誰にとっても身近なサステナビリティのカタチ

[imperfect]佐伯さんが届けたいのは、おいしくて幸せなウェルフード


RiCE.pressRiCE.press  / Mar 6, 2024

ナッツ、カカオ、コーヒーなどの原産国や農園の支援をおこないながら、おいしさとサステナビリティを実現した商品を展開する[imperfect](▶︎HP)。「私たち生活者のみならず、世界や社会にとってもWell(よい)」という意味を込め「ウェルフード&ドリンク」を提供しているブランドだ。

世界の食と農を取り巻く様々な社会課題を世界の不完全(imperfect)のひとつと捉え、「たとえ不完全(imperfect)でも自分たちにできることから取組み、世界と社会を少しでもよくしていこう」という想いのもと、消費者と共に社会課題の解決を目指している。

そんな[imperfect]は今年で創業5周年。昨年11月に「imperfect 表参道」の店舗営業を終了し、多様な接点づくりの一環として、今年の220日、新宿に新たな店舗「imperfect Coffee Stand Shinjuku」をオープン。さらには、催事やPOPUPなどの出店にも注力するなどギアを上げた活動を展開している。

「imperfect Coffee Stand Shinjuku」。気軽に立ち寄り、サステナビリティにこだわったコーヒーや、チョコレートなどのスイーツが味わえる/Photo courtesy of imperfect

毎日の生活の中にサステナビリティを取り入れて欲しい——「imperfect Coffee Stand Shinjuku」は、そんな想いから人々が多く行き交う新宿マルイ本館1Fにオープンした。

ハンドドリップ800円(税込)。「Signature Blend」の他、世界中から厳選したシングルオリジンのコーヒー豆10種類から選べる/Photo courtesy of imperfect

ナッツバターラテ800円(税込)。香り豊かなエスプレッソにナッツバターを溶かし込んだシグネチャードリンク/Photo courtesy of imperfect

コーヒーチェリーティー600円(税込)。コーヒーチェリーとは、コーヒーの果実の部分のこと。ローズヒップのような爽やかな酸味とまろやかな甘味がフルーティーに香り、コーヒーの新たな一面に出会える果実ティー/Photo courtesy of imperfect

ドリンクと共に、コートジボワール産カカオを使用した[imperfect]の人気商品「Chocolate Bark(チョコレートバーク)」などのスイーツも味わえる/Photo courtesy of imperfect

ひとところに留まらず変化し続けることで、“サステナビリティを「身近に」「より多くの方に」届ける”というブランド理念を体現する[imperfect]。代表・佐伯美紗子さんに、ブランドに込める想いや、これからのサステナビリティへの想いについてインタビューをおこなった。

取材を行ったのは2023年11月12日(日)に閉店した「imperfect 表参道」

必要なのは、救済ではなく根本的な課題解決

[imperfect]代表・佐伯美紗子さん。2008 年、新卒で⼤⼿総合商社に入社。2019 年より[imperfect]の⽴ち上げに携わり、同社マーケティング部⻑に就任。その後、2022年8 ⽉より代表取締役に就任した

——社会問題に対する解決意識がうまれるきっかけとなるようなできごとはありましたか。

小学校6年から高校12年までを、父の仕事の都合でアメリカのテキサス州で住ごしました。父の職場がメキシコにあったため、家族でメキシコを訪れる機会も多くあったのですが、そこで目の当たりにした光景が衝撃的で。同世代の⼦どもたちやようやく歩けるようになったばかりの幼い⼦どもたちが、道端で物乞いをしていました。当時は彼らのことを可哀想と感じたので「自分が持ってるお小遣いを渡したほうがいいの?」と聞きました。そのとき、メキシコ人の父の同僚がこう私に説いてくれました。

「一時的に恵むことが、必ずしもいいこととは限らない。今日僕たちが恵んでも、彼らは明日も明後日もこの物乞いの生活を続けることになる。そして、また自分達の子供にも同じことをさせてしまうんだ」

一時的な救済はときに必要ですが、私が見たようなメキシコの子どもたちが置かれている状況を解決するには、経済や社会の仕組みが根本的に解決していかないといけない。それを痛感するきっかけになった体験でした。メキシコで感じた課題意識から、ビジネスを通じて社会をよくする仕組みを作りたいという想いを持ち続けています。

