アパレルと酒造、二つの現場から語るワークウェア論
対談「FRESH DRINK SERVICE」 南貴之×「中村酒造場」中村慎弥
世界中で作られているものを独自の視点で再構築し、新たな製品として提案するプロジェクト「FreshService」が展開する、飲食にまつわるシリーズ「FRESH DRINK SERVICE」から、鹿児島の酒蔵「中村酒造場」とのコラボレーションアイテムがリリースされた。「なかむら」といった定番銘柄から、焼酎としては未体験のフレーバーが広がる革新的なシリーズ「Aqua」と「Flare」などを手掛ける要注目の酒蔵である。
商品の発売に際してRiCE.pressでは中村酒造場6代目杜氏の中村慎弥さんと、FreshServiceのディレクターである南貴之さんが登場。実際に酒蔵という現場で働く中村さんと、これまで数々のファッションブランドを手がけ、ユニフォームを作ってきた南さん。フィールドの異なる二人が交差しうまれた画期的なワークウェアとはどんなものなのか? コラボレーションアイテムの魅力と共に語ってもらった。
中村慎弥(写真左)明治21年創業、希少な石造りの麹室が残された焼酎蔵「中村酒造場」6代目杜氏。東京農業大学の醸造科で学び、さまざまな日本酒蔵、焼酎蔵を経て故郷へとカムバック。
南貴之(写真右)アパレルや食、あらゆるカルチャーを横断するクリエイティブディレクター。alpha.co.ltd代表として、人気ファッションブランド「Graphpaper」や参宮橋にある食とカルチャーのセレクトショップ[寄]なども手掛ける。
―まず、今回のコラボレーションが始まったきっかけを教えてください。
南 焼酎に興味を持って南九州を回っているときに、慎弥の蔵に行ったんですよ。そこで繋がりができて、慎弥は洋服好きだから「展示会行ってみたいです!」と言われて。「じゃあ来たらいいじゃん」って。その流れで「制服って作れないですかね?」と提案されました。ちょうど僕らがやっている FRESH DRINK SERVICEでは飲食に関わる服、ワークウェアやユニフォームを作っていたから、やってみようとなりました。
中村 僕は以前からGraphpaperの洋服が好きだったので、“いつか一緒に仕事ができたらいいな”っていう願望はあったんです。それまでは南さんの服をあくまで自分用の服として買っていたけど、自分だけじゃなく、スタッフみんなが仕事中に着ることで一体感が出ると思いました。
酒蔵のユニフォームって、基本的には地元の作業服店で買ったTシャツにロゴ刺繍、というのが主流なんですが、自分たちは焼酎をつくることにとことんこだわっているからこそ、身に纏うものも同じようにこだわりたいなと。
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―今回は色々なアイテムを作っていますけれど、どのようなセッションを重ねて制作して、完成に至ったんでしょうか?
南 最初はTシャツ1枚くらいのつもりだったんですよ。でも慎弥が「あれもこれも」って(笑)。でも、焼酎蔵で働く人が着るということを突き詰めていくといろんな機能が必要だし、結果的にアイテム数も増えていきました。
―「焼酎蔵だからこそ必要な機能」というのは具体的にはどんなものでしょうか?
中村 酒蔵って、夏はめちゃくちゃ暑くて、冬は本当に寒いんです。九州というイメージもあり夏の暑さがフィーチャーされますが、実は冬の寒さの方が厳しい。鹿児島の冬は短めだけれど、その間に辞めてしまう子も多いくらい。だから寒さを防ぐ機能が必要です。他にもグリースを塗る作業で油分がついたりするので、防水・撥水・防汚という機能は必須ですね。
今回作ったウェアは、油や汚れがついても弾いてくれて、洗えばきれいになる。帽子なんかも柔らかくて、洗濯機でガシガシ洗えます。機能性が上から下まで行き届いていて、本当にありがたいです。
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―蔵ではもう実際に着始めているんですか?
中村 はい。僕より蔵人たちの方が着ているくらいです(笑)
―どんな反応がありました?
