連載「僕に発酵できないものはない」#6
乳酸菌を理解しザワークラウトを作る!
日々発酵食品を自家製し発信しているとよく言われることは自分もやってみたい!という熱意のある言葉たち!
しかし目に見えない微生物を操り、腐敗菌を遠ざけ美味しい発酵食品を作るのはみなハードルが高いように感じているよう。
そんな発酵食品作りを初めて作りたい方にお勧めなのが乳酸菌を使った発酵食品作り。
材料も手順も少なく作業工程もシンプル、発酵期間が短いものも多く何より美味しい。
実際僕も何年も前にキャベツを乳酸菌で発酵させたザワークラウト作り(なんと材料はキャベツと塩のみ!)が初めての発酵食品作りでした。
乳酸菌という名の通り完成した食材は乳酸由来の酸味があり、これが日本人の味覚と相性が良く、例えば味噌や糠漬け、ヨーグルトに含まれる酸味は全て乳酸菌が作り出した乳酸の酸味です。
今回は改めて乳酸菌を理解しつつ、僕が思う最もシンプルで美味しい乳酸菌発酵食品作りをご紹介します。
そもそも乳酸菌とは特定の菌種を指すものではなく、糖類を分解して乳酸を作る菌の総称のこと。
なおかつ人にとって不快なにおいや有害な物質を作らない菌を、僕たちは乳酸菌と呼び発酵食品作りに利用します。
例えば牛乳に乳酸菌を混ぜると乳酸菌は牛乳中の乳糖を分解し乳酸を作り出し酸っぱいヨーグルトが完成といった具合です。
乳酸菌は空気中や土壌、海中など自然界のあらゆる場所や我々ヒトの腸内にも存在しています。
今回ご紹介するのは赤キャベツを使ったザワークラウト作り。
レシピといえるほどのものもなく用意するのは赤キャベツとその重量の2%の塩のみ。 赤キャベツを選んだ理由は比較的スーパーでも手に入りやすく、安くておいしくなる。 そして最大の理由は後述しますが発酵前と発酵後の変化が非常に分かりやすい食材のためです。
清潔なゴム手袋もしくは手をよく洗い熱湯消毒し殺菌した大きなボウルの中に赤キャベツをカットし入れていきます。
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この時重さを計りながら入れると後々便利です。 今回は千切りにしましたがざく切りにしても良いですしお好みで大丈夫です。
キャベツの重量の2%(濃い目の味が好みなら3%で!)のお塩を全体にまぶしよく混ぜます。
塩が均等に広がるように。
漬物を食べたときに美味しいと感じる塩分濃度が2~5%と言われていること、乳酸菌の性質は耐塩性(高濃度の塩分の中でも活動できる性質)を持つことを利用するんです。
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30分ほど置いておくと塩がキャベツの中の水分を引き出し、とてもきれいな紫色の水がキャベツの中から出てきます。
こうなったら準備完了!
密閉できる容器に詰めていきます。
今回はお店で準備したので真空パックにしましたが、ご家庭にない場合は消毒殺菌した瓶の底に押し込むように力強く詰めて赤キャベツが空気に触れないようにしっかりと(腐敗菌やカビは酸素があると活動しやすいので)!
ボウルに出てきた紫色の綺麗な水分も一緒にいれます。
お好みでハーブやスパイスを入れてもよいでしょう!
上から重りをして瓶のふたを閉め、あとは常温で保管していきます。
保管している間に目に見えないミクロな世界に目を向けてみましょう。
乳酸菌はお野菜の表面に生息していてお野菜をそのまま置いておいても発酵はしません。
野菜を切り塩をすることでようやく乳酸菌が利用できる糖分がお野菜の細胞の中から外に出てくることで乳酸菌は活動し始めます。
また同時にでてくる水分にお野菜が浸かっていることも重要で、酸素がない水中下では腐敗菌が活動しづらく乳酸菌が活動しやすいという人間になんとも都合の良い性質を利用することもできます。
今の気温だと1週間から10日間、常温に置いて様子を見てみましょう。
今回は1週間置いてみました。
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醸ってる!!
見るからにめちゃくちゃ赤くなっている!
赤キャベツに含まれる色素はアントシアニン。
酸性の環境では赤くなる性質があります(リトマス試験紙と同じ原理です)。
つまり乳酸菌が乳酸を出せば出すほど紫→赤に色が変化していくので、発酵具合がとても分かりやすい!
瓶から出したときに不快な匂いや赤以外の変色が見られたら雑菌が増殖している可能性があるので止めておきましょう。
右が1週間置いて発酵させたもの、左が切り立てのもの。
1週間から10日間、切ったお野菜を常温に置くというのは未体験な方には不安になるかと思いますが、食べてみると心地よい酸味と千切りでもしっかりと感じるぱりぱりとした歯ごたえ。
このまま漬物としても美味しいですし、ドイツではソーセージと一緒に煮込み料理にしたり。
酸味と歯ごたえがあるので脂っぽいお料理に添えるとよい箸休めになります。
是非挑戦してみてください!

- enso chef
藤井 匠 / Takumi Fujii
六本木[ブリコラージュ ブレッド & カンパニー]の開業時から料理長として活躍。2022年4月、鎌倉に[enso]をシェフとしてオープン。鎌倉を中心とした地場の野菜に、自ら発酵させて作る調味料をかけあわせた料理が注目される。
IG @enso_osaji
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