「imperfect 表参道」の店内には、訪れる人々に生産地やコーヒーを身近な存在として感じて欲しいという想いから、コーヒーの苗木も植えられていた

——新卒で総合商社に入社されたことにもそうした想いが関係しているのでしょうか。

幅広く社会に携わることができる商社で社会の構造を再構築するチャンスを探していて。カカオやコーヒーを調達する仕事に携わるなかで、農家の方々が抱えている労働環境や生活環境、自然環境などの問題を知りました。仕事に携わっているからこそ具体的に考えられる食と農の領域から着手することで、より課題の本質を見つめられるのではないか。そんな考えから、商社の仲間と共に始めたのがimperfect事業です。食は地域の文化と密接につながっており、生きる上で必要不可欠なもの。だからこそ、ビジネスとしても意義を見出しています。

——カカオやコーヒー、ナッツなどの生産地を支援するプロジェクトも展開されていますが、支援において重要視しているのはどのようなポイントですか。

継続する仕組みを作ることです。私たちも農園とずっとご一緒できればと思っていますが、私たちが永続的にサポートできるわけではありません。そんなとき、農園の方々が何もできなくなってしまうのはサポートの仕組みとしては好ましくありません。「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という言葉があるように、私たちがいなくなっても自ずと改善に向かっていく第一歩の後押しをしていきたいです。

[imperfect]のチョコレートやコーヒーを味わう人々と、生産者のイラストが並ぶ。消費者と生産者をつなぐというインパーフェクトの理念が表れている

みんなが手に取れるサステナブルを

——“継続する仕組み”には、良い商品を買い支える食べ手の存在も大切ですね。消費者に商品を届ける上で、どのようなことを意識されているのでしょうか。

チョコレートやコーヒーは、わたしたちを幸せにしてくれるもの。だからこそ、サステナブルであるということと購入してくれた方自身の幸福が両立されないと続かないと思っています。「可愛い」「食べてみたい」そんな動機から手に取ったものがサステナブルだった——そんな自然な関わり方ができれば。作り手の独りよがりではなく、どうすれば消費者の方がメッセージを受け取ってもらえるのかを日々模索中です。

——POPUPECサイト、コンビニでの商品販売など、広範囲にわたる事業展開が印象的です。普段からサステナブルを意識していない層にも商品を届けようとされている点にはどのような意図があるのでしょうか。

もともと一部の人だけがサステナブルに取り組むことよりも、社会全体を変えていくことを目指したいという動機から事業をスタートしたので、今のやりかたは、当初の目標を少しずつ形にしている段階です。地域や施設、そこに来るお客さまによって提供形態を変えることで、場所に応じた伝え方についても考えています。わたしたちにとっては、お店はひとつの方法でしかない。お客様のニーズに合わせてその方法を選択することで、原材料や原産国のことを知ってもらえるきっかけがつくれれば。サステナビリティを誰にとっても身近なものにしていきたいです。

その取り組みのひとつとして、店舗では、ご来店いただくお客さまと一緒に環境保全や農家の自立を支援するプロジェクト「Do well by doing good.投票」を展開しています。

「Do well by doing good.投票」とは、店舗で商品を購入した方に投票チップを渡し、3つのプロジェクト候補の中から「最も応援したい」と思うプロジェクトに投票をしてもらう取組みのこと。1年間の投票期間で、投票数が多かったプロジェクトを、[imperfect]の売上の一部を使って現地で実施する。写真は「imperfect Coffee Stand Shinjuku」の投票ボックス/Photo courtesy of imperfect

じっくりプロジェクトの説明を読んでくれている方がいたり、子どもたちが投票してくれていたりするところをみると、とても嬉しいです。[imperfect]を通して、みなさんが生産国のことを身近に感じたり、アクションを起こしたりするきっかけが作れればと考えています。そうした行動や想像力の積み重ねが、きっと本当の「おいしい」に繋がっていくはずですから。

Photo courtesy of imperfect

生産者と消費者、両者の幸せを考え、ウェルフードを届ける[imperfect]。佐伯さんが語ってくれたサステナブルな社会の仕組みに、不完全な社会がより良い方向に向かう一歩をみた。

消費者として大切なのは、遠くの生産国や自分たちの生活に思いを馳せることなのかもしれない。その選択の一つとして、[imperfect]は常に私たちの日常に寄り添ってくれている。

imperfectのオンラインショップはこちらから

imperfect Coffee Stand Shinjuku
場所:新宿マルイ本館1F(東京都新宿区新宿3丁目30-3
営業時間:8:30〜20:00
熟練のバリスタが淹れたハンドドリップやエスプレッソドリンクなどこだわりのドリンクを楽しめる。限定ドリンクやコーヒーと相性の良いチョコレートやナッツも販売。

imperfect
HP https://www.imperfect-store.com
IG  @imperfect_store_japan

Photo by Tameki Oshiro @tameki_oshiro
Interview & Text by Rin Inoue
Edit by Yoshiki Tatezaki

 

 

 

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