HAVE A FISH DAY! 1日目レポート
食とカルチャーが交わる、“魚”のフェスティバル
10月11日(土)と12日(日)の2日間にわたり、RiCE最新号「魚と生きる」特集と連動したイベント「HAVE A FISH DAY!」が開催された。会場となったのは、旧池尻中学校をリノベーションして生まれた複合施設[HOME/WORK VILLAGE]。飲食店やショップ、ギャラリー、オフィスが点在するこの空間をまるごと使って、魚をテーマにした多彩なプログラムが展開された。今回はその初日となる10月11日(土)の模様をレポートする。
エントランスを案内するイベントポスターを掲げた看板。通りがかる人も思わず足を止める目印に
まずエントランスでは多彩なブースがお出迎え。来場者には[いいちこ]によるウェルカムドリンクと、ノルウェー産シーフードを使ったフィンガーフードが振る舞われた。手渡されたカップを片手に「美味しい!」と声をあげる人や、写真を撮り合う姿も見られ、会場は早くも和やかな空気に包まれる。一口飲むごとに、これから始まるイベントへの期待がふくらんでいくのが感じられた。
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お茶割り、ソーダ割り、グレープフルーツ割りなどから選べる「いいちこスーパー」のウェルカムドリンク。好みの一杯を手に、「いいちこスーパー」の飲みやすさと楽しさを実感する来場者の姿が印象的だった
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ノルウェー産シーフードを使ったフィンガーフード。ひと口サイズの一皿が、大人にも子どもにも大好評
[GABAN]のブースではスパイスのサンプリングが行われ、物販コーナーでは雑誌のバックナンバーやイベント限定Tシャツを手に取るファンの姿も。それぞれのブースに人の輪ができ、少しずつ “HAVE A FISH DAY!” の熱気が立ち上がっていった。
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[GABAN]ブースでは、魚に合うスパイスとして「マーガオ」のサンプルを配布。爽やかな香りを手に取って確かめる来場者の姿も多く見られた
あいにくの天気にもかかわらず、雑誌の読者をはじめ、食に関心のある人々や近隣の家族連れが次々と来場。会場のあちこちでウェルカムドリンクを片手に語り合う姿や、子どもたちがフィンガーフードを頬張る光景も見られた。魚をテーマにした多彩なコンテンツを思い思いに楽しみながら、会場は一日を通して穏やかな熱気に包まれていた。
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エントランス前は人だかりに。ウェルカムドリンクやフードを片手に、笑顔が広がる “HAVE A FISH DAY! ” の幕開け
DRIVE MY FISH ― キッチンカーで味わう魚料理
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会場にはRiCEトラックも登場。初日は[LOS TACOS AZULES]のタコスがふるまわれた
HOME / WORK VILLAGEのグラウンドには、人気店がキッチンカーで登場。[LOS TACOS AZULES]、[Nadi]、[居酒屋ちぇけ]が、それぞれの個性を生かして魚の魅力を存分に引き出した特別メニューを提供した。
[LOS TACOS AZULES]は魚介を使ったタコスで軽やかに、[Nadi]はスパイスの香りで食欲を刺激。そして[居酒屋ちぇけ]では、刺身など本格的な居酒屋メニューをキッチンカーで味わえるという贅沢なスタイルが話題に。
料理を手に立ち止まり、感想を語り合う人の姿も多く、会場は終始にぎやかで温かな空気に包まれていた。普段は店でしか味わえない料理が、この日だけの特別な形で並び、訪れた人たちを次々と笑顔にしていた。
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[LOS TACOS AZULES]で提供されたワカサギのタコス。北海道産ワカサギをカリッと唐揚げにしてサルサ:ベルデと
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季節の食材を活かすカレーで人気の[Nadi]が、この日は特製フィッシュカレーを提供。スパイスの香りと魚のうまみが溶け合う一皿に、行列が絶えなかった
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[居酒屋ちぇけ]が提供した「カツオの酒玄米茶燻し」。本格的なカツオ料理を屋外で味わえる贅沢な一皿
施設内の飲食店でも魚尽くしの特別メニューが登場
HOME/WORK VILLAGE内の飲食店もこの日だけの“魚仕様”に。[Marked]では「かじきまぐろの竜田揚げ定食」が登場。しっとり揚がったかじきまぐろに、だしの香る副菜が並び、ランチタイムを賑わせた。
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[Marked]がこの日のために用意した「かじきまぐろの竜田揚げ定食」。 カリッと揚がった衣の中に、弾力のある身がぎゅっと詰まった一品。噛むほどにうまみが広がる
[洋食api]では、サクサクのアジフライとハッシュポテトなど、魚を使った限定メニューを提供。[いいちこスーパー]とのペアリングも楽しめる一皿に仕上げられ、来場者の注目を集めた。
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[洋食api]がいいちこスーパーとのペアリングメニューとして用意したアジフライとハッシュポテト。焼酎の爽やかながら複雑で奥行きのある風味が、サクサクの衣とポテトの甘みを引き立てる絶妙な組み合わせ
