ
玉こんにゃくの旨煮
厚揚げ旨煮
切干大根ナムル
お芋甘露煮
ピーマンきんぴら
がり