中村 蔵人からは、「奥さんから褒められた」とか「子供たちにパパの着てる服かっこ良くなってるって言われた」とか、ポジティブな反応をたくさん聞きます。
このウェアを通して、蔵の近くの小中学生たちが「あそこで働いている人たち、なんかかっこいい服着てる!」って憧れてくれたら理想ですし、「かっこいいことやってるな」って自然に周りに伝わっていったらいいなと思っています。
南 たしかに今回のコラボで、ここで働きたいって人が増えたらいいよね。
あとは、全員が同じものを着ることで、「中村の人たちだ」ってぱっと見たときのチーム感が出ますよね。「群のかっこよさ」ってあるじゃん。
―若い人はもちろん、ずっと酒蔵を支えてきた人、みんなが同じユニフォームを着ているの確かにすごくいいですね。
中村 それこそ南さんの作る服のかっこよさです。月並みな言い方だけど、老若男女どの年代の人が着ても似合うフォルムやかっこよさが、南さんの服にはあると思う。パッと見は素朴でシンプルな印象だけど、着てみると全然違う。みんなで揃って着た時にも、改めて感じましたね。
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SERVICE WORK TEE “NAKAMURA”
Price: ·6,600(tax in) Size : S,M,L,XL Color: WHITE, NAVY
飲食店やサービス業の現場に向けた「FRESH DRINK SERVICE」のユニフォームTシャツに、フロントには中村酒造場のロゴが、バックにはタイポグラフィが整然とプリント。程よくハリのある生地感でシルエットも崩れにくい優れもの。「何度洗濯しても、ずっと綺麗に撥水してくれてすごいんです」と中村さん
―Tシャツはお客さん目線だと手に取りやすい商品ですよね。バックプリントの小さな英語の文字は、何が書かれているのですか?
南 これは中村酒造場の信念というか、スピリットみたいなものですよね。
中村 ミーティングした時に、どういう想いで焼酎を作っているかを断片的に話しました。今まで頭の中にはあったけど、うまく言語化できてなかったようなこと。それを今回FreshServiceチームが整えて形にしてくれました。
“プロセスに誠実さを、手仕事に技を。精神に伝統を。創造の技において、誠実さはすべての基盤となる。職人技とは単なる労働ではなく、技と魂の結晶である。そして伝統は過去から受け継ぐものではなく、今を形づくり、未来を導く力となる。”大事にしているメッセージを英語にしたものです。
南 せっかくなら海外にも届くプロダクトにしたかったんですね。海外だと日本語の「焼酎」は理解されない気がしたから、英語をメインにあしらいました。デザイン的にも英語があった方がいいかなと。ただ全部英語だと微妙にズレる気がして。僕は九州の方の酒屋でおじさんが着ている焼酎蔵Tシャツ、漢字がドーンと入っているようなものが大好きなんですけど、そんな焼酎Tシャツのような「いなたさ」もありつつ、かっこよさもある。クラシックと現代が融合したデザインを目指しました。
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WATERPROOF TACTICAL SHELL “NAKAMURA”
Price : ·31,900(tax in) Size : M,L Color: BLACK
ゆったりとしたシルエットに大きめのフードが印象的なジャケット。フロントの縦ジッパーを開けると現れる内部ポケットには、スマホやモバイルバッテリー、タバコなど様々なアイテムをひとまとめに収納可能。
南 これはシェルですね。フードもあって、寒い時に羽織として使えます。ポケットが大きくて、携帯やAirPodsなど、色々収納できます。酒蔵で働く人は、お酒を作るだけじゃなくて、出張や配達もあるから。そういう時にも使えます。
中村 僕自身出張も多いので、蔵からそのまま移動してイベント会場に直行することもあります。普段から着ているものでそのまま外の仕事もできるっていうのが、1番自然体でカッコいいなって思うんです。
あとは、蔵業務をしてると携帯やペンがぽろっと落ちちゃうこともあります。そこがケアされているのも嬉しい。自分たちの仕事をよく観察いただいたというのが、完成したウェアから伝わりますね。
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PERTEX® QUANTUM AIR MINI RIPSTOP SNAP JACKET “NAKAMURA”
Price: ·37,400(tax in) Size : M,L Color: BLACK
スナップボタン仕様のノーカラージャケット。中綿入りで軽量ながらもしっかりとした保温性。袖の取り外しでレイヤリングアイテムとしても活躍しそう。この一着で様々なスタイルや気候に対応できる。
南 このジャケットはインナーに着てもいいし、もちろん単体でも着られます。袖が取れるので半袖にもなるから、蔵で手を動かす作業の時にも便利な機能です。
―袖が取り外しできる機能いいですね。普段の生活でも便利そうです。
南 酒造目線での機能性と、ファッション目線での機能性って、実はけっこうリンクしているところがあります。蔵オンリーの特殊な機能というよりは、普通に都市生活でも使える機能なんですよね。
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CORPORATE DECK SHOES “NAKAMURA”
