
おいしい裏話
「ああいう場所のコース」(RiCE No.42に寄せて)
その「経営者の会」のランチはパレスホテルのレストランが担当していたが、
軽い前菜、サラダ、スープ、メインはサーモン、デザート盛り合わせ、世界中どこでも同じ感じで、そう考えると経営者の方たちはそのタイプの食事をどれだけ食べてきたのだろう?と思う。
バリの実業家、丸尾孝俊さんのおうちにたまにおじゃまするのだが、あまりにもゲストが多すぎると近隣のホテルでの食事に招いてくださることがある。
丸尾さんが最初のサラダのときに、「このクルトンや、こいつを食べるといつも最後食べきれなくなるんや」とクルトンを残した。
丸尾さんもそのホテルのディナーをいったい何千回食べてきたのだろう、と思って少しキュンとなった。
彼らは飽きたとかまずいとか決して言わない。その食事ができるありがたさを人生のどこかで必ず味わっているからだ。
パレスホテル東京 GRAND KITCHEN
https://www.palacehoteltokyo.com/wpcontent/uploads/grandkitchen_lunch_jun02.pdf
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『ヨシモトオノ』がある。
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