エディターズノート

「RiCE」第26号「日本のサケ」特集に寄せて


Hiroshi InadaHiroshi Inada  / Dec 6, 2022

 RiCEの通算第二六号は日本のサケ特集です。サブタイトルに「麹がつなぐ日本酒・焼酎・クラフトサケ」とあるように、昨秋に出した特集「日本酒は宇宙だ」を継承しつつ、枠を広げた内容となっています。

 日本のサケといえばまず真っ先に日本酒が浮かぶでしょう。海外でもそのままSAKEと表記します。清酒と呼ばれる透明のお酒。御神酒といって神様にお供えされるのも主に清酒です。

 次に浮かぶのは焼酎でしょうか。醸造酒である日本酒に対して焼酎は蒸留酒であることが最大の違い。また清酒が米だけを主原料にしているのに対して、焼酎は米に限らず芋や麦などを原料としたものも人気です。

 ではクラフトサケはどうでしょう。初めて耳にする方も中にはいると思います。クラフトサケは、ここ一年で急速に市民権を得たと言えるお酒の新ジャンル。日本酒ファンの中でも新しいもの好きな先端層を中心に早くも人気です。今夏にはクラフトブリュワリー協会も創立されて話題を巻きました。

 現在七蔵が加盟している同協会による定義では、「日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら、従来の“日本酒”では法的に採用できないプロセスを取り入れた新しいジャンルのお酒」とのこと。日本酒の原料といえば言うまでもなくお米なわけですが、逆にいうとお米以外は使えない。クラフトサケでは、フルーツやハーブなどの副原料をプラスすることで、これまでにない斬新なフレーバーのお酒を続々と産み出しています。この辺り、クラフトビールの自由さと近いものがありますね。

 その一方、実は昔ながらのどぶろくなども同じ分類に入るというからややこしい。なぜなら清酒を造るのに必要な、絞る(お酒と酒粕を分ける)行程を踏まないからだそう。どぶろくといえば清酒が生まれる遥か前から存在する、いわば日本のサケの元祖といってもいい存在。日本のサケ文化の最新と最古が一周回って出会っているわけで、この辺りも実に興味深い。

 いずれにしろ日本のサケに共通しているのは、どの酒造りにも麹が欠かせないということ。麹とは米由来のカビの一種で、これが無ければお米で酒は醸せません。麹には米のデンプンを糖化させる効果があり、酵母が糖分をアルコール化することで初めてお酒になる。つまり麹は酒造りのスターターであり、酒質を決める決定的な最大要素でもあるわけです。

 麹にも種類があって、日本酒に適しているとされる黄麹、焼酎に適しているとされる黒麹と白麹がありますが、近年ではあえてセオリーを超えた使い方も生まれているようです。いずれにせよその作用の実態はまだ今の科学では解明しきれていないとか。

 これだけ多様かつ自由に広がる日本のサケが、世界に類を見ない麹菌というミクロかつミステリアスな存在に拠っているという事実には感動を覚えます。飲み手も造り手も、老舗もスタートアップも、誰もが皆で麹に感謝すべきでしょう。日本のサケカルチャーをつなぎ支える麹に乾杯!

Illustration by Masakatsu Shimoda

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