Price: ·13,200(tax in) Size: 25,27, 28.5 Color: BLACK
120年以上の歴史を持つ久留米の「アサヒシューズ」が製作した、日本製デッキシューズ。幅広のワイズ設計と独自のラバーインソールにより、ストレスのない履き心地を実現。シュータン部分に刺繍された控えめな中村酒造場のロゴがミニマルながらも主張。
―スニーカーは履き込んで味が出てくるのもかっこよさそうですね。
中村 いい素材で、価格的にも決して安くはないものを日常的に身につけるので、うちの職人たちも最初は抵抗があったり、汚れたら「うわっ」てなっていたりしました。その度に僕は「これクタクタになるまで履くのがかっこいいっしょ」って言っています。一年、二年と使うごとに本当の味が出てくるんじゃないかな。
南 まさにエイジング、蒸留後に焼酎を数ヶ月熟成させてから出荷させるのと一緒だね。
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―南さんは他にも色々なワークウェアや、ワークウェアからインスピレーションを受けたような服を作っていますけれど、どのような思いから作っているのでしょうか。
南 自分が飲食店のプロデュースをはじめた時に、全く欲しいと感じるユニフォームが無かったんです。でもユニフォームをちゃんとしたものにしないと、全体の世界観が作れないから。きっと他にも困ってる人いるんじゃないかなと思ったので、じゃあ自分たちが作ろうと言うのが最初のきっかけです。
あとは、男の人はなんだかんだ働いている姿が1番かっこいいと僕は思っています。だから自分はワークウェアを作るべきかなというのもある。
―「働いてる男性が1番かっこいい」っていい言葉ですね。南さんは中村さんの働いてる姿も実際に見てると思うのですが、中村さんのここがかっこいいポイントっていうのあれば!
南 うーん…特にないかなぁ(笑)
中村 ないか(笑)
南 いやいや、蔵に入るとこういう顔するんだって思ったよ。東京で「服好きの青年」として会った時とは顔つきが違う。やっぱり服も似合ってるしね。
――南さんのワークウェアは、その人の“1番かっこいい瞬間”をさりげなく、でも確かに引き上げてくれる服なんでしょうね。
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CORPORATE UNIFORM APRON “NAKAMURA”
Price: 13,680 (tax in) Color: BLACK
横を向いた時にチラリと見えるひらがなの「なかむら」がポイントのエプロン。長時間つけても首に負荷がかからないようなデザインになっている。
南 ありがとう。今まで僕らはBtoCでやってきたけど、これからはBtoBのサービスもやりたいんです。今回のコラボレーションはその最初の段階でもあります。
―「中村酒造場」のユニフォームというBtoBの仕事でもありながら、一般の人に開いたBtoCでもある。可能性が広がっていく新しい形ですね。
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中村 地方の伝統産業やものづくりをする人や、次の世代の人たちが今回のコラボレーションを見て、俺たちもユニフォームこだわろうって続いてくれたら嬉しい。焼酎だけの話じゃなくて、もっと大きいムーブメントになってほしいです。
南 僕らはファッションの領域がメインではあるけど、同時にお店のプロデュースや飲食店を手がけたりとか、さまざまな領域に踏み込んでいます。ブランディングも最近はファッションブランドだけをやってるわけじゃないですし。やっぱりかけ離れているものの方が、組み合わさったときに面白いものが生まれやすい。ちょっと前まで焼酎蔵のユニフォーム作るなんて思ってもみなかったけれど、こういうトライアルこそが、物事が変わるきっかけなんじゃないかな。
〈FRESH DRINK SERVICE〉
様々な飲食にまつわるアイテムを発売中。グラスや器、今回のコラボレーションのボディとなった撥水、撥油機能がついたウェアなどを多数揃える。
https://freshservice.jp/search?type=product&q=FRESH+DRINK+SERVICEFreshService Headquerters
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2丁目6−7 神宮前ファッションビル 1F
03-5775-4755
https://freshservice.jp/〈中村酒造場〉
今回のユニフォームの発売をきっかけに、中村酒造場のECサイトもオープン。ユニフォームは現在こちらのECサイトのみで購入可能。https://shop.nakamurashuzoujo.com/〒899-4315 鹿児島県霧島市国分湊915
0995-45-0214
https://nakamurashuzoujo.com/Photo by Morita Hikaru(写真 森田 輝)IG @face_hikarumorita
Interview by Shunpei Narita(インタビュー 成田峻平)
Text by Ofuchi Maho(文 大渕真歩)
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