そして[namida]では、森枝幹シェフとのスペシャル魚コラボレーション営業を実施。各回満席となる盛況ぶりで、皿の上には創造的な一皿が次々と運ばれていった。シェフの自由な発想と素材の鮮度が響き合う特別なメニューに、食通たちが舌鼓を打った。
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[namida]の田嶋善文シェフと森枝幹シェフがカウンターに並び、次々と魚料理を仕上げていく。カウンター越しにその様子を眺める客席からは、皿が運ばれるたびに感嘆の声が上がった
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今号の魚特集に登場した魚を軸に組み立てられたスペシャルメニュー。写真は新鮮な魚介を彩り豊かに盛り合わせた刺身の一皿
熱燗と寿司で“温まる”ワークショップ
Midori.soでは、“熱燗部” 部長・湯川玲奈さんによる熱燗部活動を開催。[すしさとる]の黒木佑圭さんがその場で握る寿司を合わせながら、温度や香りの違いを体験するセッションに。
真剣にメモを取る人、頬を緩ませながら燗酒を味わう人──。
湯気の向こうに笑顔が広がる、まさに “HAVE A FISH DAY” らしいひとときとなった。
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熱燗部の湯川玲奈さんが温度ごとの味わいを丁寧に解説。香りや味わいの変化を、参加者とともに体感した
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[すしさとる]の黒木佑圭さんが、その場で寿司を握り熱燗とペアリング。熱燗とともに味わう贅沢な時間
イラストレーター竹井晴日さんと楽しむ、魚のアート
Midori.so Studioでは、RiCE最新号で挿絵を担当したイラストレーター・竹井晴日さんとコラボしたシルクスクリーンワークショップを開催。竹井さん描き下ろしの魚モチーフデザインをTシャツにプリントできるとあって、子どもから大人まで夢中に。この日は竹井さん本人も登場し、その場で似顔絵を描いてくれるスペシャル企画も行われた。
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竹井晴日さんによる似顔絵ブースには、子どもたちの笑顔が集まった。描かれていく自分の顔を見つめるまなざしが印象的
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多くの参加者が楽しんだMIDORI.so Studioによるシルクスクリーンワークショップ。白Tシャツやトートバッグ、巾着への魚モチーフのプリントが可愛いと評判に
また「魚と器。」企画で登場した[starnet]、[NITAY]、[百福]の名店がセレクトした器を販売。さらに、編集部員がセレクトした“魚プリント”のヴィンテージTシャツも限定販売された。誌面の世界観がそのまま立ち上がるような空間に、訪れた人たちは思い思いに立ち止まり、手に取っていた。
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「魚と器。」誌面に登場した器が並ぶブース。器を手に、どんな魚料理を盛り付けようかと想像する来場者の表情が印象的だった
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「魚を纏う。」誌面で紹介したTシャツやグッズがずらり。誌面とリアルが交わるブースには、魚をテーマにしたカルチャーの熱気が漂っていた
夜は“魚と音楽”のポップアップディナーへ
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[枯朽]が提供した「秋刀魚のマース煮」。季節の魚を軽やかに再構築した、[枯朽]らしい美しい一皿
日が暮れると、ミュージックバー[good tempo]でのポップアップディナーがスタート。押上のレストラン[枯朽]がアラカルト営業を行い、カウンターの向こうではミクソロジスト・伊藤彰吾さんによる弾き語りライブが行われた。
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[枯朽]のミクソロジスト・伊藤さんが、この夜はギター片手に弾き語りを披露。プロ顔負けの歌声に、誰もが息をのんで耳を傾けていた
続いて古舘佑太郎さんがギターを手にステージへ。最初の一音が響いた瞬間、ざわめいていた会場がすっと静まり返った。 柔らかくも芯のある歌声が、グラスの音や人の息づかいと溶け合いながら空間を満たしていく。 観客はそれぞれの席で体をじっくりとその歌声を楽しんでいた。
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この夜のメインイベントとなった古舘佑太郎さんのライブ。[枯朽]の料理に寄り添うようなやわらかな歌声が会場を包み、来場者を魅了した
ライブの余韻が残るなか、フォトグラファーの在本彌生さんと阿部裕介さんによる「五島列島」をテーマにしたトークイベントが行われ、撮影現場の裏話や誌面に込めた思いを語るトークに、皆がうなずきながら耳を傾けた。食と音楽、そして写真がひとつにつながる、RiCEらしい夜となった。
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在本彌生さんと阿部裕介さんによるトークショー。ともに今号で五島を訪れたふたり。五島の魅力や撮影の裏側、プライベートでの親交まで楽しいトークを繰り広げてくれた
雨の日のスタートとなったHAVE A FISH DAY。けれど、そこに集まった人々の表情は晴れやかだった。食を通してつながる人と人、魚を介して広がる新しいカルチャー。その熱気は、翌日へと静かにバトンを渡していった。
Photo by yuki Nasuno(写真 那須野 友暉)
Text by Shingo Akuzawa(文 阿久沢慎吾)