連載「琥珀色の余韻を過ごす〜スコットランド滞在記〜」#2

渡航後初の蒸留所巡り。世界一のシングルモルト[グレンフィディック蒸留所]へ


Yuki HiguchiYuki Higuchi  / Mar 10, 2026

こんにちは、ひぐです。スコットランドでの生活をはじめて、1ヶ月が経ちました。最初の1,2週間は仕事を覚えたり、ほとんど英語が聞き取れない中、人間関係を築くのに必死でくたくたになる日々。今なお仕事では分からないこともたくさんあるし、英語が聞き取れずにあいまいなコミュニケーションを取るときもありますが、それでも少しずつ生活に慣れてきました。

実はもともと住む予定だった家への入居が難しいという話になって、今は職場の屋根裏部屋で生活している状況。周りの協力を経て、なんとか家が見つかりそうでホッとしていますが、仕事に行くのに車が必須の距離感だそうで。予想外の出費にはなりますが、これで蒸留所にも行きやすくなるかもしれないと思うと、良かったのかもしれません。

さて、本連載2回目では、ウイスキー蒸留所のツアーに参加してきたので、そこで聞いた話も参考にしながら、ウイスキーが生まれるまでの話をしてみます。

自然が生み出す芳醇な飲み物

ウイスキーの原料は、たった3つ。何かご存知ですか?

穀物、水、酵母から生まれます。このシンプルな原料からつくられる飲み物は、樽での長い時間の熟成を経て、多様な香りを纏います。穀物に使われるのは大麦麦芽やとうもろこし、ライ麦などがメジャーどころ。

個性が際立つことから、近年人気のシングルモルトウイスキーは、大麦麦芽原料のウイスキーだけを使った単一蒸留所のウイスキーを指します。製造方法や樽の違いをはじめ、水源や立地によって、各蒸留所ならではのウイスキーが生まれるのがおもしろいところ。

ひとくちにウイスキーといえども個性は本当にさまざまで、正露丸のにおいとも称される香りがガツンと効いたウイスキーもあれば、海辺で潮風を浴びながら熟成されたウイスキーには潮の雰囲気が染み付いている。僕が住んでいるスペイサイドは、谷がちなエリアで青リンゴや洋梨を彷彿とさせるフルーティな香りのウイスキーが多く存在しています。

そんなシングルモルトウイスキーで世界一の販売量を誇るのが、スペイサイドにある[グレンフィディック蒸留所]です。

世界初のビジターセンターをつくった[グレンフィディック蒸留所]

[グレンフィディック蒸留所]は1886年に創業してから、今に至るまで家族経営を貫いています。そんな伝統的なイメージがある一方、1963年に世界で初めてシングルモルトの輸出/普及に成功したり、1969年にこれまた世界初のビジターセンターを蒸留所につくったりと、革新性を備えた蒸留所。

現在世界で1番売れているシングルモルトで、青リンゴを思わせるフルーティな印象かつバランスの取れた飲みやすいウイスキー。手に取りやすい価格なので、これからウイスキーに挑戦していきたい人にもオススメです。

蒸留所ツアーでは製造現場を見ながら、ガイドが一緒に回ってくれます。ウイスキーがどのように生まれるのか、追体験できるわけですね。

それでは、ざざっとウイスキーができるまでの工程を見てみましょう!

ウイスキーが生まれるまで

まず前提として[グレンフィディック蒸留所]は、世界一のシングルモルト販売量を誇るため、工場が大きいです。各工程ごとに別の建物に連れられていき、香りや温度含めて五感で楽しめるのがツアーの良いところ。

製造工程を知らずともウイスキーを楽しむことはできますが、どのように生まれているかを知るだけでも楽しみ方は深まるような。慣れ親しんでない方にも分かるように説明していけたらと思います。

①仕込み(糖化)

ウイスキーの原料は3つとお伝えしました。まずは酵母がアルコール成分をつくりやすいように、大麦麦芽と温水を混ぜ合わせて、糖分を生み出します。上の画像で金色の蓋がついている容器は下に長く伸びていて、なんと1基あたり約8万リットル(⁉︎)が入るんだとか。このあとの工程で酵母が元気に過ごせる環境づくりをしていくわけですね。

ここで生み出されるのが麦汁。そう、ここまでビールと同じなんです!

②発酵

続いて、①でつくられた麦汁をお酒に変えていくのが発酵の過程。酵母を麦汁に加えて、文字通り発酵させていきます。グレンフィディックでは40時間くらい発酵させるみたいです。ツアーでは発酵中の液体の香りを嗅がせてくれましたが、発酵の過程でCO2が生まれる影響により少し気絶しそうになる刺激がありました(笑)

酵母の代表的な学名は「サッカロマイセス・セレビシエ」。なんだか呪文みたいですね。

③蒸留

ここがビールとの大きな違い。[グレンフィディック蒸留所]では、2回の蒸留を経て、度数の高いアルコールをつくります。蒸留することで、香りと風味が凝縮されてクリアなお酒に。蒸留工程の違いでウイスキーの重厚感が変わってくるとされています。

画像に見えている帽子のような形をしたものをスチルというのですが、その形もさまざま。とんがりハットの先っぽの角度や長さの違いも、ウイスキーの質感に影響を与えています。

④熟成

そしていよいよ最終工程が熟成です。ここで長い年月をかけて樽の香りを纏い、みなさんの手元にウイスキーとなって届きます。ウイスキーは熟成年数が長いほど、金額も高くなる傾向にあるのですが、ただ単にヴィンテージだからというわけではなく、熟成工程で樽から水分とアルコールが蒸発することも大きく影響しています。

30年熟成すると満タンにしていた樽の中も蒸発によって、およそ半分近くにまで減ってしまう。この目減りしたウイスキーは、昔のウイスキー職人が「天使が飲んでるに違いない」と言って『エンジェルズシェア』と呼ばれています。なんともロマンチックな人がいたものですね。

そして、スコッチウイスキーと名乗るには、最低3年以上の熟成が必要。「石の上にも三年」という言葉が日本にはありますが、短くない熟成期間を経るからこその旨みがウイスキーには凝縮されているのです。

長い年月の余韻に浸る

ツアーの締めくくりはテイスティング。今回のツアーでは12年/15年/16年/18年のウイスキーをいただきました。

例えば18年もののウイスキーとなると、今から18年前に誰かがつくって、熟成させたウイスキー。その事実だけでも驚きを覚えるのは僕だけでしょうか。僕が12歳のときにつくられたものを、いま口にできることにただただ感動。

はじめに青リンゴや洋梨のような香りが広がり、蜜の詰まったりんご、バニラのような甘さも続いていく。長い余韻が残り、鼻から複雑な香りが抜けていく至福のひととき。そんなうっとりとする時間をつくってくれるのがウイスキーという飲み物だと思います。

個性豊かなシングルモルトウイスキーの旅はまだまだ続きます。

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