流れる時間も味わえる蕎麦屋たち

ちょっと変わった蕎麦を楽しんで欲しい 小倉庵


RiCE.pressRiCE.press  / Jun 14, 2019

かつて東京でも有数の花街だった大塚。いまも花柳界の名残を留めるこの地で、約60年にわたり愛されてきた蕎麦屋が[小倉庵]だ。店のつくりは昔ながらの蕎麦屋のイメージそのもの。家族経営ならではの温かな空気感も魅力だ。「蕎麦屋としては僕で4代目。この場所で店を始めてからは2代目になります」と語るのは店主の安藤誠さん。「親父の代は機械打ちでしたが、僕の代から手打ちに変えました。曽祖父の時代は手打ちだったので、戻した感じですね。いろいろ作っているうちに、手打ちの方が自分の色や技を表せると思ったんです」

一番安いかけやせいろは550円と、庶民的な価格は機械打ちだった先代の頃から変わらない。手打ちを始めた当初は、顧客の反応を見る意味もあり、機械打ちと手打ちの双方を提供した時もあったそうだ。

「手打ちを150円高くしてたんですけど、そうなるとお昼時のサラリーマンは機械打ちを食べて、時間やお金に余裕がある蕎麦好きだけが手打ちを頼むようにと、客層が別れちゃうんですね。でも一番手打ち蕎麦を食べて欲しかったのは、うちを支えてくれたサラリーマンの人たちなので、機械打ちと同じ値段で出そうと決めてしまったんです」

かけ ¥550、ミニカツ丼 ¥400

蕎麦を作るうえで日々意識していることは「ぶれないこと」。

手打ち蕎麦は打ち手の体調やメンタルが、麺の出来にダイレクトに影響してしまう。蕎麦を切る時も、雑念があると太さにバラつきが出てしまうため、つねに無心を心がけると語る。

十割蕎麦でも細打ちと太打ちを用意し、季節の素材を練り込んだ変わり蕎麦には“湯ごね”の手間と技術が必要な更科粉を用いるなど、旬を取り入れた多彩な蕎麦と、蕎麦にちなんだユニークな蕎麦前(一品料理)の数々は、「常連の方にも飽きずに蕎麦を楽しんで欲しい」という、サービス精神の現れだ。

春菊そばとすき焼きつけ麺(2月の変わり蕎麦)¥950

「皆さん喜んでくれるのが嬉しくて、マニアックなメニューが増えました (笑)。蕎麦は粉と水を混ぜるだけのシンプルな作りだけど、適切な水分量はその日の温度や湿度で全然変わってしまう。毎日緊張感を持って打てるので、そこが逆におもしろいのかなって思いますね」

新海苔の季節だけ登場する“ 花巻蕎麦 ”、夏限定の “ 雑司が谷ナスの冷かけ ”といった旬の蕎麦や、“よいしょそば ” など個性的なネーミングのオリジナル蕎麦など、訪れるたびに新しい蕎麦に出会える小倉庵。

小倉庵
東京都豊島区南大塚1-42-8安藤ビル 1F
11:30~15:00 17:00~20:30(L.O.20:00)
水曜定休
tel 03-3941-8230

撮影 岩澤高雄 、文 斎藤春子

当記事はRiCE No.10「蕎麦の新作法」の記事をWEBサイト用に再編集しています。
RiCE No.10の内容を見る。

 

 

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