
ワインから感じるオレゴンのローカリティー
カリフォルニアワイン≠アメリカワイン
ワインを飲みはじめてからしばらく経つが、長年疑問に思っていたことがある。
フランスワイン、イタリアワイン、ドイツワイン…インポートワインはジャンル分けされるとき、大半はその国名を冠する。
しかし、アメリカだけはなぜか「アメリカワイン」とあまり呼ばない。というか「カリフォルニアワイン」という単語しかまず耳にしない。
カリフォルニアが一大産地だからというのももちろんあるだろうが、国産のワインも日本ワイン→北海道ワイン→余市ワインと細分化されていくもの。
一番外側のスタートで国名がないことは、カリフォルニアのブランド力なのか。ワシントンでも、オレゴンでも生産されているのにな、ごにょごにょ。
そんなことを考えていたら、5月に物流センターで開催されたRAW WINEで、あるオレゴン州のワイナリーとオレゴンワインのインポーターが出店していたのである。RAW WINEは国内外からナチュラルなワインの作り手が集う見本市。オレゴンといえば、クラシックなピノノワールのイメージが強かったので、ナチュラル?!しかもイタリア品種?!と、ギャップが面白い。
ということでカリフォルニアワインがアメリカワインの全てじゃないということを打ち出すためにも、インポーターの清水宏二さんのボトルショップ[QUENCH WINE]でオレゴンワインの魅力に迫る。

笑顔で迎えてくれた店主・清水さん。TシャツのPDXは、ポートランド国際空港の略称。オレゴン愛。
2018年にインポートを始め、西小山の地に店を開いたのは2022年。今では、10ワイナリー・51種ほどを取り扱う。

店内にはボトルワインのほか、クラフトビールの販売も。
冷涼地帯から砂漠地帯まで、州内で気候が大きく変わるのも特徴の一つ。そのため、育てられるブドウの品種も実は幅広い。ただ、オレゴンで栽培される品種は、圧倒的にピノノワールが多いのだ。
しかし、[QUENCH WINE]で取り扱うオレゴンワインはピノノワールにとどまることはない。綺麗な酸と果実のうまみを持つ、フードフレンドリーでドリンカブルなワインたち。
味を見ると、作り手の顔を思い出し、どこか納得する。全てのワイナリーに足を運ぶ清水さんだからこその言葉だが、同時に、それぞれのワインには作り手の人柄が反映されているのだとも思う。

[QUENCH WINE]は、「喉の渇きをうるおすワイン」という意味。ロゴは、オレゴン州のシンボルであるMt.フッドにコロンビア川、ワイングラスから成る。
「ナチュラル」というよりかは、「ミニマムインターベンション」。
ワイン作りになるべく介入せず、仕事はブドウにしてもらう。自分たちはあくまで見守りながら、その力を発揮しやすい環境を整えるにとどめる。
こうした考え方とも通じるのが、「LIVE認証」や「サーモンセーフ」といった環境への取り組みだ。

LIVEは、Low Input Viticulture & Enologyの略。農薬などの使用を抑えながら、生物多様性や土壌、水などの環境を守り、持続可能なワイン作りを目指す認証制度。一方、サーモンセーフは、サケが産卵し繁栄できる綺麗な河川環境を守るため、行政区画ではなく「流域」単位で水質や生態系の保護に取り組む認証のこと。

実際に認証を受け、ロゴが印字されているボトルも見せてもらった。
しかしまだまだオレゴンワインというカテゴリー自体の認知度は低い。まず知ってもらうところからという意味もあり、[QUENCH WINE]ではグラスでもワインを提供。
実際飲んで選べるというのは、酒屋角打ちの圧倒的利点だろう。

セラーに眠るワインは全てオレゴンワイン。そんな場所は、日本ではまず他にない。
せっかくなので、RAW WINEで出会った生産者Brianneさんの[Day Wines]を試飲させてもらうことに。オレゴンでナチュラルなワイン作りをする生産者の中でも、先駆者的な存在だという。
Brianneさんにとってワインは、そのブドウが育った土地と、その年をアーカイブするものでもある。
例えば20年もののワインを飲む。それは20年前、その土地で育ったブドウを、時を経て味わうということ。まさにタイムカプセルだ。
例えばピノノワールなら、「ブルゴーニュみたい」を目指すのではなく、オレゴンらしさを表現することが一番だという。どこかを真似するのではなく、土地の状態をきれいに反映しているワイン。そこに魅力とロマンがある。

Zibibbo/Day Wines
イタリア品種のマスカット(アレキサンドリアマスカット)100%のオレンジワイン。白茶のようなタンニンとしっかりとした酸。甘いハーブのニュアンスに、アプリコットのような黄色い果実味が続く。
オレゴンワインのキーワードの一つは、「アルチザン」。つまり、職人。
ただ、頑固な職人というよりは、伝統に縛られることなく、挑戦し、新しいものを生み出していく柔軟な職人。

Babycheeks/Day Wines
マルベック、タナ、カベルネフラン。ジューシーなイチゴのようなニュアンスと、鉱物的なミネラル感。
アメリカでも、ワインは案外多くの州で作られている。そして清水さんによれば、現地では「Buy Local(バイローカル)」の意識も強いという。地元を応援するために、地元で作られたものを選ぶ。ワインもまた、そんなローカルな消費の一部なのだ。
各地の地酒を飲み比べる楽しみもある日本からすると若干馴染みはないが、まず地元のワインに手が伸びるというのは、ある種究極の地産地消だろう。
カリフォルニアワインもいい。けれど、「アメリカワイン」という大きな括りの向こうには、それぞれの土地で、それぞれの飲まれ方をするワインがある。
たまには見たことのないブレンドや、飲んだことのない味を探しに、オレゴンワインに手を伸ばしてみるのもいいかもしれない。
そして、ポートランドの食やカルチャーが東京にやってくるイベント「PORTLAND, OREGON BASE CAMP」が、今年も10月3日(土)に池尻で開催される。現地からシェフたちが来日するほか、オレゴンワインやクラフトビールの販売も予定。この機会に、ポートランドの“今”を味わってみるのもいいかも。
Information)
PORTLAND, OREGON BASE CAMP
日程:2026年10月3日(土)
時間:10:00~16:00
場所:Marked池尻
東京都世田谷区池尻2-4-5 HOME/WORK VILLAGE 118
※PORTLAND WILD TABLEは有料・事前予約制
IG:@odnarotravel店舗情報)
QUENCH WINE
東京都目黒区原町1-11-3
営業日・営業時間はIGをチェック
IG:@quench_wine
Photo by Yuki Nasuno(写真 那須野友暉)@yuki_nasuno
Text by Terra Owen
RiCE.press
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